秋田が旋風を巻き起こすか 吉田謙監督の言葉に注目!
秋田を率いる吉田監督の言葉には力がある photo/Getty Images
J2で磐田が連敗スタートとなりました。優勝候補にもあげられていたので、これは意外なスタートとなりました。第1節琉球戦、第2節町田戦ともに開始直後に失点して追いかける展開になり、その後はボール支配率、シュート数などで上回りながらも決めきれず、どうにも歯切れが悪いです。
まだ2試合を終えたばかりですが、あっさり失点している守備面は改善が必要です。町田戦ではミスが出たところに付け込まれて失点しています。ここからどう立て直して新たに自分たちの開幕を迎えるか、様子をみたいところです。
逆に、琉球は第2節山口戦に2-1で競り勝ち、連勝となりました。昨季終盤戦はホームでなかなか勝てませんでしたが、そのうっぷんを晴らす好スタートとなりました。第1節磐田戦では1点のリードを守るべく、割り切って守備的な戦いをみせました。山口戦も序盤に2点をリードし、その後に1点を返されましたがしたたかに守り切っています。個人的な印象としては、良い意味で琉球“らしくない”勝ち方だったと思います。
これは決して、ネガティブな意味ではないです。各選手が前へ行きたい気持ち、大好きな攻撃をガマンし、粘り強く戦って立て続けに勝点3を得ることに成功しました。下位4チームが降格するレギュレーションを考えると、こうした戦いを繰り返して着実に勝点を積み上げていくことが大事だと思います。
昇格1年目の秋田も第2節栃木戦に勝利し、さっそくJ2初勝利をあげました。第1節群馬戦も勝つチャンスがあった試合で、秋田は引いて守るだけではなく、前からアクションを起こす守備をしています。出足が鋭く、強度のあるプレスをみせます。全員が愚直に頑張るチームで、ぜひみなさんにみてほしいです。旋風を巻き起こす可能性があります。
また、試合後の吉田謙監督のインタビューを見逃さないでください。一つ一つの言葉に重みがあり、思わず引き込まれます。考えていることを言語化する能力、人に伝える能力が高く、聞いているだけで器の大きさを感じます。一度ご覧になると、きっと印象に残ります。
同じ昇格組の相模原は、2試合を終えて無得点となっています。第2節群馬戦に引き分けて勝点1を得ましたが、勝つためには得点が必要です。割り切って守る力はあるので、あとは前に出る力、攻める力をどれだけ出せるかです。群馬戦も決定機があまりなかったので、攻撃面は改善しなければなりません。ホムロ、ユーリの2人の外国籍選手がまだトップコンディションではないので、今後に期待しています。
相模原はGK、DFに新外国籍選手を獲得していますが、まだ合流できていません。これは複数のチームが同じで、コロナ禍でフルメンバーが揃っていないチームが多いです。磐田をみても、FWファビアン・ゴンザレス、GKアレクセイ・コシェレフが入国できていません。こうした状況を考えると、序盤戦、中盤戦、終盤戦で勝点を積み上げるチームが変わってくるかもしれません。
共通点が多い柳澤亘 横山歩夢は一見の価値あり
水戸の柳澤はブレイクなるか。写真は岐阜時代 photo/Getty Images
選手をみていくと、水戸の柳澤亘をまず知っていただきたいです。J3岐阜から加入した千葉県出身の右SBで、鹿島のつくばJrユース、八千代松蔭高、順天堂大という経歴の持ち主です。そして、憧れの選手として内田篤人の名前をあげています。
千葉県出身、千葉英和高(八千代松陰高のほぼ隣)、鹿島でプレイし、内田篤人ともチームメイトだった元右SBの私としては、注目せざるを得ないです。千葉県をいったん離れたあと、茨城県のクラブに加入した共通点もあります。秋葉忠宏監督が率いる水戸は前へいく推進力が高いサッカーをしていて、SBの運動量、攻撃参加が求められます。柳澤亘にはこのスタイルにうまくハマってほしいです。
SBでは琉球の2人、田中恵太(右サイド)、沼田圭悟(左サイド)も高いポジションを取り、攻撃的な姿勢をみせています。田中恵太はいま私が注目している大好きな右SBのひとりで、第2節山口戦でゴールを決めています。良いスタートを切ったチームのなかで、どんな成長をみせてくれるか非常に楽しみです。
インテンシティの高いサッカーをみせる京都のなかでは、左SB荻原拓也が攻守にアグレッシブなプレイで存在感を放っています。京都も両SBが高いポジションを取るチームで、右SB飯田貴敬も運動量が多いです。昨季はピーター・ウタカに頼るところが多かったですが、今季は見違えるサッカーをしており、やはり曺貴裁監督のカラーに染まってきているなと感じます。
まだ2節を終えた段階ですが、水戸の柳澤亘のようにJ3から加入した選手の活躍が目立ちます。金沢の大谷駿斗(←富山)、京都の三沢直人(←鳥取)、山形の中原輝(←熊本)、山口の石川啓人(←熊本)、新潟の谷口海斗(←熊本)など、それぞれ新天地で力を発揮しています。なかでも、三沢直人からはスケールの大きさを感じます。第1節相模原戦に途中出場し、いきなり初ゴールを決めています。
東京Vでは15歳の橋本陸斗が第1節愛媛戦でピッチに立ち、千葉の高卒ルーキーであるブワニカ啓太も第1節甲府戦で貴重な同点ゴールをマークしています。こうして気になる選手をピックアップしていくと、ホントにキリがないです。それほど、J2は魅力的なタレントに溢れています。
最後にぜひ紹介したいのが、松本の横山歩夢です。東海大高輪台高から加入したばかりの高卒ルーキーですが、とにかくスピードがあります。大いに注目してほしい選手で、その速さは前田大然を彷彿とさせます。言ってしまえば、彼のスピードをみるだけで価値があります。第1節山口戦、第2節京都戦にいずれも交代出場でさっそくその足をみせてくれました。ちなみに、千葉、横浜FC、甲府などでプレイした横山博敏さんが父親です。期待値の高い横山歩夢がどんな選手に成長するか、チェックを続けたいと思います。
構成/飯塚健司
※電子マガジンtheWORLD第255号、3月15日配信の記事より転載