決して“イブラのおかげ”だけじゃない ミラン復活の要因は他にもある

ミランを指揮するピオリ監督 photo/Getty Images

中盤戦士が挙げるのは……

セリエAのトップ4から姿を消して早7年。長い低迷期を過ごしていたACミランだが、彼らにようやく覇権奪回のチャンスが巡ってきた。2010-11シーズンを最後に優勝から遠ざかっていた彼らではあるものの、今季はここまで2位インテルと3ポイント差の首位をキープしている。2020-21シーズンがミラン復活を印象付けるシーズンとなる可能性は低くない。

しかし、一体なぜミランはここまで急速に影響力を取り戻すことができたのだろうか。最大の要因として挙げることができるのは、間違いなくFWズラタン・イブラヒモビッチの存在だ。昨年1月の加入以降、ピッチ内外でチームを力強く牽引するリーダーとなっている同選手。ベテランFWの存在がミランに変化をもたらしたことは間違いない。

だが、ミランが強さを取り戻した理由は決してそれだけでない。イブラヒモビッチ以外の要素も上手く噛み合ったからこそ、ロッソネリは現在の良い状態を手にすることができているのだ。実際、今季のミランはイブラヒモビッチが欠場した試合でも、以前とは間違えるような戦いぶりを披露している。

監督への信頼を口にしたケシエ photo/Getty Images

秘訣はコミュニケーション術

その組織を作り上げた人物こそ、チームを率いるステファノ・ピオリ監督だ。就任当初こそ元インテルの指揮官ということもあって、ファンからはあまり人気の出なかった同監督。しかし、彼は優れた手腕でイブラヒモビッチを中心としながらも、決してひとりのエースに頼り切りになることのないチームを作り上げた。もともと柔軟な選手起用には定評のある監督だが、絶対的主力を欠いてなお乱れないチームマネジメントは見事だ。

そんな指揮官のチームづくりの秘訣に関して、伊『Il Giornale』にMFフランク・ケシエが発言したこんな言葉がヒントになるかもしれない。

「ミランが復活した理由かい? 特別明らかにするような秘密こそないけれど、監督の計画的なコミュニケーション作業はチームの前進に大きく寄与したと思うよ。彼はトレーニングの際に、しばしば僕たちを呼び出して望むことを伝えてきたんだ。動きを細かく説明しながらね。それからというもの、選手たちは積極的に彼のアイデアを実現しようと毎日取り組んでいるよ。あれ以来、僕らは顔つきも変わったと思うね。システムの変更も重要だった。最終ラインの前に2人のMFを配置することで、チームに安心感が生まれたんだ。そのおかげで、DFのパフォーマンスも向上したと思うよ」

どうやら肝は、緻密なコミュニケーションにあることがわかる。戦術的柔軟性を持ち、主力に過度に依存しない一体感のあるチームを、ピオリは優れたコミュニケーション能力によって作り上げた。イブラヒモビッチの存在は間違いなく重要だったが、チームをまとめる指揮官の存在もミランにとってはやはり大きかったか。

決してイブラヒモビッチだけに頼らぬ組織を作り上げた55歳の知将。はたして、ピオリ監督はミランを10年ぶりのスクデットへと導くことができるのか。選手の疲労も溜まってくるシーズン後半戦は、指揮官の腕の見せどころだ。

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