[西岡明彦]予期せぬ炎上、求められるネットリテラシー

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FAの処分を受け入れたカバーニ photo/Getty Images

 近年、クラブのプロモーション活動や選手のファンサービスに必要不可欠のツールとなっているSNS。イングランドでは選手の投稿が発端となり、出場停止処分にまで発展したケースが話題となっています。

 昨年11月29日のサウサンプトン戦で2ゴールをあげる活躍を見せたマンチェスター・ユナイテッドのFWエディンソン・カバーニ。Instagramで友人と思われる人物から送られてきた祝福メッセージに対し、「Gracias Negrito」とカバーニが返信したことが問題視されました。“Negrito(スペイン語で黒人)”という単語は、人種差別表現だと指摘されるまでに騒動が発展することになりました。

 カバーニは投稿をすぐに削除し謝罪、クラブも「彼の言葉が誤解を招くという認識ではなく、誠意を込めて謝罪したはずだ」と弁明しました。FA(イングランドサッカー協会)は第三者規制委員会に判断を委ね、カバーニのインスタグラムには800万人のフォロワーがいてその影響力が大きいこと、SNSを活用する上での指導を選手に行っていなかったクラブ側の怠慢も問題視。FAの規定に明記されている「肌の色、人種、民族を意味する表現は特別背任に
抵触する」として、「3試合の出場停止と10万ポンドの罰金、対面での指導を受ける」処分を下しました。

「友人への愛情を込めた挨拶で用いた言葉に過ぎない」として、人種差別を否定し弁解していたカバーニ、さらに母国ウルグアイの選手組合(AFU)も「愛する人や友人に愛情を込めて用いる南米の一般的な表現に過ぎない」として処分の撤回を求めました。同僚のルイス・スアレスやディエゴ・ゴディンらもAFUの声明をSNSでシェアしてサポートしました。

 結局、ユナイテッドとカバーニ自身はこれ以上この問題を長期化させたくないとして、今月4日が期限となっていた異議申し立てを行使せず、処分を受け入れる決断を下しました。発信する側の意図に関係なく、日常的にこの言葉を発することを容認することは許されることではありません。人種差別を撲滅するキャンペーンを通して、今後もこの問題は訴え続けていかなくてはいけませんね。

文/西岡 明彦

※電子マガジンtheWORLD253号、1月15日配信の記事より転載

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