“ウィザード”と呼ばれた男の苦悩 新監督の下でもがくチェルシーの天才肌MF

トゥヘル監督の下ではなかなかチームに馴染むことができていないツィエク photo/Getty Images

システム変更で窮地

今季途中から指揮官の交代を決断したチェルシー。監督交代後の戦績はリーグ戦で4勝3分と、彼らはまずまず調子を取り戻してきている。フランク・ランパード政権下でなかなか結果を出せていなかった選手の復調も目立ち、現時点でトーマス・トゥヘル監督への政権移行はうまくいっていると言っていいだろう。

しかし、そんなチームの良い流れから取り残されてしまった選手がいる。モロッコ代表MFハキム・ツィエクだ。ランパード前監督の下では次第にチームの中心となりつつあった同選手だが、トゥヘル監督のチームでは出場機会が激減。リーグ戦7試合のうち、彼がプレイしたのはわずか174分(3試合)となっている。

なかなかツィエクが新しいチームになじめていない様子は、現地時間28日に行われたプレミアリーグ第26節マンチェスター・ユナイテッド戦でも見て取れた。この試合に[3-4-2-1]の攻撃的MFで先発出場を果たした同選手だが、なかなか攻撃に絡むことは叶わず。前半終了まででパス成功数はわずか18本、うちアタッキングサードにおける成功数は3本にとどまった。何本か惜しいシュートを放つシーンもあったが、以前と比べて存在感が薄れた印象は否めない。以前は“ウィザード”という渾名で呼ばれるほど前線で効果的な役割を担っていただけに、今のツィエクに物足りなさを感じているファンも少なくはないだろう。

では、なぜ現在のツィエクは思うようにその強みを発揮することができていないのだろうか。おそらく、最も大きな要因として考えられるのはシステムの変更だろう。

トゥヘル監督は就任以降、主に3バックを軸としたシステムを採用している。そのなかでは、ランパード監督時代にツィエクが最も輝きを放っていたウイングのポジションがない。メイソン・マウントと並ぶ形の攻撃的MFでは狭いスペースでのプレイを強いられる場面も多く、ボール保持時の選択肢が限定されている印象は強い。その結果、以前は大外から正確なキックを生かしたロングボールでチャンスを演出することもあったツィエクだが、このポジションでは少し窮屈なプレイを強いられることとなっている。味方のパスを受けてから次の選択肢を思考する時間が減少したことで、このモロッコ代表MFは思うようにプレイできなくなった。そう考えるのが妥当だろう。

とはいえ、チームがこの形でうまく回り始めていることを考えると、トゥヘル監督が再び近いうちにウイング採用型の4バックシステムを使う可能性は低いと言わざるを得ない。ツィエクが再びチェルシーにおける影響力を取り戻したいのであれば、与えられた中央寄りのポジションで違いを生み出す術を身につけなければならないだろう。すでに選手として脂の乗り切った時期を迎えているものの、27歳に求められる“更なる成長”。能力の高さは証明済みなだけに、今後ツィエクの大逆襲を期待したいところだが、果たして。

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