クロップは決断せよ リヴァプールに“超ハイライン中断”のススメ

エヴァートン戦での負傷により、長期離脱を強いられることとなったファン・ダイク photo/Getty Images

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今は我慢の時か

いくら他のパーツが揃っていようとも、さすがに最重要人物とも言える選手を2人も欠いて強度の高い戦術の実行は難しい。ブラジル代表GKアリソン・ベッカーとオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクが離脱を強いられている今、リヴァプールは戦い方を変えなければいけないか。

彼らのアイデンティティとも言える戦術。それがハイラインを敷いたプレス強度の高いサッカーだ。最終ラインから前線まで、チーム全体をコンパクトに保つことで人口密度を高め、常に相手のボールホルダーに対して複数人が連動してプレッシャーをかけられるようにする。ユルゲン・クロップ監督の代名詞とも言える戦い方で、これこそがリヴァプールをプレミア王者へと押し上げた大きな要因であることは間違いない。

しかし、現在のリヴァプールにはその戦術を実行するにあたって、重要な役割をこなすアリソンとファン・ダイクがいない。本来であればこの戦い方はハイライン裏に生じる広大なスペースがネックとなるが、それを弱点に感じさせなかったのがこの2人なのだ。規格外の守備範囲の広さを誇る両名を同時に失った今、そのスペースをカバーできる選手はいるか。ジョー・ゴメスやジョエル・マティプも優秀なDFではあるのだが、ファン・ダイクと比べればどうしても見劣りしてしまう。GKに関しても、アドリアンにアリソン級の働きを求めるのは酷な話と言えるだろう。
そこで提案されるのが戦術の変更だ。英『THE Sun』もクロップ監督に提言しているが、リヴァプールはこの緊急事態を乗り越えるまで現在の“超ハイライン”をやめるべきではないか。そういった声が現地でも出始めている。今季の彼らは2019-20シーズンと比べても、明らかに高い位置に最終ラインの基準を設定していた。同メディアによると、平均値を比べてみた際に今季エヴァートン戦前までの4試合では昨季よりも4m近くラインが高かったという。これほどまでに高いラインを維持するには、やはりアリソンやファン・ダイクといった怪物級の守備者が必要だ。そのどちらも離脱してしまった今、リヴァプールは彼らが復帰するまでの間に安全な策をとっておくべきだろう。

もちろん、相手が裏のスペースを狙ってくることを逆手にとって、オフサイドを誘発する戦術もあるにはある。しかし、それを実行するには最終ラインの完璧な意思統一が必要不可欠で、選手を身体的以外にも疲弊させることとなる。現状、マティプとJ・ゴメスにしか頼れない状況でそれを実行するのはリスクが高すぎるというものだろう。

今まで積極果敢なスタイルでリヴァプールを強化してきたクロップ監督だが、ここは戦力を冷静に見極めて正攻法を取るべきか。リヴァプールは少しの間だけ、戦術的に我慢を強いられることとなるかもしれない。

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