山根、松原が台頭 右SBの競争が激化
山根は湘南、川崎で成長し、日本代表へ。そして初得点も決めた photo/Getty Images
日本代表が3月25日に韓国(○3-0)、30日にモンゴル(○14-0)と対戦し、連勝を収めました。昨年11月18日のメキシコ戦(●0-2)に後手を踏む展開で敗れていたので、対戦相手のレベルに関係なくスカッとする勝利となりました。とくに、韓国は現役時代にユース代表、五輪代表で敗れるなどいつも追いかけている相手だったので、内容で圧倒し、無失点で勝利してくれたのは誇らしかったです。
モンゴル戦も各選手がやるべきことをやった結果として大差となりました。正直、モンゴルの守備は組織的ではなく、人数がいるもののスペースはありました。そこを狙って中央、サイドから崩す多彩な攻撃をみせてくれました。どんなに点差がついても自分たちのサッカーにフォーカスし、最後までひたむきに戦い抜きました。
私が気になるのはやはり右サイドバックで、今回プレイした2人、山根視来と松原健はどちらも結果を出しました。酒井宏樹という高いカベが存在するなか、昨年の欧州シリーズでプレイした室屋成も含めて、新しい選手が台頭してきました。こうした“突き上げ”がチームを強くします。
山根視来は湘南時代からみてきましたが、加入2年目ぐらいのときに3バックの右サイドをやりはじめ、積極的に前へいくスタイルを確立していきました。湘南でタテに早いスタイル、川崎で足元の正確さを重視するスタイルを吸収し、あれよあれよと日本代表に選出され、初出場の韓国戦で初得点を決めるところまで到達しました。
前方への推進力があり、ときにインナーラップするなど神出鬼没な動きでゴール前に入っていけます。本当に攻撃面の良いところが出ました。一方で、韓国に攻撃の時間をあまり与えなかったことで、山根視来の守備に関しては課題を見出すところまでいきませんでした。これに関しては、欧州や南米の強豪と対戦したときにどうなるかでしょう。
モンゴル戦でプレイした松原健も前方への推進力を発揮し、攻撃面で良いところをみせました。山根視来もそうでしたが、同サイドの伊東純也との連携もよく、バリエーションのある攻撃を可能にしていました。そういった意味では、伊東純也が2人の良さを引き出したとも言えます。そして、モンゴル戦もチーム全体で相手にスキを与えない守備ができていたので、松原健もまた守備に関しては課題うんぬんを語ることはできません。
センターラインの4人、吉田麻也、冨安健洋、守田英正、遠藤航は存在が際立っていました。あれだけブレないでドンと構えていてくれると、チームは安定します。だからこそ、サイドバックがグイグイと前にいくことができました。ボランチは柴崎岳がいるし、初招集の稲垣祥も結果を出しました。中山雄太、板倉滉、田中碧などU-24代表にも質の高い選手がいます。森保一監督にはうれしい悩みになったと思います。
吉田麻也、冨安健洋は、立ち居振る舞いからも自信が漲っていました。ただ、経験、実績であまりにも抜きん出た存在であるために、どちらかがいないときが心配です。モンゴル戦では畠中槙之輔、中谷進之介がプレイしました。植田直通、昌子源などもいます。今後、彼らをどう組み合わせるかでしょう。
オーバーエイジはどうなる? 大迫や吉田があり得そう
森保監督は手堅いチーム作りを進めている photo/Getty Images
U-24アルゼンチン代表と2試合を戦った東京五輪世代の選手たちは、相手のタイトな守りを崩せず1戦目は0-1で敗れました。この試合のアルゼンチンはマティアス・バルガス、フェルナンド・バレンスエラが献身的な動きでセカンドボールを拾い、前線のアドルフォ・ガイチを使ってシンプルにDFの背後を狙ってきました。21分という早い時間に先制点を与えたことで、「日本にはやらせないぞ」という流れになり、最後のところを守り切られて追いつくことができませんでした。
中2日で迎えた第2戦は攻撃のテンポをあげることで相手がプレッシャーに来る前にいなすことができていて、うまくパスが回せていました。ゴールはタテパスから1点、セットプレイから2点とシンプルなカタチで生まれましたが、U-24日本代表の良さが出ていたと思います。
目を引いたのは中盤に入った田中碧で、的確なポジションを取ってボールをキープし、正確なタテパスを入れてチャンスにつなげ、積極的に前へ出てセカンドボールも拾っていました。また、町田浩樹、瀬古歩夢の2人のCBは、第1戦で狙われていた背後のスペースをよくケアしていました。チーム全体で修正して臨んだことが、3-0の勝利につながりました。
東京五輪の登録枠は18名で、こうなるとオーバーエイジをどのポジションで使うか難しいです。森保一監督は「6月ぐらいに使う」とコメントしたようなので、そろそろ答えが出されます。大迫勇也なのか、吉田麻也なのか……。個人的にはサイドバックもあり得ると考えています。
森保一監督は以前から、相手をみながらピッチ内でいろいろなことを考え、臨機応変にプレイしなさいというコンセプトでチーム作りを進めています。広島を率いたときもそうでしたが、選手ありきのチームを作ろうとしています。この部分は変わっていなくて、そうしたモデルがあったうえで各選手がそれぞれのカラーを出すことが求められています。
韓国戦、モンゴル戦はともに相手をみながら、自分たちが主導権を握ることができていました。一方で、昨年敗れたメキシコ戦は後手を踏んだことが敗因としてあげられます。U-24が敗れたアルゼンチンとの第1戦も、相手の狙いに後手を踏みました。そう考えると、今後は後手を踏んだときにいかにピッチ内で臨機応変に対応できるかが課題になってきます。
いまの日本代表は良い守備からの良い攻撃が原則で、チームのベースは守備にあります。ここまでの強化の流れをみると、手堅いチームになると考えられます。競った試合、際どい展開を粘り強く戦い、モノにしていく。広島でもそうやってチーム作りを進めていました。今後内容に関していろいろと指摘されるタイミングがあるかもしれませんが、より結果にこだわりながら戦うことでレベルアップしていくと思います。
構成/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)256号、4月15日配信の記事より転載