“30代後半”の意地の大逆襲 今季のセリエAを支配するのはベテランだ
ミランで活躍を続けるイブラヒモビッチ photo/Getty Images
若手には負けていられない
今季のセリエAにテーマをつけるなら、「意地のベテラン大逆襲」といったところか。近年は若ければ若いほど良いといった風潮もあるが、その流れに抗うかのごとくベテランプレイヤーがイタリアの地で暴れている。
それも30代後半のプレイヤーが活躍しているのが特長的だ。引退を考慮しても不思議はない年齢だが、彼らはまだまだ若手に負けない能力を持っている。今季の主役はベテランだ。
最終ラインでは怪我から戻ってきたユヴェントスDFジョルジョ・キエッリーニ(36歳)の評価が相変わらず高い。全盛期は過ぎたが、その経験に裏打ちされたプレイはチームのマタイス・デ・リフトやメリフ・デミラルといった若手DFにはない渋さがある。リーグ戦でもクリーンシートが増えており、キエッリーニ復帰の効果は大きい。
インテルではマンチェスター・ユナイテッドからやってきたアシュリー・ヤング(35歳)もウイングバックとして奮闘している。30代半ばから新たなリーグへ挑戦するのは勇気のいることだが、セリエAの環境にも上手く適応している。
同じインテルではGKサミール・ハンダノビッチ(36歳)もレベルが高い。今季もリーグ戦では7度のクリーンシートを達成している。いっときはパフォーマンスの低下も懸念されたものの、直近は安定感を取り戻している。今でもセリエAトップレベルのGKだ。
19位と降格圏に沈んでいるパルマでは、39歳のポルトガル人DFブルーノ・アウベスも奮闘している。豊富な経験からキャプテンを任されており、残留へ向けて必死の戦いが続いている。
グータッチをするブッフォンとキエッリーニ photo/Getty Images
得点王争いの主役もベテラン
そして何と言っても前線だ。吉田麻也も所属するサウサンプトンでは、38歳のFWファビオ・クアリアレッラがチームトップの7得点を挙げている。2018-19シーズンにはセリエA得点王のタイトルを獲得するなど、ベテランになってもクアリアレッラの輝きは健在だ。
さらにサンプドリアでは33歳のMFアントニオ・カンドレーヴァも4得点と結果を出している。32歳の吉田もベテランと言っていい年齢で、サンプドリアでは経験豊富なベテランプレイヤーが大きな存在となっている。
ユヴェントスFWクリスティアーノ・ロナウド(36歳)、ミランFWズラタン・イブラヒモビッチ(39歳)も当然忘れてはならない。
ロナウドは今季リーグ戦17試合で16得点を挙げており、得点ランク首位に立っている。今季こそは得点王を狙っているはずで、その得点ペースは全く衰えていない。年齢を重ねてもコンディションキープはハイレベルを保っており、40歳くらいまで同じペースで得点を重ねることが可能かもしれない。
その可能性をまさに体現しているのが、ロナウドを2点差で追うイブラヒモビッチの存在だ。今年の10月で40歳を迎えるが、まだまだトップレベルで戦えることを証明している。ミラン優勝のカギを握る存在であり、まさか30代後半のロナウドと40歳手前のイブラヒモビッチがセリエA得点王の座を争うことになるとは、数年前は予想出来なかった展開だ。
イブラヒモビッチは得点数だけでなく、身体能力も高いままだ。195cmと恵まれたサイズとはいえ、今季リーグ戦ではFWの中で2番目に多い63回の空中戦勝利数を記録。1位はパルマでプレイするデンマーク人FWアンドレアス・コーネリウスで73回だが、コーネリウスはここまで1158分プレイしている。対するイブラヒモビッチは881分だ。この差を考えると、イブラヒモビッチの勝利数は見事だ。
ローマのFWエディン・ジェコは1206分間プレイして50回、トリノFWアンドレア・ベロッティは1781分間プレイして47回となっており、イブラヒモビッチの高さは今でも世界トップレベルなのだ。
年齢による体の変化もあるだろうが、彼らは上手く対応しながら結果を残し続けている。近年は食事やトレーニングも進化しているため、40歳になってもトップコンディションを維持する選手が増えてくるかもしれない。彼らはベテランに希望を与える存在であり、今季のセリエAの戦いからベテランへの視線は変わってきている(数字は『WhoScored.com』より)。