[粕谷秀樹]近代フットボールから取り残されてしまったがスタンドで日傘をさしているエジルなんか見たくはない

粕谷秀樹のメッタ斬り 046

粕谷秀樹のメッタ斬り 046

今季、プレミアリーグとヨーロッパリーグの登録メンバーから外れたエジル photo/Getty Images

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[4-3-3]でも[3-4-3]でも

ミケル・アルテタ監督率いるアーセナルが増強した。

懸案のセンターバックにガブリエウ・マガリャンイスを獲得。ビッグクラブ垂涎の的ともいわれていたスター候補生によって、最終ラインは安定した。トーマス・パルティはボール奪取能力にすぐれ、なおかつ運動量もパスセンスもハイレベルの万能型MFであり、ウィリアンの経験と高い守備意識は、昨シーズンまでの攻撃陣に欠けていたアイテムだ。

「アーセナルの逆襲が始まるぞ」
期待するメディアも少なくないんだけどね……。

そこにメスト・エジルの姿はなかった。彼はSNSでこう綴っている。

「プレミアリーグとヨーロッパリーグの登録メンバーから外れ、本当に落胆している」

ウナイ・エメリ(現ビジャレアル)が監督を務めていた当時も、エジルは干されていた。「プレイ強度を踏まえた人選」と、前監督は記者会見で説明した。

しかし、指揮官がアルテタに代わり、エジルも新体制発足を喜んでいたにもかかわらず、事態は好転しなかった。今年3月7日のウェストハム戦に先発出場し、アレクサンドル・ラカゼットの決勝ゴールをアシストした後、ピッチには一度も立っていないんだな。

結局、アルテタのプランにもエジルは適さなかった。守備能力や運動量などで、一定の基準を満たしていないと判断されたんだろうね。また、今シーズンの基本陣形は[4-3-3]、もしくは[3-4-3]。トップ下で王様然と振る舞うエジルには不向きなスタイルだ。

良い子弟関係にあったエジルとヴェンゲル photo/Getty Images

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ヴェンゲルからアドバイスを!

「もったいないよね」

アーセナル元監督のアーセン・ヴェンゲルも、英『BBC』のインタビューでエジルの窮状を憂えていた。

「近ごろのフットボールは素早いカウンターとトランジション、厚みのあるプレッシング……多くのクラブが同じようなプレイをしているから、エジルみたいな選手は時代に取り残されてしまったのかもしれないね。でも、まだまだ使えるはずだ」

ムッシュ・ヴェンゲルの言葉を借りるまでもなく、もったいないし、まだまだ使える。「契約が切れる2021年6月まではアーセナルの一員」と、ローン移籍ですら拒否するエジルを、エージェントはなんとかして説得し、ピッチに戻れる機会を模索すべきなんじゃないかな。それこそヴェンゲルにアドバイスしてもらうとか、エジルの心が氷解するアイデアを、周りの人たちが持ち寄るべきなんじゃないかな。

10月15日で32歳。若くはないけれど、老け込む歳でもない。近代フットボールの主流とはいえないものの、スーパーサブとしての使い道はあると思うんだ。残り15分でエジル投入→ファイナルサードで異彩を放つ→大逆転勝利、なんてシナリオは痛快でしょ?

契約上、アーセナル残留は当然の権利だよ。でも、彼の “魔法” をずーっと楽しみたいじゃん。ノースロンドンやイングランドにこだわらず、ほかのチームで、ほかの国で再起するプランも考えようよ。スタンドで日傘をさしているエジルなんて、だれも見たくはないんだからさ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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