実力派MFがリヴァプールで“スケープゴート”に 評価されないテクニシャンの謎

今季リヴァプールに加入したチアゴ photo/Getty Images

批判受けるのは印象の問題も大きいか

現地時間20日に行われたエヴァートンとのマージサイドダービーに敗れ、いよいよ本格的に上位に踏みとどまることが難しくなってきたリヴァプール。負傷者続出のアクシンデントに見舞われながらも第21節のウェストハム戦まではなんとか3位をキープしていた同クラブだが、直近のリーグ戦4試合すべてを落としたことで現在は6位にまでその順位を後退させることとなっている。

そのなかで、一部から批判を浴びることとなっているのが今季新加入のMFチアゴ・アルカンタラだ。リヴァプールが勝てないのは、最終ラインに何人も怪我人が出ていることが大きく関係していることは明白。だが、それでも昨季王者が勝利から遠ざかっている原因は、このスペイン代表MFだと主張する人は少なくない。「リヴァプールが繰り出す攻撃のリズムよりチアゴは1テンポ遅い」(英『The Telegraph』)、「彼はチームのハードな守備的タスクをこなせていない」(ジェイミー・キャラガー)など、日増しに彼への風当たりは強くなっている。今季彼が出場したリーグ戦は12試合で3勝3分敗6敗という戦績も、イメージを悪化させているのだろう。

しかし、チアゴがそこまでの批判を受けるようなパフォーマンスを見せているかには疑問が残る。たしかに、ここ最近のチアゴはおとなしい印象が強い。特に直近のエヴァートン戦、あまり印象に残らないまま試合を終えてしまったというイメージのある人も少なくないのではないだろうか。とはいえ、この試合でチアゴは両軍トップとなる84本のパスを成功させている。少し地味ながらも、ビルドアップの中心にいたのは間違いなく彼なのだ。ゴールにこそつながらなかったが、キーパスもこの試合に出場した選手中トップタイとなる2本を供給。攻撃面でテンポが遅いとの批判を受けるチアゴだが、キッチリと要所要所でチームのチャンスにつながる決定的な仕事を果たしているのだ。

さらに、守備面でもチアゴは随所に好プレイを披露。中盤フィルター役としての仕事をこなし、こちらも両軍最多となるタックル数(4回)を記録した。たしかにまだ連携面で噛み合っていない部分は残っているものの、任されたタスクは十分に果たしていると言えるのではないだろうか。

「リヴァプールにおいて、チアゴがバイエルン時代の輝きを放っていないのは事実だ。それは誰もが理解している。だが、リヴァプールの攻撃にフィットしていないと言うのはフェアじゃない。その点で、まさに彼はスケープゴートにされていると感じるよ。彼はリヴァプールの攻撃に変化をつける存在として獲得された選手なのだから、テンポが違って当たり前だ。むしろ、そんな状況でも彼は頑張っていると思うよ。連携面でもっと成熟していれば、彼は今よりはるかに素晴らしい存在になると思うよ」(英『Daily Mirror』より)

元イングランド代表FWクリス・サットン氏も、チアゴに対する批判はお門違いだとこのように自身の意見を述べている。チームの攻撃に違う色を加えるべくやってきたものの、適応する間もなく重用されることとなってしまったテクニシャン。批判を受けているものの、むしろ短期間でここまでチーム戦術に適応を見せてくるあたりはさすがと言えるか。チームが勝てないなかでその原因を見つけ出そうとするのは至極当然の流れと言えるが、このスペイン代表MFを批判の対象とするのは間違っているのかもしれない。

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