[粕谷秀樹]名将ロブソン退任以降のニューカッスルは混迷! プレミアリーグの座がいよいよ危なくなってきた

粕谷秀樹のメッタ斬り 054

粕谷秀樹のメッタ斬り 054

かつてニューカッスルを躍進させたボビー・ロブソン氏 photo/Getty Images

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ダウンしても最終的にはKO勝ち

「3点も取られたって? おいおい、つまらないこと言いなさんな。5点も取って勝ったのだから、それでいいじゃないか。両チーム合わせて8ゴールもご覧になれたお客さまも、満足されて家路につかれたんじゃないかな」

“サー” ボビー・ロブソン氏の粋なセリフである。彼に率いられた当時(1999年9月~2004年8月)のニューカッスルは、肉を切らせて骨を断つようなスタイルを貫いていた。失点は避けられないけれど、ゴールも期待できる。何回かダウンしても、最終的にはKOで勝つボクサーのようにスリリングだった。

現在ほど戦術論が幅を利かせず、一つひとつの動きをせせこましく分析する必要がなかった、いうなれば古き良き時代の闘い方とはいえ、ロブソンのアタッキング・フットボールは信奉者も少なくなかった。09年7月31日、彼が天に召されたときは、この業界全体が悲しみに打ちひしがた。
しかし、ロブソンの想いは届いていない。近ごろ、メディアのヘッドラインを飾るのは、クラブ買収が具体化されそうなときに限られている。昨年夏も、『RCPキャピタル・パートナーズ』(サウジアラビア政府系企業)との交渉成立間近といわれながら、同社の業績がプレミアリーグに認められず、ご破算になってしまった。

負傷離脱したカラム・ウィルソン photo/Getty Images

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ウィルソンの欠場はダメージ甚大

また、ロブソンが退任した03-04シーズン以降は、暫定体制を含めると監督が16回も代わった。07年からクラブを所有するマイク・アシュリーは、サム・アラダイスを8か月、スティーヴ・マクラーレンを9か月。クリス・ヒュートンに至っては、わずか2か月で解雇している。唯一の長期在任は、10年12月から4年間、監督を務めたアラン・パーデューだけだ。サイクルが非常に短い。

ケビン・キーガンは93年から3年半ほど勤めあげ、95-96シーズンと翌シーズンにリーグ2位。5シーズンに渡る ロブソン体制でも、02-03シーズンから2シーズン連続でチャンピオンズリーグに出場。アシュリーの人事は拙速だ。

しかも、投資を惜しんできた。当然、サポーター間の評判も芳しくなく、「オーナーは、あいつじゃなければだれだっていい」との声が毎シーズンのように聞こえてくる。

そして、目立った補強もなく迎えた今シーズンは17位。18位のフラムとはわずか3ポイント差だ(25試合消化時点)。マイボールになっても前進しない。多くの選手が自陣に留まっている。21日のマンチェスター・ユナイテッド戦も前半のオーバーペースがたたり、1-3で敗れた。スティーヴ・ブルース監督の采配も、後手を踏んだ感は否めない。

10ゴールを奪い、孤軍奮闘していたカラム・ウィルソンがハムストリングを痛め、少なくとも3月下旬まで戦線を離脱する。大きすぎるダメージだ。エースストライカーの欠場により、17-18シーズンから守り続けているプレミアリーグの座が、いよいよ危なくなってきた。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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