今季のユヴェントスは静かすぎる ピルロに欲しい監督としての“色”

今季からユヴェントスの指揮を執っているピルロ監督 photo/Getty Images

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陣容自体はこれまでと遜色ないが

昨季、セリエAで前人未到の9連覇を達成したユヴェントス。しかし、2020-21シーズンにアンドレア・ピルロ新監督を迎えた同クラブは、現在なかなかに厳しい時間を過ごしている。ここまで17試合を終えて、首位ACミランとは10ポイント差の5位。これまでセリエAの絶対王者として君臨していたビアンコネリの影響力は、今季確実に弱まっていると言っていい。

では、なぜ2020-21シーズンのユヴェントスはここまで勝てないのか。特別、スカッドそのものが弱体化したわけではない。昨季まで中盤の底でゲームメイクを担当していたMFミラレム・ピャニッチがバルセロナへと移籍したものの、クラブはその代役としてMFアルトゥール・メロを獲得している。そのほかにもMFウェストン・マッケニーやMFデヤン・クルゼフスキ、FWフェデリコ・キエーザ、FWアルバロ・モラタといった実力者を補強。その顔ぶれからすれば、むしろ昨季以上の戦いぶりを披露してもおかしくなかったと言えるだろう。

しかし、実際問題ユヴェントスは勝てていない。その大きな要因として考えられるのは、やはりピルロ監督の手腕だ。指導者経験ゼロからいきなり古巣の指揮を任された同監督は、ここまでチーム作りに苦労を強いられている。決して最悪というわけではないのだが、彼が採用する戦術やシステムはそのどれもがこの上なく無難。堅実と言えば聞こえはいいが、“平均点”の域を出ないのが現状と言える。しかし、平均点のサッカーで目の肥えたユヴェンティーノたちが納得するはずもない。

近年におけるユヴェントスの成功に寄与したアッレグリ元監督らは明確な自身の“色”を持つ指揮官だった photo/Getty Images

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求められる戦術の独自性

なかでも物足りないのはビルドアップの部分か。稀代のレジスタと呼ばれた現役時代のイメージもあって、ピルロ監督がどれほど創造的な組み立て方をチームに授けるのかと、就任前に大きな期待を寄せていた人は多かったはず。しかし、現時点で同監督の率いるチームはごく一般的なビルドアップを披露するにとどまっている。モダンなスタイルを採用してはいるものの、これといって特筆すべきメカニズムを持っていない。最終的にはクリスティアーノ・ロナウドやパウロ・ディバラといった“個の力”で得点を奪う場面も多く、指揮官の手腕が光った部分というのは数えるほどだ。

「ユヴェントスは昨季までと変わらず、今も高いクオリティを備えている。だが、今季の彼らには個性がない。そうなってしまった理由は、ピルロがコーチや選手とそれほどコミュニケーションを取っていないからかもしれない。彼はサッカーを知り過ぎているあまり、周囲と自分の考えをあまり共有しようとしない。そのせいで、今季のユヴェントスは静かすぎる」

現地メディア『calciomercato』も、新米監督が率いる“静かすぎるユヴェントス”には少なからず疑念を抱いている様子。もちろん、これまで成功を掴んできた形を大きく変えれば、大失敗をする可能性もある。しかし、あまりに保守的と言えるピルロ監督のスタイルで簡単にスクデットを勝ち取れるほど、群雄割拠の様相を呈してきた今のセリエAは甘くない。

強固な3バックを武器にビアンコネリを復活させたアントニオ・コンテ、優れたマネジメント力でコンテの築き上げた土台を完成品に仕上げたマッシミリアーノ・アッレグリをはじめ、ユヴェントスの黄金期を支えた指揮官には傑出したキャラクターがあった。シーズンを通して見れば苦しんだが、そういったキャラクターはマウリツィオ・サッリ前監督も持っていたものだ。ユヴェントスを絶対王者としてセリエAの頂点に君臨させ続けるため、ピルロ監督に一刻も早く必要なのはそういった部分か。とはいえ、新米指揮官だからこそ同監督は今から何者にでもなることができるだろう。現時点では少し物足りない部分も多いピルロ監督だが、彼は今後自分の“色”を見つけることができるか。黄金時代の功労者が再びスクデットを手にするときをファンは待ちわびている。

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