川崎フロンターレは4日、明治安田生命J1リーグ第12節で、名古屋グランパスと対戦した。
2位・名古屋との首位決戦が連戦となる異例のスケジュールの中、敵地で行われた初戦で4-0の快勝を収め、良いイメージを持って等々力陸上競技場に帰ってきた川崎。しかし、この一戦では屈辱の敗戦のリベンジを狙う名古屋のハイプレスにキックオフ直後から苦戦を強いられ、思うような試合運びができない。立ち上がりから試合を優位に進めた初戦とは全く異なる展開となったが、そんな中でもゴールを奪ってしまうのが今の川崎だ。名古屋キラーのDFジェジエウが苦しい状況を打破する。
31分、MF田中碧がキッカーを務めた左CKをファーサイドへ走り込んだジェジエウが頭で合わせ、先制点をゲット。昨年10月にホームで行われた名古屋戦でも2ゴールを挙げる活躍を見せていたフロンターレのフィジカルモンスターが、均衡を破って見せたのだ。この先制点により、川崎は前半をリードして折り返す。
後半に入ると、50分に再び川崎がスコアを動かした。右サイドバックの山根視来がドリブルで内側へ切り込み、DF登里享平を経由して左サイドへ展開。ボールを受けたFW三笘薫は、背負っていた相手DFかわして深い位置まで侵入し、クロスを上げる。内側へ切り込んだ際にそのままゴール前に走り込んでいた山根がスライディングをしながら合わせ、追加点を決めた。
その後、オウンゴールによってリードを3点に広げた川崎。終盤に名古屋の猛追をくらい、1点差まで追い込まれるもなんとか逃げ切り、3-2の勝利を収めた。この結果、開幕戦からの無敗記録を「14」まで伸ばした川崎(12勝2分、勝ち点「38」)は、2位・名古屋との勝ち点差を「9」まで広げ、首位を独走している。
今季もサイドバックとは思えないような攻撃力や動きで、連覇へ向けて快進撃を続ける川崎の中でも特に存在感を放っているのが右SBの山根だ。先日初招集された日本代表でもゴールを決めた同選手だが、この日の2点目のシーンでも「なぜDFの山根がゴール前に?」、「SBの山根がそこに走り込むの?」と思った人も少なくないだろう。はたして、山根にはどのような景色が見えていたのか。試合後にゴールシーンも含めて、山根がさまざまな考えや思いを明かしてくれた。
ーー試合を振り返って
「やっぱり相手は前回と戦い方を変えてきて、フォーメーションも全部違いました。相手の狙いがあるところで、ちょっと難しい入りになりましたけど、その中でしっかりと決定機という決定機は作らせず、前半にセットプレイで点を取れたのは良かったかなと思います。けど、3-0になった中で2点取られてしまったこと、自分のミスからカウンターが始まって失点につながってしまったこととかを考えると、やっぱりクリーンシートで行きたかったですし、今日はちょっと悔いが残る勝利だったかなと思います」
ーー3-0になってから少しバタバタする時間帯が続いたが、チームの雰囲気はどうだったのか
「カオル(三笘薫)とかが(ボールを)持って運んだときに、相手の前線の選手がすごく攻め残りしていました。相手は点を取らなきゃいけないので、リスクを冒して前には強力な選手が残っている中、自分たちはどうするのかっていうのを統一しきれなかった感じがありました。(名古屋には)途中交代で入ってくる選手たちにすごく能力の高い選手たちがいるので、やっぱりあそこで失点してしまったことで、より相手に勢いを出させてしまったかなと思います」
「(意思統一が足らなかった部分に関しては)4点目を取りに行くのか、でも相手は攻め残りしているからあんまり人数をかけてもスペースを与えるだけだしなぁ〜とか……。そういうところの中で、リスクを冒して(前に)行ってもよかったのかなとも思いますし、完全に相手を押し込めちゃえば、相手陣地に閉じ込めちゃうことができてしまうので、そうやってプレイしたときの方が、即時奪回でいい展開に持って行けたんじゃないかなとは、試合が終わって考えるとありました。(点を)取られないように、もう少し押し込んじゃってもよかったかなと、今は思っています」
ーー堅守の名古屋から奪った得点シーンについては?
「アキさん(家長昭博)が外に張ったので、中のスペースがガッポリ空いていました。そこでボールを受けて、ボールを運んだところで左に展開して、カオルが持ったときにエグるか、抜き切ってしっかりクロスを上げてくれると思っていたので、タイミングだけは間違えないようにしていました。相手が反応できないボールを出してくれたので、あとはしっかりゴールに押し込むだけでした。ほぼほぼカオルのゴールかなと思っています。ただ、数字というのは狙っています。やっぱりサッカーをやっている以上、得点で目立ちたいので(笑)。(ゴール前に)入っていけるポイントで入って、行くタイミングというのをしっかり間違えないように試合中はやっています」
「マンツーマンで結構見てくるチームだったので、多分ああいう後ろの選手が入ってくると、イレギュラーなことが起こって、普段とは違う枚数の守備をしなきゃいけなかったりしますし、そういうのは常に狙っています。やっぱり3列目から入っていけば、なかなかマークにつかれません。僕自身もそういうふうに入って来れらると嫌ですし、そこは狙っているところなので、今日は結果になってよかったなと思っています」
ーー首位決戦の2連戦で、7得点を奪っての連勝。2位の名古屋と勝ち点差「9」をつけましたが
「終わってみて、9ポイント差をつけられたことはすごく大きいですけど、リーグ戦なので1試合1試合の積み重ねが大事です。今日の2失点は本当に無くせたものだと思うので、そこにフォーカスしてまた次の試合に向けてやっていこうかなと思います」
ーー自身としては日本代表に初招集されてから1ヶ月。代表選手としての自覚や意識、結果へのこだわりなど、変化はあったのか
「代表の選手として見られているのかどうかは、僕にはわかりません。ただ、僕自身継続して(日本代表に)入っていくためには、結果を残さなきゃいけないですし、Jリーグで目立つ存在じゃなきゃいけないとは思っています。毎試合毎試合アピールの場として、しっかりいいプレイをすることを心がけています」
Jリーグ史上最強と言っても過言ではない現在の川崎で、今や必要不可欠なピースとなっている山根。まるでストライカーなようなシュートや駆け引きなど、サイドバックとは思えないような驚きのプレイは、今後も目が離せそうにない。