[名良橋晃]帰ってきた日本代表 求む! 生粋の左SB

名良橋晃のサッカー定点観測 077

セリエAで経験を積む冨安は安定感を増している photo/Getty Images

 日本代表が約1年ぶりに活動を再開し、10月に2試合を戦いました。さらに11月にも2試合を戦う予定で、このコラムが発表されるころは合計3試合が終了していますが、やはり日本代表の試合はワクワクします。10月の2試合をみているときは、本当にうれしくて高揚感がありました。

 最初のカメルーン戦に関しては、久しぶりの試合で準備期間も短かったので、約束事の確認、連携面のすり合わせなど難しいことが多かったと思います。メンバー同士がお互いの特徴をわかっていても、サッカーは生きものなので状況が刻一刻と変化します。とくに、4バックだった前半は相手の可変システムにはまらず、攻守両面で窮屈になっていました。

 ただ、3バックに変更した後半は守備がはまり、無失点で終えることができました。システム変更によって戦況が改善されたのは、ポジティブに受け止めてよいです。

 続くコートジボワール戦では鈴木武蔵がよかったですね。札幌ではシャドーを務めることが多く、スピードを生かして前線に飛び出すプレイが目立ちました。加えて、ベールスホットで1トップを務めることで、ポストプレイにも磨きがかかっています。コートジボワール戦では相手を背負った状態でボールをしっかりとキープし、2列目の攻撃参加を促進していました。

 これまでは大迫勇也の負担が大きく、競い合う選手の出現が待望されていました。鈴木武蔵の成長によって、大迫勇也頼みだった前線にもいよいよ競争が生まれてきました。これもまた、ポジティブなことだと言えます。

 2試合を無失点で終えた守備に関しては、高く評価していいと思います。とくに、吉田麻也、冨安健洋のCBコンビは、2試合を通じて安定していました。スキを与えないコンビで安心してみていられます。カメルーン戦の後半はここに酒井宏樹が加わる3バックとなり、いずれの選手もさすがのパフォーマンスをみせました。4バックで戦ったコートジボワール戦では中山雄太が左SBを務め、うまくバランスを取っていました。中山雄太はカメルーン戦をボランチでプレイしており、2試合を通じてマルチな能力をみせました。

 この左SBのポジションも長友佑都を脅かす選手の出現が期待されています。カメルーン戦では安西幸輝が務めましたが、やや押し込まれていました。11月の2試合では長友佑都が復帰していますが、マルセイユで十分なプレイ時間を確保できていません。こうした状況を考えると、ハノーファーで左SBの経験がある室屋成の起用や、複数のポジションでプレイできる菅原由勢の登場があるかもしれません。できれば生粋の左SBに出てきてほしいですが、各方面を見渡してもまだ不在かなと感じています。

久保に求められる守備のタスク チーム全体でのカバーが必要

久保は守備でのポジショニングに課題がある photo/Getty Images

 11月17日のメキシコ戦は、強さ、高さ、うまさがある相手との対戦になります。しかし、森保一監督は受けることなく、アグレッシブに仕掛けるサッカーをすると思います。イルビング・ロサーノ、ラウール・ヒメネスなど実力者を揃えている相手に、どういった戦いをみせるか楽しみです。ガチンコの戦い、本気モードの試合になってくれることを期待します。

 そうしたなか、10月の2試合では守備の安定感がみられたので、メキシコ戦では攻撃のカタチを確認したいところです。無論、強豪国との対戦であり、決して簡単ではありません。その相手をいかに崩し、得点のチャンスを作り出すかが見どころのひとつです。

 個人的には久保建英の奮起に期待しています。出場するときは[4-2-3-1]の3の右サイドだと思いますが、同ポジションでは守備のタスクも求められます。プレイ強度と守備の対応に関して、久保建英にはピッチでしっかりと結果を出してほしいです。

 現代サッカーでは、うまさ、強さ、速さなどに加えて、走力がないと活躍できません。バイエルンをみても、走力がある選手ばかりです。日本代表をみても、原口元気、伊東純也など走れる選手が同ポジションにいます。いまは走れないと監督から評価されません。日本代表、そしてビジャレアルでポジションを得るためには、うまくて、走れて、闘える選手にならないといけないでしょう。

 現状はまだ、守備のときにいてほしいポジションにいないときがあります。決して、さぼっているわけではありません。まわりの声かけ、指示があれば守備でのポジショニングが定まってくるはずです。久保建英は攻撃で“違い”をみせられる選手です。チーム全体で個々の選手のウィークをカバーしてほしいです。

 南野拓実も所属するリヴァプールでの評価が少しネガティブな方向になっています。長友佑都も同様です。森保一監督は選手たちが置かれたこうした状況を理解したうえで招集しています。日本代表でプレイすることで、空気が変わり、メンタル面によい効果があるかもしれません。こうした選手たちがどのようなパフォーマンスをみせるかも注目すべきポイントになります。

 チーム全体をみれば、攻撃に関しては10月の2試合では流れのなかから得点できませんでした。いかに相手の守備を崩すのか、攻撃面をどう修正するのか? 準備期間は短いですが、あまりメンバーは変わっていません。どういうカタチで崩すか、そしてゴールするかを確認できるといいですね。

 守備に関しては、10月の2試合を通じてポジティブな印象があります。前述した左SBの人選はともかく、実力者が揃っており、なにかを変える必要はありません。とはいえ、パナマ、メキシコという難しい相手との対戦になります。試合中に起きる出来事に自分たちで柔軟に対応し、ふたたび安定感ある守備をみせてほしいです。

 11月の2試合はコロナ禍で開催が難しいとも言われていました。選手たちは代表活動中もPCR検査を行っていますが、決して油断はできず、現在の情勢を考えるととりあえず無事にクラブへ戻ってほしいです。また、今回はイビチャ・オシムさんが暮らすグラーツ(オーストリア)での試合で、もし再開できることがあれば大きな刺激になると思います。オシムさんからの「金言」にも期待しています。

構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)251号、11月15日配信の記事より転載

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