[MIXゾーン]アビスパに封じられた流麗なビルドアップ 徳島ヴォルティスに突きつけられた課題とは
今年1月に徳島に加わった藤田譲瑠チマ。軽快なターンや正確なパスで、同クラブのビルドアップを支えている(写真は3月10日の川崎戦) photo/Getty Images
アビスパの布陣変更に対応しきれず
明治安田生命J1リーグの第4節が3月13日に行われ、徳島ヴォルティスがアビスパ福岡に1-2で敗れた。
[4-2-3-1]という布陣でこの試合に臨んだヴォルティスは、前半2分に先制に成功。トップ下で起用された渡井理己が敵陣中央から縦パスを送ると、このボールを受けた右サイドハーフの宮代大聖が左足を振り抜く。シュートは相手GK村上昌謙に阻まれたものの、こぼれ球をワントップの垣田裕暉が押し込んだ。
GK上福元直人とセンターバックの鈴木大誠と安部崇士、及び藤田譲瑠チマと小西雄大の2ボランチを中心とするヴォルティスのビルドアップは、先制点を奪ってからも機能。前半11分すぎには、最終ライン付近まで降りてきた藤田譲瑠チマに相手の2ボランチの一角カウエが釣り出され、センターサークル付近にスペースが出来る形に。カウエの背後のスペースにポジションをとった宮代が上福元からの縦パスを受け、決定機を迎えた。
GKと2センターバック、そして最終ライン付近まで降りてくる2ボランチの片割れの計4人でパスを散らし、相手のハイプレスを掻い潜るという作戦が崩れたのが、アビスパの長谷部茂利監督が修正を施した後半開始以降。ハーフタイム終了直前、同監督は山岸祐也と2トップを組んでいた城後寿に代え、重廣卓也を投入。布陣も[4-4-2]から重廣をトップ下に据えた[4-2-3-1]へと変更した。
重廣に与えられたタスクは、最終ライン付近まで降りてビルドアップに関わる、ヴォルティスの2ボランチの片割れの監視。後半7分すぎには、センターサークル付近に移動した小西に重廣がマークについたことで、ヴォルティス陣営のパスをサイドに追いやることに成功。敵陣左サイドで奪ったボールが山岸、金森健志、石津大介へと繋がると、ラストパスを受けた右サイドバックのエミル・サロモンソンがカウンターを結実させた。
同点に追いつかれたヴォルティスは、その後も重廣にボランチを監視されたことで、最終ラインやGKから効果的な縦パスを繰り出せず。攻撃が停滞すると、後半22分にはジエゴが自陣ペナルティエリア内でハンドの反則を犯し、これによるPKを金森に物にされて形勢逆転。この1点が試合終了まで重くのしかかった。
昨年まで東京ヴェルディに在籍し、今年1月に完全移籍という形でヴォルティスに加わった藤田譲瑠チマは、アビスパ戦終了後に行われたオンライン会見に出席。試合を総括するとともに、自身やチーム全体の課題についても語ってくれた。
「前半は自分たちのサッカーができて、すごく良いペースだったと思うんですけど、後半に相手が前から(守備に)来るようになってからは、自分たちのサッカーが出来なくなってしまいました。この徳島のスタジアムでは、後半に自分たちが風下に立つことが多いので、そういう時に、チームとして人と人の距離感を近くしてパスを繋ぐのか、(ロングボールを)簡単に前に蹴ってから、セカンドボールに対して守備をして、そこから自分たちのサッカーをしていくのかを、試合をやる前に自分たちで決めていく必要があると思います。他のスタジアムでやる時も、試合が始まってからビックリして受け身になるのではなく、相手がどのように来るかを予測しながら対応していく必要もあるのかなと思います。現状、そういった迷いは自分のなかにもありますし、他の選手のなかにも多分あると思います」
先述の藤田と小西、そしてこの試合でベンチスタートだった岩尾憲と、ヴォルティスには配球力に長けるMFが揃っているが、彼らが今後も厳しいマークに晒されることが予想される。この試合の前半11分すぎに見られたGK上福元から宮代への縦パスのように、これからはボランチを囮に使ったビルドアップの練度を高めるべきだろう。相手の出方に応じた戦い方を、チーム全体で共有できるか。藤田が言及した通り、この点がヴォルティスの浮沈のカギを握りそうだ。