アーセナルは“クロス戦術”で勝負し続けるのか 浮上する重戦車FW獲得の噂

M・ゴメスは優秀なストライカーだが…… photo/Getty Images

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向かいたい場所はどこか

今季のアーセナルにおいて、各方面から指摘され始めた“クロス問題”。開幕前にファンが夢見ていたのは、華麗なパスワークにミケル・アルテタ監督の前衛的なアイデアを加えたスタイルだったはずだが、蓋を開けてみれば彼らのサッカーは非常に退屈なものとなってしまった。両サイドから望みの薄いクロスを放り込むしかできない今の彼らに、失望の眼差しを向けている人も少なくはないだろう。

現地時間6日に行われたトッテナムとのノースロンドンダービーでも、アーセナルは実に70%ものポゼッション率を記録しながら単調な攻撃に終始した。ゴール前をガッチリと固めるライバルクラブ相手に、ガナーズの選手たちは大外からヘディングを得意としていないFWピエール・エメリク・オバメヤンめがけてクロスを送ることしかできない。結果、この試合で記録した彼らのクロス本数は44本。成功数はわずか9本を数えるのみに終わり、そのうち得点につながったものはゼロ。宿敵相手に完敗を喫することとなってしまった。

かつて華麗なパスワークで相手守備陣をきりきり舞いにしたガナーズは、いったいどこへ行ってしまったのか。アルテタ監督の就任時、将来的にアーセナルはジョゼップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティにも劣らぬパスサッカーを披露するはずと期待していた人は多い。しかし、彼らの現状はどちらかと言えばデイビッド・モイーズ監督に率いられていた頃のマンチェスター・ユナイテッドと表現する方がしっくりくるだろう。
しかし、そんな状況を打開するどころか、アーセナルは自ら現在の“クロス問題”を加速させることとなるのか。同クラブは今後の移籍市場において、スペインで活躍する空中戦自慢の重戦車FW獲得に向けて動き出しているようだ。

その重戦車FWとは、バレンシアのウルグアイ代表FWマキシ・ゴメス(24)。英『Daily Mail』によると、バレンシアは新型コロナウイルス感染拡大の影響によって財政難に陥っており、資金調達のため同選手を近々売却する考えを持っているという。同選手の契約解除金は1億4000万ユーロ(約176億円)とされるが、これは大幅に減額される見込みとのこと。伸び盛りのウルグアイ代表FWがリーズナブルな価格で売りに出される可能性が浮上したとあって、アーセナルはこのチャンスに飛びつく構えを見せたというわけだ。

とはいえ、アーセナルにこの重戦車FWが本当に必要かは疑問だ。M・ゴメスといえば、その屈強なフィジカルを活かした空中戦の強さに定評があるストライカー。アーセナルが今の“クロス戦術”から脱却を図りたいのであれば、彼の獲得はその流れに逆行するものと言える。もちろん、M・ゴメスは他のプレイにおいても高い能力を発揮する選手だ。だが、彼を獲得する資金があるのならば、優先すべきは創造性豊かなパサーだろう。冬にMFメスト・エジルを再び出場登録する手もあるが、現状その可能性は低いと言わざるを得ない。理想のスタイルへ近づきたいのであれば、真っ先に確保すべきは中盤で攻撃的な役割を安心して任せることのできる選手ではないか。

ファンの不安な気持ちを加速させるM・ゴメス獲得の噂。はたして、アーセナルが目指している理想型は一体何なのか。まだ噂の段階に過ぎないものの、ガナーズの補強戦略が迷走しないことを祈るばかりだ。

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