[水沼貴史]欧州の舞台で見てみたい 2020年に輝いた日本人Jリーガーたち

水沼貴史の欧蹴爛漫050

水沼貴史の欧蹴爛漫050

今季のJ1リーグで13得点を挙げた三笘 photo/Getty Images 

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三笘のドリブルの凄さとは

水沼貴史です。FC東京でプレイしていたDF室屋成(ハノーファー)やMF橋本拳人(ロストフ)、北海道コンサドーレ札幌に在籍していたFW鈴木武蔵(KベールスホットVA)をはじめ、今年も多くの日本人Jリーガーが欧州行きを決断しました。今月には湘南ベルマーレのMF齊藤未月のルビン・カザンへの期限付き移籍や、同じく湘南のMF鈴木冬一のFCローザンヌ・スポルトへの完全移籍が決まりましたね。彼らが欧州の舞台で、自分の持ち味を遺憾なく発揮してくれることを願っています。

今回は今年のJ1リーグで活躍した面々のなかから、欧州でプレイしている姿を見てみたい日本人Jリーガーを、私見たっぷりに選んでみました。セレクトした選手のプレイ面の特長や、今年のJ1リーグで際立っていたプレイについてお話ししましょう。

一人目は、ルーキーでありながら今年のJ1リーグで13得点12アシストをマークし、川崎フロンターレの優勝に貢献したMF三笘薫(23歳)です。途中出場が主でしたが、幾度となくフロンターレの攻撃に活力をもたらしていました。
彼のドリブルの特長は、ダブルタッチやエラシコの歩幅が広いこと。特に2歩目で大きく横に動きますし、ドリブルのスピード自体も速いので、相手DFにとってはボールを奪いに行くタイミングが掴みづらい。長距離のドリブルでもスピードが落ちませんし、カットインからのシュートも正確。ドリブルに緩急があり、プレイのバリエーションも豊富な彼の対応に手を焼いたDFは多かったのではないでしょうか。

今年のJ1リーグで強烈なインパクトを残した彼ですが、欧州の舞台でも輝けるポテンシャルを秘めていると思います。ウイングFWを置く布陣を採用しているクラブであれば彼の特長が活きるでしょうし、既にドイツやポルトガルの中堅クラブのレギュラー争いに割って入れるだけの力はあります。

あと、エールディヴィジ(オランダ)のクラブの大半が伝統的に[4-3-3]という布陣を採用しているので、既に複数の日本人選手を受け入れているフローニンヘンあたりからオファーが来ると面白いですね。今年のJ1リーグでは球際に滅法強く、リーチの長い外国人選手と三笘がマッチアップする機会が少なかったので、このような選手に対して彼がどれほど持ち味を発揮できるのかを見てみたいという気持ちがあります。彼の成長のためにも、近いうちに欧州行きが実現すると良いですね。

安定感抜群の守備でフロンターレのリーグ優勝に貢献した守田(6番) photo/Getty Images 

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的確なポジショニングが光った守田

同じくフロンターレのMF守田英正(25歳)も、欧州でプレイしている姿を見てみたい選手のひとりです。昨年の[4-2-3-1]から[4-3-3]に基本布陣が変わったフロンターレにおいて、アンカーで起用された彼の存在感は抜群でした。

彼のストロングポイントは守備範囲の広さと、ポジショニングの的確さ。どの試合でもハイプレスで主導権を握りにかかっていたフロンターレのなかで、インサイドハーフが敵陣へ上がった際の中盤のスペースのケアを抜かりなくしていましたし、味方のサイドバックが攻め上がることによって生まれるサイドのスペースも、マメに埋めていました。しかも自陣後方で正確にパスを散らすこともできる。攻守両面で貢献度は高かったと思います。

つい先日、日本代表MF遠藤航のシュツットガルトでのプレイぶりを映像でチェックしていたのですが、得意なプレイが二人とも似ていることもあり、仮に守田が遠藤の代わりにシュツットガルトのボランチを務めたとしてもチームが機能するのではないかと、勝手にイメージしながら試合を観ていました。遠藤と同様に球際に強く、危機察知能力も高いので、欧州でプレイするチャンスに恵まれさえすれば大化けしそうな選手ですね。

切れ味鋭いドリブルが持ち味の坂元(右)と、長短の正確なパスで柏の攻撃を牽引した江坂(左) photo/Getty Images 

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坂元達裕&江坂任のストロングポイントは

ぶっちぎりの首位でリーグ戦を終えたフロンターレ以外からは、セレッソ大阪のMF坂元達裕(24歳)と、柏レイソルのMF江坂任(28歳)の2選手を紹介します。

今季開幕前にモンテディオ山形からセレッソへ移籍した坂元からお話ししますが、今季は[4-4-2]という布陣の右サイドハーフや、[3-4-2-1]の2シャドーの一角でのプレイが多かったですね。中央の密集地帯でボールを受けるよりも、自分の後ろにタッチラインがあり、背後からチェイシングを受けない状況下でボールを持った時のほうが、彼が伸び伸びとプレイできていた印象があります。

左利きでありながら右サイドを主戦場としていたことで、相手DFは必然的に坂元のカットインを警戒することになりますが、こうした状況で彼が最も得意としている、左足で切り返してボールを縦方向に運ぶプレイが活きていましたね。

カットインからのシュートと、キックフェイントからの縦へのドリブルを坂元が当意即妙に使い分けているふしがありましたし、彼の鋭い切り返しに相手DFが苦しめられている場面が、今季は何度か見受けられました。相手DFとの駆け引きが上手く、切れ味鋭いドリブルは欧州の屈強なDF相手にも通用しそうな雰囲気を感じたので、今後の動向に注目したいところです。

今季のJ1リーグのMVPに選ばれたFWオルンガと良いコンビネーションを見せ、柏レイソルの攻撃を牽引した江坂のパフォーマンスも際立っていました。トップ下のポジションで自由を与えられた時に躍動できる点は、現在ウニオン・ベルリンでプレイしているMFマックス・クルーゼや、フランクフルトのMF鎌田大地と似ていますね。

元々足下の技術が高く、以前はドリブル突破にこだわっているふしがあったのですが、今季は球離れが良くなりました。江坂の球離れが良くなったことで柏のカウンターの質や速度が上がり、これがJ1復帰1年目の彼らの健闘に繋がったと私は思います。

今季は特に、ワンタッチで繰り出されるロングパスの精度が高かったですね。ボールを受けたら、まずオルンガを見るというプレイ原則が彼のなかで徹底されている感じがしましたし、そこへのパスコースを消されても、走っている他の味方選手を瞬時に見つけることができていました。

以前は“クラシカルな10番”というイメージを江坂に対して抱いていたのですが、今では単独突破も周りを活かすプレイのどちらもでき、守備も精力的にこなす“現代型のトップ下”へと変わった印象があります。他の3選手と比べてやや年齢が高めですが、できるプレイの幅が広いのは魅力的ですし、欧州で活躍できるだけのポテンシャルはあると思います。来年1月4日に延期されたルヴァン杯決勝(FC東京戦)での彼のパフォーマンスも、私自身楽しみにしている部分です。

コロナ禍で再開自体も危ぶまれたなか、今年に関しては多くの方々のご尽力によってJリーグが最終節まで実施されたことが何よりだったと、私自身感じています。まだまだ大変な状況が続きますが、来年も選手たちが躍動し、Jリーグを愛するサポーターの皆さんが彼らのプレイを楽しめる年になってほしいですね。

ではでは、また来年お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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