[MIXゾーン]雷雨は京都に味方したのか サンガスタジアムを襲った想定外の事態

試合は雷雨により1時間近くも中断となった photo/Norifumi Yoshimura

愛媛もチームが立ち直り好ゲームを演出

「今日はなかなかしっくりこないゲーム展開だった。最初の25分間は先制点を挙げることができ、他にもいくつかチャンスがあった。しかし飲水タイムの後、少し流れが悪くなったような気がする。それでも追加点を挙げて2点をリードしたが、前半終了直前に失点し、目を覚まさなければならないと感じた。相手もそうだったと思うが、雷雨の影響で前半終了後1時間ほど時間があったことで、しっかりコンディションやメンタルを準備し直して100%の状態で後半に臨むことは難しかった」

 決勝点を決め、この試合のヒーローとなった京都のCBヨルディ・バイスのコメントに、すべてが凝縮されていた。

 ここまで5連勝と波に乗る京都。監督交代という劇薬を投じた愛媛。チーム状態は好対照だが、試合そのものは拮抗したものになった。バイスの言葉通り流れがそれぞれに傾く時間帯があり、更に雷雨による1時間近くの中断という想定し難い状況に、ピッチ内は翻弄されているようにも見えた。

 キックオフ直後は京都のプレッシャーに愛媛が晒される。

「立ち上がりの失点はこのスタジアムの圧というか、敵にしたときの京都の圧を感じたものだと思う」(実吉監督)

 昨年までこのスタジアムで指揮を執っていた指揮官だからこそ、無観客とはいえその『圧』がどういうものかを理解していたのだろう。京都が最終ラインをハーフウェイラインに設定するほど、立ち上がりは京都の時間帯が続いた。

 ようやく愛媛が落ち着きを取り戻したのが前半の飲水タイムあたり。京都のやり方に徐々に慣れ、「京都の切り替えの速さは把握していた。ただ自分たちも単純にその場から逃げるようなプレイはせず、しっかり外していくためのポジショニングやプレイに関わる姿勢は出していた。カウンターの時ツートップに当ててチャレンジする姿勢も見せた」(実吉監督)。

 愛媛が京都のプレッシャーにアジャストするということは、京都は攻め手をなくすことと同義である。同時に京都が早い段階で2点を先制したことで、多少の気の緩みも見えた。その典型が前半終了間際の45+3分の愛媛のゴールである。

「失点したワンプレイに関しては我々のレイジー(怠惰)なプレイというか、2-0という点差に安心していつもならやるべきことをやれなかった。その結果として失点をしてしまった」(チョウ監督)

 既に遠くで雷鳴が鳴り始め、ゲームの中断も予想された状況だっただけに、ここを何点差で終わるかはゲームの流れを左右する可能性もあった。

「2-1にされた後に前半が終わったので、あの中断は我々にとってはポジティブな中断だった。切り替えるのには有り余るぐらいの中断だったので。0-0のつもりで後半に入れたということでいえば、良かったかなと思う」(チョウ監督)

 何事も気の持ちようとはいうが、3節に大宮戦で中断の末、一度は中止を経験している京都だけに、こうした難しい状況をポジティブに捉えられる経験が蓄積されていたということなのだろう。

 後半は互いが睨み合う形で進み、76分にバイスが、その直後の79分に愛媛のFW藤本が決め最後の最後まで予断を許さない展開となった。結果的には3-2と京都が勝ち切り6連勝を飾り、次節2位琉球との直接対決に期待は大きく膨らむ。

「FC琉球戦は絶対に取らなければならない大事な試合。連勝を続けるという意識ではなく、 その試合にだけ集中して臨む」(MF松田)

 一方敗れた愛媛は一時のJ3降格の恐怖に怯えた姿はもうない。

「相手陣内に運べる回数があったが、フィニッシュの精度で京都に質の違いを見せつけられた。そこは次への課題だと思う」(MF川村)

 数節前までないない尽くしだった愛媛だが、ポジティブな意味で課題を見つけたということになる。

 無観客だったがピッチ内は熱く、互いが持ち味を出し切った好ゲームだった。

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