川崎フロンターレは18日、明治安田生命J1リーグ第25節で横浜F・マリノスと対戦した。この試合に勝てば2年ぶりとなるJ1制覇に王手がかかる川崎。対戦相手は昨季王者ということもあり、選手たちはかなりのプレッシャーを感じながらこの一戦に臨んでいたことだろう。しかし、そんな重圧をはねのけたのは、またもゴールデンルーキーだった。
前半は横浜FMのハイライン戦術に手を焼き、多くの時間でロングボールを使いながら最終ライン裏を探ることしかできなかった川崎。昨季王者の狙いがハマり、試合は横浜FMペースで進んでいたと言っていい。しかし40分、そんな状況に変化が。味方のロングパスに反応したFW齋藤学が相手最終ライン裏に抜け出すと、そのままダイレクトでループシュートを放つ。すると、前に飛び出していた横浜FM・GK高丘陽平はたまらずこれをPA外で手を使ってセーブ。高丘にはレッドカードが提示され、横浜FMは1人少ない状況での戦いを強いられることとなった。
これをキッカケとして、川崎は攻勢に出る。前半にこそゴールは生まれなかったものの、数的優位を活かして押し込む形は増加。本来の強みである細かなパスワークも取り戻したところで、試合は後半へ。そんな状況でさらに川崎の攻撃陣にアクセントを加えることとなったのが、後半開始から投入されたFW三笘薫だ。同選手はこの試合で数的優位の状況を活かしながら、何度も得意のドリブルでサイドを切り裂くことに。間違いなく、ピッチ上における彼の存在感は際立っていた。
「相手選手が前半に退場となったので、僕が試合に出た時点でサイドは空いていました。ですので、しっかり仕掛けなければいけないと思っていました。実際、スピードに乗ったドリブルというのはやりやすかったですね。インサイドハーフの選手やノボリさん(登里享平:左SB)のサポートも使いながら、うまくリズムを掴むことができました。自分の中でのフィーリングもよかったです。途中からフレッシュな状態で入っているので、仕事をしないといけないとは思っていました」
試合後、三笘は出場時点で思っていたことをこのように振り返っている。仕事をしなければいけないのは間違いないが、とても今季プロ1年目の選手とは思えぬ気持ちの入りようだ。彼がここまで自信を持つことができているのは、ここまでの戦いで「やれる」という確信を得ていることも大きかったのだろう。
そして実際、三笘は結果を残してみせた。53分、右サイドからのクロスを受けた同選手は、一度中央の状況を確認してから脇坂泰斗へラストパス。これは一度相手選手にブロックされるも、跳ね返ってきたボールに三苫は再び反応。豪快なダイレクトシュートを相手ゴール左へ流し込み、貴重な先制点をチームにもたらした。
「あの場面では中央で待っている選手がいたので、並行にパスを出しました。ですが、相手に引っかかってからたまたま僕のところにボールが戻ってきたので、そこからダイレクトで打つという決断をしました。うまく抑えて枠に飛んでくれたので良かったなと思います」
三笘の活躍はこれだけで終わらない。2-1とリードして迎えた92分、このルーキーはMF大島僚太のスルーパスに抜け出すと、そのままPA内で相手DFのファウルを誘いPKを獲得。このPKはキッカーの小林悠が失敗してしまったものの、三笘の仕事は決定的だったと言える。
そして、その3分後にはまたも大仕事。96分に自陣PA付近でボールを拾った三笘は、そのまま圧巻のドリブル技術を駆使してピッチ上を爆走。横浜FM・DFチアゴ・マルチンスの股を抜くプレイも披露したのちに、ゴール前まで侵入してラストパス。これを小林悠がしっかりと決め、横浜FMにとどめを刺した。ピッチの端から端までをドリブルする超絶アシストとなったが、あのとき三笘はプレイしながらどんなことを考えていたのだろうか。
「過去一番のドリブルの長さから、得点につながったと思います。(味方のクリアを)うまくトラップできて、前方にスペースがあったのでドリブルを選択しました。前まで運ぶことができれば(失点の)リスクも抑えることができますし、相手選手もついて来れないことはわかっていましたので。最後まで自分で行こうとも思ったのですが、股を抜いた時点でユウさん(小林悠)が見えたので確実なパスを選択しました」
自身がゴールを決めることもできれば、しっかりと味方を使うこともできる三笘。少ない時間でフィニッシャーとしてもチャンスメイカーとしても機能したルーキーは、今やJ屈指の“仕事人”となっている。そんな三笘の活躍もあり、この横浜FM戦に3-1で勝利した川崎。今季J1優勝は次節大分トリニータ戦にも決まる可能性が生まれたが、次の大一番でも三笘はしっかりと結果を残すことができるか。23歳のアタッカーにかかる期待は膨らむばかりだ。