南野よ、バイタルエリアの“支配者”となれ チェルシー戦で輝きを放った瞬間

チェルシー戦で先制ゴールを決めた南野 photo/Getty Images

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連携やオフ・ザ・ボールの動きなど課題も多い

サウサンプトンは20日、プレミアリーグ第25節でチェルシーと対戦し、1-1のドローで試合を終えた。リーグ戦での連敗記録を「6」でストップし、久しぶりに勝ち点を手にしている。そして、リヴァプールからサウサンプトンへレンタル中の日本代表MF南野拓実にとっては、ストロングポイントと課題がはっきり見えた試合だった。

この試合で、サウサンプトン加入後リーグ戦3試合連続のスタメン出場を果たした南野。これまでの2試合と同じように左サイドハーフに入ると、33分に貴重な先制点をもたらす。相手のバイタルエリアにポジションを取り、一瞬の隙を逃さずネイサン・レドモンドのスルーパスから裏へ抜け出し、冷静にボールをゴールへ流し込んで見せたのだ。

南野は[4-4-2]の左サイドハーフに配置されるも、基本フォーメーション通りにポジションを取るのは守備時で、攻撃時には主にインサイドにポジションを取り、[4-2-2-2]のような形になることが多い。前節のウルブズ戦でもよく見られた形だ。この形は南野のスタイルを考慮しつつ、ハイライン・ハイプレスからのカウンターを狙うサウサンプトンのコンセプトを活かすために、ラルフ・ハーゼンヒュットル監督が練ったのものだろう。南野は相手の間でボールをうまく引き出したり、1.5列目から相手の隙を突いて裏を狙ったりするのが得意なタイプで、セオ・ウォルコットのようなスピードが武器のドリブルタイプではないからだ。
より縦に早い攻撃を仕掛けることに重点を置いた戦術だが、この戦術における南野の役割は、彼にも非常に合っているように思える。日本代表ではトップ下のポジションを任される南野だが、バイタルエリアでボールを受け、前を向いて仕掛けたり、ワントップに入った大迫をおとりにして、バイタルエリアから相手の背後を狙ったりするシーンが目立つ。ゴールやアシストを量産したザルツブルク時代もそうだった。南野が最も輝く場所はバイタルエリアといっても過言ではないのだ。チェルシー戦ではゴールシーン以外にも、69分にMFとDFの間でボールを受け、味方にスルーパスを通す良い形が見られた。

もし南野がバイタルエリアを支配することができれば、サウサンプトンの浮上のきっかけになるに違いない。厳しいプレミアリーグで生き残るためにも、南野はバイタルエリアの“支配者”になりたいところ。左サイドでコンビを組むDFライアン・バートランドが時折、南野に左サイドへ広がってほしそうにする場面も見られるが、そこはコミュニケーションを深めていけば解決できるだろう。

一方で、このチェルシー戦では連携面での課題も浮き彫りになった。まだまだチームへ合流したばかりということに加えて、チェルシーを相手にチームが終始劣勢だったこともあるだろう。ただ、パスの出しどころに迷い、相手の囲まれでボールをロストしたり、受け手・出し手の両方の際にパスがズレたりするのが目立った。データサイト『WhoScored.com』によると、76分にピッチを退くまで、パス成功率は「66%」。スタメン出場を果たした選手としては、両チーム合わせて下から3番目だったという。

正式なメンバーであれば時間が解決してくれるものかもしれないが、南野は半年間のレンタル加入ということもあり、時間は限られている。連携面は早急に詰めていかなければならない点だ。先制点をアシストしたレドモンドあたりは、よく南野の動きを見ているように思える。彼との連携を深めることができれば、今季終盤戦ではサウサンプトンのホットラインとなるかもしれない。

また、試合後のインタビューでハーゼンヒュットル監督も「オフ・ザ・ボールの動き」など、いくつか課題点を指摘していた。南野は限られた時間の中でこれらの課題を克服し、調子を落としているサウサンプトンの救世主となることができるのか。

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