[水沼貴史]バイエルンのCL連覇&国内9連覇は危うい カウンターを浴び続けるのは何故

水沼貴史の欧蹴爛漫051

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ブンデス18試合消化時点で25失点と、守備に問題を抱えているバイエルン。より強度の高いプレスを仕掛けたいところだ photo/Getty Images 

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失点増大の原因は

水沼貴史です。シーズンが過ぎ去るのも早いもので、2020-21シーズンの欧州4大リーグは後半戦に突入しましたね。ブンデスリーガでは現在8連覇中のバイエルン・ミュンヘンが、2位ライプツィヒとの勝ち点差“7”の首位に立っています。

2位以下との勝ち点差だけに注目すると、バイエルンが独走態勢に入ったようにも見えますが、ブンデス18試合消化時点で25失点を喫している、そのうえ1月13日に行われたDFBポカール2回戦で2部リーグ所属のホルシュタイン・キールに敗れたことからも分かるとおり、今シーズンのバイエルンに3冠を達成した昨シーズンほどの安定感はありません。

このまま試合内容に改善が見られないとなると、2月から始まるUEFAチャンピオンズリーグ決勝ラウンドでの早期敗退はもちろんのこと、ブンデスリーガでも2位以下のチームに勝ち点差を縮められ、9連覇が危うくなる可能性があると、私は思います。バイエルンの躓きの原因は何なのか、そして今後に向けて何を修正すべきか。今回はこの2点についてお話ししましょう。
ハンス・ディーター・フリック現監督が就任した一昨年の11月以降、最終ラインを非常に高く保つことで陣形をコンパクトにし、この状態からのハイプレスで相手チームを自陣に釘付けにしてきた彼らですが、今シーズンは昨シーズン以上に最終ラインの背後のスペースを突かれることが多く、これが原因で失点を重ねてしまっています。

最終ラインの背後へ簡単にパスを通されてしまう理由は、最前線や中盤の選手によるプレッシングが緩すぎること。これによって相手選手が自陣や中盤で余裕を持ってドリブルしたり、パスを捌けてしまっている場面が目立ちます。最終ラインが上がっているのに前線からのプレッシングが不十分なので、必然的にピンチや失点が増えてしまっている現状です。今シーズン、ジェローム・ボアテングとニクラス・ズーレの両DFがよく背後をとられていますが、失点増大の責任が彼らだけにあるのではないというのが、私の意見です。

もう一つ私が気になったのは、[4-2-3-1]という布陣の2ボランチ(主にレオン・ゴレツカ、ジョシュア・キミッヒ、コランタン・トリッソのうち2人)と4バックとの間が極端に空き、このスペースを相手に使われてカウンターを浴びる場面が度々見受けられることです。2-3で敗れたボルシアMG戦(ブンデス第15節)の1失点目と2失点目ではまさにこの問題が浮き彫りとなり、2回とも相手MFラース・シュティンドルにこのスペースを使われ、ラストパスを通されてしまいました。

もしかすると、背後を突かれることを恐れた4バックの面々がラインを上げきれず、これによって前がかりになりがちな2ボランチとの間にスペースができてしまっているのかもしれません。昨シーズンのCL決勝トーナメントで見せていた前線からの獰猛なプレッシングを継続して実践すること、そして4バックと2ボランチの距離感を修正することが、今のバイエルンに求められているのではないでしょうか。

今月24日のシャルケ戦(ブンデス第18節)では4-0の大勝を収めましたが、前半10分すぎに前線からのプレスがかかりきらず、カウンターから相手のFWマルク・ウートに際どいヘディングシュートを放たれるというシーンもありました。このシャルケのチャンスが決まっていれば、試合の流れは違うものになっていたと思います。ドイツ王者の後半戦での奮起に期待したいですね。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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