[MIXゾーン]中村憲剛が語る 連覇した2年前のフロンターレと今季のチームの違い

40歳の誕生日に行われた多摩川クラシコで決勝ゴールを決めた中村憲剛 photo/Getty Images

40歳バースデイ弾で多摩川クラシコの主役に

川崎フロンターレは10月31日、明治安田生命J1リーグ第25節でFC東京との多摩川クラシコに臨んだ。

ホームでの戦いということもあり、前半の半ばあたりから早くも試合のペースを握ると、24分にレアンドロ・ダミアンが得たPKを家長昭博が冷静に沈め、先制に成功した川崎。その後も猛攻を仕掛け、前半だけで17本ものシュートを放ち、7割超えのボール支配率を記録したが、なかなか追加点を奪うことができず、1-0でハーフタイムを迎えてしまう。

すると後半に入り、システムを変更したFC東京に一瞬の隙を突かれ、57分に同点ゴールを許してしまった。前半の圧倒的な展開もあったため、川崎に嫌な空気が漂ったが、これを変えてみせたのが背番号「14」。この日、40歳の誕生日を迎えた中村憲剛だ。フロンターレのバンディエラが、左サイドをドリブル突破した三笘薫の折り返しを左足で合わせ、値千金の勝ち越しゴールを決めたのだ。このゴールが決勝点となり、川崎が2-1でFC東京を下し、リーグ戦12連勝を飾っている。

40歳のバースデイ弾で多摩川クラシコの主役となり、フロンターレをまた一歩リーグ制覇へと近づけた中村。ゴールシーン以外にも、77分にピッチを退くまで、40歳という年齢を感じさせないプレイを披露していた。そんなフロンターレのバンディエラが、試合後にFC東京戦を振り返った。その中で、リーグ連覇を果たした2年前のフロンターレと、今季のチームの違いなどについても語ってくれた。

ーー決勝点となったゴールシーンを振り返ってみて


後半、東京さんがシステムを変えてきて、ちょっとそこでバタついている間に点を取られて、どっちに流れがいくかみたいなところだったとは思うんですけど……。アキ(家長昭博)からボールが来て、向こうの守備陣形が[5-2-3]に近かったので、ノボリ(登里享平)が空いているのもわかっていました。

あの瞬間はカオル(三笘薫)が開いていて、1対1だったので、カオルに勝負させようと思ってパスを出しました。それで(相手を)抜いたんで、前半の途中ぐらいからアウトサイドでパスを出してくれる回数がすごく増えていたので、自分はフォローしつつ、カオルの侵入角度がどんどん深くなっていくにつれて、これはオレが点を取れるかもしれないと思っていました。スルスルっと中に入って行ったらカオルからすごくいいボールが来たので、こんだけ近かったら特にコースとかは関係なく思い切り打てば入るだろうと思って、打ったら入りました。だから、カオルのおかげですね。

(カオルが)1人ちぎったところから、他の選手がサポートに入らなきゃいけない状態になった瞬間に、(ゴール前へ)入っていた感じですかね。今日に関して言えば、前半から結構マイナスの(折り返しの)ところは空いていたので……。自分も前半に(この形の)シュートがありましたし、いい感触はありました。完全にカオルに目がいっている間にマークを外しとけばボールは来ると思ったので、「来い!来い!」と念じたら来ました。

ーー本日40歳の誕生日ということもあり、ゴールを狙っているのがプレイにハッキリと現れていた中で、チャンスがいく度となく来るも、なかなか点を取れない時間が続いた。その時の心境は?


今日はもう、オレは無理だなと思っていました。前半の時点で。入らないから。ナイスキーパーでしたし、そういう日かなと思いながら、そんなに甘くないなと思って前半を終えて、後半に1点取られて……。試合に出るリミットみたいなのは75分ぐらいだと思っていたけど、そしたらチャンスが来たのでびっくりしましたね。ちょっと言語化が難しいです。

ーー2度の優勝を成し遂げたシーズンのチームと、現在のチームの違いや変化は?


今シーズンに関して言うと、コロナの影響でJリーグが過密日程になって、交代も5人枠になって、その影響というのはフロンターレにとってはすごく良い方に出ているなと思っています。それは、シンプルに出られる選手が増えたというのと、迷いなくローテーションできる。

出られる選手の分母が増えるということで、そういう意味では、若手と言われている選手たちが主役級になれるぐらい経験値を積んできていますし、実際にそれで勝つ試合も増えました。そこに刺激を受けた中堅だったり、ベテランの選手たちが、自分が出たときに結果を残そうとする。初優勝と連覇した時よりも、たくさんの選手が試合でかなりの時間数を出ているのが大きいかなと。そこで誰が試合に出るかを決めるのは、普段の麻生グラウンドでの練習。その中でともに競いながらも、次の試合に勝つために仲間として切磋琢磨できていることが、一番大きいかなと思っています。

ーー周囲からたくさんの称賛の声が聞こえてくるが、今日はどのような日になったか。


そもそもキャリアで初めて誕生日が自分の試合で、正直どういう心構えでいっていいかわからなかった。ユウ(小林悠)から「点取れちゃいますね」みたいなメールが来たので、「それはお前のメンタリティだからだよ」って返しました。オレは狙ってどうこうじゃないから。「いや、絶対に取れます」みたいな感じで返ってきて、やっぱりあいつはすげぇなと思いました。

けど試合に入るにつれて、やっぱオレも狙いたいなと思って……。前半の最初の方は向こうに流れを持って行かれていたので、自分のシュートで流れを引き戻したかったというのもありました。前半だけで3、4本打っていると思う。完全に途中からは(得点を)狙いに行ってましたからね。小林さん、様様ですね。アイツのメールがなければ、こんなに貪欲にはなれなかったと思う。

特別な日にゴールを決められるかどうかなんてものは、正直誰にもわからない。自分は(誕生日の日の試合が)初めてきたから、どうなるのかなとは思っていましたけど、結果的に点を取った時は、よくわからなかった。ただその姿勢みたいなのをずっと出していたことが、最終的には転がってきたのかなと思います。あとはやっぱり周りの協力。今回で言えはカオルがアシストしてくれましたけど、そこに自分も入っていけたというのはよかった。点を取る気が無かったら点は取れないので、ちょっと小林の気持ちがわかりました。

ーーこの日はアウェイ・サポーターを含めて大勢のファンがスタジアムへ入った。多くのサポートがあったと思うが……


(サポートは)ダイレクトに感じますね。単純にパッて(スタンドを)見たときに人が多いなと思った。今日で言うと、アウェイのFC東京のサポーターのみなさんもいらっしゃっていたので。今までの様な満員ほどではないですけど、多摩川クラシコの雰囲気というのは感じましたし、激しい球際や戦うところとは、今日もピッチで現れていたと思う。やっぱりそこは、お客さんが足を運んでくれないと生まれないと思います。選手たちも人間なので感情が露わになるし、それを見て周りの人がチャンスだと思えば、サポーターも湧く。そういうのをサポーターのみなさんが反響させてくれるので、やっぱり(観客が)多いとやっている方も楽しい。ましてや今はこういう状況で、リスクがある中でみなさん足を運んでくれているので、感謝しかないです。

ーーJ1において、40歳以上でゴールを決めたのはこれまで5人しかいない。そこに仲間入りした率直な感想は?


まぁ、感謝しかないですけどね、周りに。オレの場合は、自分でどうこうする選手ではないので。さっきも言いましたけど……。後は、そういうところに名前を刻めるのはごく一部の人だと思うので、純粋に嬉しい気分です。

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