“失敗補強”とするのはまだ早い チアゴがリヴァプールに融合するのはまだ先か

今季からリヴァプールでプレイしているチアゴ photo/Getty Images

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「批判は不当なものだと感じる」

2020-21シーズン、ここまでリーグ戦29試合を終えて7位に甘んじるリヴァプール。負傷者続出のアクシンデントに見舞われたとはいえ、昨季圧倒的な強さでプレミアリーグを制した彼らがここまで苦戦を強いられるとは。あらためて、プレミアがいかに厳しいリーグであるかを人々は思い知らされていることだろう。

そんなリヴァプールが低迷している原因。それは間違いなく、DFフィルジル・ファン・ダイクを筆頭に守備陣の主力が負傷離脱を強いられたことだろう。彼らの不在によって、リヴァプールは守備の強度だけでなく、ビルドアップの局面においても手詰まり感が生じることとなった。

しかし、そんななかで一部から批判の対象とされている選手がいる。今季新加入のMFチアゴ・アルカンタラだ。リヴァプールがなかなか勝てないのは前述したような理由があるはずだが、このスペイン代表MFへの風当たりは次第に強くなっている。
「リヴァプールが繰り出す攻撃のリズムよりチアゴは1テンポ遅い」(英『The Telegraph』)

「彼はチームのハードな守備的タスクをこなせていない」(ジェイミー・キャラガー)

「彼のスタイルは今のリヴァプールに合っていない」(ポール・スコールズ)

チアゴに対してはこのような批判の声が後を絶たない。昨季のような早いテンポのサッカーに彼は順応できていないというのが、彼に厳しい意見をぶつける人々の考え方だ。実際、今季のチアゴはそういった“1テンポ遅い”プレイを見せることもあるだけに、そういった人々の気持ちも理解できないことはない。おそらく、今季出場したリーグ戦15試合(5勝3分7敗)での戦績も、同選手のイメージを悪化させているのだろう。

しかし、彼らは今一度リヴァプールがチアゴを獲得した意図を思い出すべきなのかもしれない。本来であれば彼はユルゲン・クロップ監督の志向する“縦に速いサッカー”のリズムを変える選手としてチームに迎え入れられたはず。いわゆる、チームに“プラスワン”の要素を取り入れるための存在だったのだ。あくまでもチアゴの評価はファン・ダイクらが復帰し、完璧なスカッドが揃ってから。それを忘れてはいけないはずだ。

「今季のチアゴに関して、私は同情するよ。新たにクラブへ加わった選手にとって、観客なしのスタジアムでプレイするのは難しいことだ。特に彼は、昨季までプレミアリーグで最高と言われていたチームに加入したんだ。なかなか上手くいっていないのは事実だが、現在彼が受けている批判は不当なものだと感じるよ。チアゴのインスピレーションを生かすため、まずリヴァプールに必要なのは完璧なスカッドだ。そしてファンの暖かい声援があれば、彼はネガティブな気持ちにならずに済むだろう。いつも通りのリヴァプールに戻りさえすれば、彼がチームで最高の1人になることは間違いないと私は思う」(英『Daily Mirror』より)

クラブOBの元イングランド代表MFジョン・バーンズ氏もチアゴに関してはこのように述べている。たしかに現時点で彼はチームにうまく溶け込めているとは言い難いものの、この特殊な状況においては致し方ないことともいえるだろう。現状リヴァプールでは向かい風にさらされているチアゴだが、来季こそは周囲の雑音を振り払うほどのパフォーマンスを披露できるか。2021-22シーズン、超絶テクニシャンの評価大逆転に期待したい。

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