[西岡明彦]基準が変更されたVAR、フットボールの醍醐味は戻るのか?

残留争いをしているフラムのパーカー監督 photo/Getty Images

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 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されたことで、「はっきりとした明白な間違い」や「見逃された重大な事象」があった場合に映像をチェックした上で正しい判定を下すことが可能になりました。その一方で、ゴールが決まった際には必ず映像でのチェックが入ることで、最終決定を待つ選手たちによる半信半疑なゴールセレブレーションはスポーツエンターテイメントの醍醐味を味気ないものに変えてしまっている印象は否めません。

 今月5日、国際サッカー評議会(以下、IFAB)は年次総会を開催し、解釈が一致していなかったハンドの基準を明確化することになりました。意図せずに手や腕に当たったボールがチームメイトのゴールや決定機に繋がった場合は、これまでの基準を覆し反則としないことになりました。イングランドでこの新規定が導入されるのは7月1日からになる予定だと伝えられています。

 ハンドの判定に関する相次ぐ批判を受けてIFABはルールの解釈を緩める判断を下しましたが、同評議会直前にも疑惑の判定が大きな波紋を呼んでいました。4日にトッテナムと対戦したフラムは、FWマジャのゴールが取り消しになりました。マジャのシュートの直前、トッテナムDFダビンソン・サンチェスのクリアがフラムMFのマリオ・レミナの腕に当たっていたことがVARで確認されたのです。レミナの腕は自身の胴体についていたためボールを避けられない状況でした。
 試合後インタビューに答えたフラムのスコット・パーカー監督は「これはルールだが、クレイジーだと思う。レミナはどうすることもできなかったはずだ。我々やファンはゴールと興奮を望んでいるのに、VARが台無しにしている。愛してきたフットボールにおけるむき出しの感情を奪い去っている」と訴えました。

 今季プレミアリーグに復帰したばかりのフラム。現在、クラブはテムズ川に面する本拠地クレイブン・コテージのリバーサイドスタンドを改築し29600人を収容するモダンなスタジアムへと変貌する拡張工事の最中。さらに大きなクラブへと成長していくためにプレミアリーグのステイタスを維持することを関係者は懇願しています。もしトッテナム戦でのゴールが認められていれば、貴重な勝ち点1を獲得できていたフラム。今季のハンド判定の解釈によってフラムがどんな結末を迎えるのか注目です。

文/西岡明彦

※電子マガジンtheWORLD第255号、3月15日配信の記事より転載

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