[MIXゾーン]“靴一足ぶん”のカバーが生んだ大きな差 京都はいよいよJ2の主役へ

京都は確実に勝点3を手にした(写真はイメージ) photo/Getty Images

新潟、琉球に勝点で肉薄

「相手に対して靴一足ぶん」

 京都のチョウ・キジェ監督は「今年のサンガスタイルのひとつの象徴」としてこの言葉を使った。

「相手に対して靴一足ぶん防いでいく」こそが京都のスタイルであり、猛烈な『圧』の原点となっている。対戦相手の山形の佐藤監督代行もそれを強く感じたようだ。

「相手の圧力が高く、どんどんくることは想定していたが、そこに対して前の選手のチャレンジする姿勢のところで、もっともっと積極的なボールを受ける、前に仕掛ける勇気は持って欲しかったと思う」

 山形の前線が及び腰だったことが、京都に大きなアドバンテージを生んだ。

「前半は今季の中でも非常に良い内容のゲームだったと思う」

とチョウ監督が話したほど、京都の圧力が山形を押し込み続けた。32分に右サイドから展開されたボールに、最後は逆サイドから走り込んだMF荒木が見事にゴールネットを揺らしてみせた。このまま一気に京都がゲームを決めてしまうのではないかと思えるほど、一方的な展開で前半が終わった。

ただ「こういう試合は後半に難しくなるなと予想をしていた」(チョウ監督)。

 前半の劣勢を「意識の問題だと理解していた」という佐藤監督代行は、ハーフタイムでメンタル面を強調することで山形は後半に猛烈な巻き返しを見せ、チョウ監督の予想通りに後半は進んだ。

「ウタカを狙ってロングボールを入れてくるスカウティングもあったので、そこは前線の選手に規制をかけることなどを意識してプレイしていた」(CB山崎)

 山形は前線からプレッシャーを掛けることを徹底し、ボールの出所を消した。ハーフタイムでの佐藤監督代行の発破で選手はポジティブに動けるようになった。サッカーはメンタルのスポーツといわれるが、まさにその通りの展開となった。

「チームは3連戦最後の試合で1点のリードを守りきって勝ちたい気持ちのせいか、後ろに重たく、奪った後のボールをすぐに相手に渡してしまうプレイが多くなり、なかなかリズムが掴めなかった」

 途中出場した京都のDF黒木はピッチ上で苦しい展開を実感していたようだ。前半とはガラッと変わって、山形がボールを保持し京都が『靴一足ぶん』の水際の守備を見せる。無観客が本当にもったいないと思えるほど緊迫した展開になった。

 難しい展開が続いたがチョウ監督は「後半40分の手前ぐらいまでは2点目を取りにいく形をどうすればいいかを、相手に押し込まれながらも考えていた」という。

最後の最後に「やっぱり2-0よりも1‐0でクローズしたほうがいい」と決断し、DFの森脇と本多を投入。この起用が選手にもしっかりと届き、虎の子の1点を守り切ることに成功。勝ち点3を手に入れた。

 これで京都は順位は3位のまま変わりないが、今節を共に引き分けた新潟と琉球に勝ち点で肉迫することになった。新潟とは勝ち点差4、琉球とは勝ち点1にまで接近している。いよいよJ2の主役に京都が名乗りを上げた形だ。これで4月以降7勝1分。少し気が早いようだが京都人は実りの秋がくるのではないかとワクワクが止まらない。


文/吉村 憲文

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