川崎フロンターレは22日、明治安田生命J1リーグ第15節で横浜FCと対戦し、3-1の勝利を収めた。この結果、J1無敗記録を「23」まで伸ばすとともに、今季開幕戦からの無敗記録も「18」(15勝3分)に。2位の名古屋グランパスは徳島ヴォルティスとスコアレスドローだったため、その勝ち点差が「12」まで広がり、王者・川崎が今季も首位を独走している。
そんな試合で存在感を放ったのが、ここまでリーグ戦全試合に出場し、この一戦でもインサイドハーフに入ったU-24日本代表MF田中碧だ。先制点(家長昭博のゴール)に繋がった三笘薫のPK奪取のシーンでは、田中を中心としたパス回しで相手を揺さぶり、同選手の攻撃のスイッチを一気に入れる鋭い縦パスが起点となった。そして2点目のゴールシーンでは、レアンドロ・ダミアンらボールチェイスによる相手のミスから、ペナルティアーク付近でボールを拾うと、華麗なターンで前を向いてパスをするような左足のシュートで自らネットを揺らし、今季初ゴールを記録している。
さらに3点目のシーン(三笘のゴール)でも、再び攻撃の起点に。ゴールをアシストした山根視来とのワンツーパスの際、ボールを受けた田中はラインを割らないようにバックスピンをかけた浮き球のパスをダイレクトで相手の背後に通し、相手の守備陣を一気に破った。田中はこの試合で全得点に絡む活躍を見せたのだ。しかし、試合後のインタビューで、そんな田中に笑顔は一切なかった。むしろ、表情を緩めることなく淡々と質問に答える姿には、もっとやれた、もっとやらなければならなかったという思いや自身のプレイに対する悔しさが滲み出ていた。
ーー今季初ゴールについて
「(得点につながった)あのターンに関しては、相手を見れたっていうのと……。この前の練習で一回それをやって失敗していて、そのときの絵が一瞬浮かんできました。その瞬間、これならいけるなと思ったので選択しました。それがうまくできたので、よかったかなと思います。あとは、うまく流し込められればいいかなという感じで、相手をしっかり見れたのでそこが良かったかなと思います」
「今シーズンはなかなか取れていなかったですし、昨シーズンから見ると、点を取れるのが自分の武器でもありました。そういう意味では、今シーズンもこうやってたくさん出させてもらっている中で、点を取れていないというのは自分の中で焦りというか、結果を出せていないというのを少なからず感じていました。チャンスがないわけではないですし、毎試合毎試合チャンスはあるんで、そういうものをしっかり決め切る力が必要なのかなと思います。今回に関してはしっかりと決め切れたので、すごく良かったなと思います。ただ、もっともっとこだわっていかないといけない部分がたくさんあるので、ゴールだけじゃなくて他の部分でも、より一段、二段上げていかないとダメなのかなと思います」
ーー3点目の起点となった浮き球のパスについて
「バックスピンの回転はそこまで計算していませんでしたが、敵の頭上を越えるには、あれぐらいの強さがちょうどいいのかなと思いました。高さとスピードとコースは、自分が思っていた通りに出せたと思います。あとは、しっかりとゴールにつながったので、自分のイメージしたタイミングでイメージしたボールを蹴れたので、すごくよかったかなと思います」
ーーこの試合での自身の評価は?
「そうですね……。個人としては正直、点を取ったことも勝ったこともどうでもいいというか……。それ以上に自分の後半のプレイの質の低さに対して、自分は『ガッカリしている』。やっぱり後半の自分のプレイの選択もそうですし、その質やミスの数も含めて、すごくもったいなかったなととても感じています。自分でもそこはわかっていますし、そこをしっかり修正できれば、今日のゲームも『すごく良かった』とは言えると思うんですけど。後半の質というのをもっともっと上げていかないといけないのかなと思います」
ーー後半に質が落ちてしまった要因はなんだと感じているか
「まずはシンプルに技術ミス。基本的には技術ミスが多かったのかなという感覚があります。その質というのは、自分自身はそこで勝負している部分もあります。そこでやっぱり、他の選手や相手と同じレベルでやっているようじゃ自分はダメだと思うし、正直自分に対してガッカリしている部分があります。ただ、先ほども言いましたけど、自分でもわかっています。自分が一番わかっているので、しっかりと修正するべきところは修正しなくちゃいけないと思います。これも自分自身の実力ですし、そこはしっかりとまた向き合いながらやらなきゃいけないなと改めて感じました
ーーU-24日本代表に選ばれましたが、その思いは?
「前回の合宿もそうですし、これまでA代表でやっている選手たちと一緒にできるという意味では、すごい光栄なことです。オーバーエイジの選手も含めて、レベルの高い選手とできるので。自分はまだまだそういうレベルの選手じゃないとわかっていますし、だからこそ普段A代表でプレイしている選手たちからいろいろなものを吸収して、自分の成長に繋げられればいいかなと思います。個人としてもアピールというか、自分のやるべきことをやることが一番大事だと思っていますし、しっかりと勝てるように自分は100パーセントを出せればいいのかなと思っています」
どんな試合でも決して満足せず、常に上を目指す田中。“川崎のダイナモ”が急成長し続ける理由は、自身を冷静に客観視したり、分析したりできる点に加えて、その成長や向上に対するハングリー精神にあるだろう。今後の更なる成長と活躍にも期待だ。