川崎フロンターレは13日、明治安田生命J1リーグ第17節でサンフレッチェ広島をホームへ迎え入れ、5−1の快勝を収めた。
この試合でヒーローとなったのが、10日に22歳の誕生日を迎えたMF田中碧。8月26日のヴィッセル神戸戦以来、公式戦4試合ぶりのスタメン出場を果たした田中は、これまで任されることが多かったアンカーではなく、この一戦ではその1列前となるインサイドハーフで起用される。すると、14分に華麗なパスワークから抜け出し先制点を奪い、3点リードで迎えた51分にはこの日2点目となるゴールでダメ押しをゲット。得点シーン以外にも豊富な運動量やイテンシティの高さを発揮し、鬼木達監督の期待に応えて見せたのだ。
試合後の会見で、鬼木監督も田中を高く評価。「彼のアグレッシブな姿勢やランニング、強度の高さを期待していた。得点も少し期待していたが、2点取ってくれたのは本当に良かった。決して悪かったわけではないが、少し安全になっていたので自信を持って自分らしいプレイをして欲しいと伝えていたが、そこで結果を残したのは素晴らしいと思う」とコメントしていた。
そんな田中が、試合後に広島戦を振り返ってくれた。どうやらこの一戦を今後試合に出るための“最後のチャンス”と考えていたようで、胸に秘めた思いを明かしている。
ーー4試合ぶりのスタメンとなったが、どういった思いで試合へ入ったのか
個人として、最後に出た神戸戦があまり良くなくて、そこからなかなか試合に出られない中で今回出番がきました。正直、自分はここで結果を残さないと試合には出られなくなるんだろうなと覚悟を持って思って入りました。別にアンカーで(試合に)出たいとか、そういうのは一切ないので、自分が出たところで結果を残すことというのを意識していました。そういう意味では、まずはチームが勝てたこと、自分が求めていた結果を出すことができて、良かったかなと思っています。
ーー自身初の1試合2得点となったが、この結果については?
自分があのポジション(インサイドハーフ)をやるときは、やっぱり他の選手にはできないような点を取る作業だったり、ゴール前に入っていく作業だったり、ランニングを含めて誰にも負けないところだと思っています。守備の部分の強度という意味でも、(力を)出せると思っているので、自分らしさというものも出せたと思います。1点目も2点目も自分の感覚と、信じて走ることができましたし、決めきることもできたので、良かったかなと思います。
ーーなかなか試合に出られない中で、どういった思いでトレーニングを続けてきたのか
スタメンで試合に出ていたときも、別に自分に力があってスタメンで試合に出ているとは思っていなかったです。出られなかったとき、もちろん悔しさはありました。ですけど、自分自身のレベルをより上げることが必要だとも思っていました。ただ、出たとき出たときで結果を残せば、必然的にまたチャンスがもらえると思っています。
今日、自分自身では得点というものが一番のアピールだと思っていました。どのポジションをやっても、点を取れる力を持っていると自分は思っていますし、そこに入っていける力というのは持っている。欲を言えばもう1点取りたかったですけど……。ただ、最低限の目標というか、結果を残すことできたのは良かったです。
ーー2得点とも自身の特長が大きく出ていたと思うが、その点についてどう思うか
リョクタくん(大島僚太)やアキさん(家長昭博)みたいに時間を作ったり、上手いパスを出したりという部分はなかなかできないですけど、やっぱりボックス内や最終局面に入っていく部分というのは(自分の)1番の持ち味だと思っています。2点目もそうですけど、自分がチャンスだと思うところを見つけて、そこへ走り切って、決める力というのは持っています。インサイドハーフをやったときには、よりゴールというものが求められていると思いますし、そこで結果を残せたことにホッとしています。
ゴール後のセレブレーションで、ここ数試合の鬱憤を晴らすかのような力の入ったガッツポーズを決めたのがとても印象的だったが、改めて見ると田中の“最後のチャンス”にかける思いやその覚悟が見て取れる。今季の折り返し地点を迎えた川崎だが、田中の今後の活躍に期待したい。