ホームの首位京都は4、5月無敗、対するアウェイの5位甲府は5月無敗と、共に好調を維持している。J1昇格を考えると、この試合での勝ち点3はライバルにダメージを与えるといことにもなる。勝ち点3獲得が至上命題。ただこのミッションをどちらも遂行できず、90分の戦いを終える笛は吹かれた。
「相手のブロックをこじ開けるために最後の個の力だったり、更にサイドをえぐってもうひとりという形で、何回か良い形で突破したが、CKを含めて最後に仕留められなかった。ただそのプロセスについては、甲府に対してというよりも、自分たちが今年大事にしていることを選手たちはトライしようとしてくれた。FWウタカのシュートとか、そのこぼれ球を入れられれば良かったが、ホームで引き分けたのは久しぶり。次にまたホームにお客さんが来てくれた時に勝点3が取れるような、そういった超回復の勝点1だと思っている」(チョウ・キジェ監督)
一方の甲府の伊藤監督は「最低限勝ち点3を持って帰るミッションは失敗だった。(勝ち点で)離されなかったことについてはポジティブに捉えたい。ゲームとしては相手のプレッシャーをどれだけ外せるかだった。SBの裏へのスペースをどれだけ取れるかにフォーカスした。京都のプレスバックの速さ、ゴール前で身体を張るところで我々の攻撃は一歩足りなかった。後半は選手を代えながら最後何回か右からのクロスでチャンスがあった。選手は90分間集中力を保って戦ってくれた」
明確な順位の差があることが反映されているのか、両者の反応は対照的だった。
試合展開は京都のプレスが90分を通じて発揮され、甲府を押し込む展開になった。しかし甲府にはこれをしっかりした守備で回避するという明確な意思が感じられた。どちらかが一方的に押し込み、それを貝のように守って一発のカウンターに賭けるというような展開ではなかった。上位対決だけに、緊迫した展開が90分継続された。
「序盤から相手がペースを握ろうとしてきたところを、こちらも強度を上げた。バトルの部分でも負けなかったので、こちらの流れに持っていくことができた。ただ2次攻撃、3次攻撃に繋げることがあまりできなかった」(MF松田)
京都からすれば波状攻撃に持っていきたかったが、それができなかった。
「(プレッシャーの回避は)正直30~40%くらい。半分に満たない。京都のプレッシャーは速かったがそれを外す力はあったと思う」
伊藤監督の採点は辛めだが、それでも京都が手を焼くだけのプレイは充分にできていたということだろう。
試合展開は京都が外から崩そうとするが甲府がそれを許さず、甲府がカウンターに持ち込もうとする。京都が数回あわやのシーンを作ったものの、それを決め切れず。
「サイドで崩し、そこからスピードアップしていこうと思っていた。その回数をもう少し増やしたかった。ゴール前に人数をかけて入るプレイや最後の質が必要だ」(松田)
甲府は試合終盤にGKを起点にした縦へのボールに最後は途中投入されたFW三平が抜け出しシュート。
「MF中村から良いパスが入って、トラップが長くなって『いけるかなぁ』と思ってループシュートを狙ったがGKに止められた」(三平)
甲府にとっては待ち望んだ千載一遇のチャンスだっが、これはGK若原のプレイを誉めるべきだろう。
「毎試合何回かピンチは来るだろうと思っているので、それに対していい準備ができていると感じている」(若原)
DFリーダーのバイスは若き守護神を「ここ数試合素晴らしいパフォーマンスを見せてくれている。今日の彼はボールを触る回数が少なく、GKにとって難しい展開だったが、終盤の危ないシーンでしっかり反応してくれた。それは彼がとても集中していて、良い準備ができていたからできたと思う」とべた誉めした。
スコアレスの結果となったが、試合後スタジアム全体から拍手が降り注いだ。緊急事態宣言下で上限5000人のキャパに4700人ものサポーターが来場(アウェイサポーターの来場なし)。これほど一体感のある京都のホームゲームは久しく見たことがない。結果だけでなく、サッカースタイルが明確になり、それがサポーターの支持と共感を得ているのが分かる。
最後にどうしても書き添えておかなくてはならないことがある。それはピッチ上に楕円のトラックのような形で芝が焼けた部分があったことだ。これは25日と26日におこなわれた聖火リレーで、走者を撮影した中継車が何度もピッチ上を周回したことによるものだ。
選手によるとまったくプレイには支障がなかったというが、一歩間違えばピッチに凹凸が生まれていた可能性もある。京都府下には西京極など陸上トラックのある競技場が他にもある。なぜわざわざトラックのない球技専用スタジアムの芝生の上を車が何度もグルグル走らなくてはならなかったのか? プレイヤーズファーストとはいい難い行為に憤りしかない。これは筆者だけの意見でなく、この試合を見たすべての人に共通する思いではないだろうか。関係者に猛省をうながしたい。
文/吉村 憲文