安定感ある徳島が浮上 福岡も連勝で昇格圏内へ
第7節磐田戦に勝利し、福岡と長谷川が勝利を喜ぶ。徳島は攻守ともに安定している photo/Getty Images
今年も残り3か月となり、Jリーグはシーズン後半戦に突入しています。J1の話題はさまざまなメディアで取り上げられるので、ここではJ2について語りたいと思います。
昇格争いはまだ団子状態です。残り試合数が多く、いま調子が良いチームでもちょっと崩れると順位を落とすことになります。長崎、北九州といった前半戦をリードしたチームがここにきて勝点を伸ばせていません。この両チームがどれだけ上位に踏ん張れるかが、まずは見所になります。
入れ替わって浮上した徳島、福岡とはまだまだ僅差であり、粘り強い戦いをしていれば必ずチャンスが訪れます。自分たちがそうだったように、いまは好調な徳島、福岡も勝点を伸ばせないときが来るかもしれません。
とはいえ、首位に躍り出た徳島は安定感があります。その要因として、クラブとして“軸”がブレない強化を続けていることがあげられます。毎年のように主力だった選手が移籍していますが、その度にしっかりとチームのスタイルに合った選手を獲得しています。
結果として、リカルド・ロドリゲス監督がやりたい可変システムによるサッカーが継続してできています。3バック、4バックの両方に対応できる戦力を備えていて、試合によってうまく使い分けています。それが成績にも表れていて、J2のなかで得点数が2番目に多く、失点数は福岡と並んでもっとも少ない数字となっています。こうしたチームがポールポジションにいるのは、他チームにとっては少し嫌かもしれません。
なにより、昨シーズンの徳島はJ1参入プレイオフ決勝で湘南と引き分け、昇格できませんでした。各選手があのときの悔しさを忘れずに戦っていると思います。また、完全に個人的な視点ですが、かつて湘南でプレイしていた岩尾憲がいるので私は徳島を応援しています。憲さんはそこにいるだけでみんなが安心できます。ピッチにも監督がいるぐらいの存在感があり、まわりからリスペクトされている選手です。ここだけの話ですが、憲さんがいるので徳島にはぜひJ1昇格を果たしてほしいと思っています。
上位争いでは、現時点(第25節終了時)で10連勝中の福岡が自動昇格圏内の2位となっています。序盤戦はやや得点力に物足りなさがありましたが、遠野大弥、フアンマ・デルガドなどが少ないチャンスをモノにし、堅守で守り抜くという粘り強い戦いで勝点を積み上げてきました。
より得点力を高めるべく、後半戦に向けて山形から山岸祐也を獲得し、攻撃陣の戦力アップを図っています。守備は非常に安定していて、前述のとおり失点はJ2でもっとも少ない数字となっています。あとはどれだけ実際に得点力を高められるかでしょう。
ヤットさんは起爆剤となるか 注目の若手3選手も紹介!
G大阪の象徴だった遠藤が磐田へ。低迷するチームの起爆剤となれるか photo/Getty Images
選手に目を向ければ、ヤットさん(遠藤保仁)が磐田に移籍しました。1年でのJ1復帰を目指しながら、後半戦を迎えて中位にいるのはチームとして危機感しかないと思います。フベロ監督から鈴木政一監督へ体制を変えたのも、なんとか巻き返さなければという思いからでしょう。勝てない試合が続いたことで、選手には停滞感もあったと思います。
ヤットさんが起爆剤となり、磐田が調子を上げてくるのか。J2はホントになにが起こるかわからないリーグで、ときに劇的なドラマが生まれます。過去には千葉が終盤に7連勝してプレイオフ圏内の6位に飛び込んだことがあります。現在の福岡のように、磐田がこれから連勝し、どんどん順位を上げていく可能性もゼロではありません。磐田だけではなく、どのチームにも“追い付き、追い越せ”の気持ちで戦い続けてほしいです。
京都に復帰した仙頭啓矢も期する思いがあるでしょう。横浜FMでなかなか試合に出られなかった悔しさから、「絶対に昇格させる」という強い気持ちがあるはずです。京都にはまだまだ十分にチャンスがあります。仙頭啓矢がどんなパフォーマンスでチームを勝利に導くか、注目したいところです。
シーズン中に鄭大世、荻原拓也、福田晃斗などを補強した新潟もどん欲に昇格を狙っています。いずれもJ1でプレイしていた選手たちで、それぞれにたしかな個性を持っています。彼らのサポートを受けて、生え抜きの「10番」である本間至恩がより輝けたなら、新潟は昇格がみえてくると思います。
最後にみなさんに注目してほしい選手を3名紹介しておきます。まずは東京Vの山下諒也です。チームがパスをつなぐサッカーを指向するなか、ずば抜けたスピードで攻撃にアクセントを加えています。足元がうまくパスサッカーに対応できるし、前方への推進力がとんでもなくあります。その速さは、J2のなかではもちろん、J1を合わせても際立っているといえます。
金沢で左SBを務める渡邊泰基は、シーズン途中に新潟から移籍し、主力となってフル出場を続けています。バランスが取れるし、利き足である左足から良質なパスを繰り出すことができます。また、柳下正明監督が好きな闘志溢れるタイプで、しっかりと戦うこともできます。金沢でどこまで成長するか、今後が楽しみです。
山口の橋本健人も左利きの左SBで、高いポテンシャルを持っています。まだ慶應大学在学中(3年生)ですが、第21節千葉戦に先発して臆することなくプレイするなど、着実に存在をアピールしています。あるいは、卒業を待たずに来年にはJクラブへ入団するかもしれません。技術力が高いクレバーなタイプで、前へボールを運ぶ力があります。この橋本健人には、だいぶ注目してほしいです。
※電子マガジン「ザ・ワールド」250号 10月15日配信の記事より転載