メッシと好連係の若手ウインガー出現も…… ドロー発進のアルゼンチンが抱える守備の不安

コパ・アメリカの初戦で、左ウイングFWとして起用されたN・ゴンサレス photo/Getty Images 

神出鬼没なポジショニングが光る

コパ・アメリカ2021のグループステージ第1節が15日(日本時間)に行われ、グループAのアルゼンチン代表がチリ代表と1-1で引き分けた。

前半33分にアルゼンチン代表FWリオネル・メッシが直接フリーキックからゴールを挙げるも、後半7分すぎに同代表DFニコラス・タグリアフィコが自陣ペナルティエリア内で相手MFアルトゥーロ・ビダルを蹴りつけてしまい、チリ代表にPKのチャンス到来。GKエミリアーノ・マルティネスがビダルのPKをセーブしたものの、こぼれ球をFWエドゥアルド・バルガスに押し込まれ、アルゼンチン代表は今大会ドロー発進となった。

この試合におけるアルゼンチン代表の収穫をひとつ挙げるならば、23歳のFWニコラス・ゴンサレス(シュツットガルト)が、神出鬼没なポジショニングで自軍の攻撃を活性化させていたこと。[4-3-3]という布陣の左ウイングFWとして先発出場したゴンサレスは、サイドに張り付くだけでなく、ハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)に適宜ポジションをとり、相手守備陣を引き付ける役割を担当。サイドバックが攻め上がるためのスペースを作ったほか、前半15分すぎにはハーフスペースから自らGK強襲のミドルシュートを放つなど、ゴールへの気概を見せた。

また、前半24分すぎにメッシからのロングパスをタイミング良く受けて相手DFイスラのファウルを誘ったほか、後半34分すぎには敵陣ペナルティエリア中央へ侵入し、メッシからのクロスに反応して惜しいヘディングシュートを放つなど、アルゼンチン代表のエースと好連係を披露。決定機を物にできなかったことは悔やまれるが、このホットラインは次戦以降もアルゼンチン代表にとって武器となるだろう。

直接フリーキックでの先制ゴールで、チームを勢いづけたメッシ。今大会でも、アルゼンチン代表の攻撃の中心となりそうだ photo/Getty Images 

早急に構築すべき、“メッシ抜き”の守備

攻撃がある程度機能していた一方で、アルゼンチン代表の守備には綻びが生じていた。メッシとゴンサレスの両ウイングFW、及びセンターFWのラウタロ・マルティネスを起点にハイプレスやミドルプレスを仕掛けようという意図は窺えたものの、特に前半はメッシがボールホルダーにそれほど激しく寄せず、プレスバックの回数も少なかったため、同選手のサイドを起点にチリ代表のパスワークが始まってしまう場面が何度か見受けられた。

守備時にメッシをどこに立たせ、どれほど守備のタスクを課すのか。これは彼が所属するバルセロナやアルゼンチン代表の歴代監督が苦心してきた難題である。メッシに守備面でのハードワークを求めれば、守備で疲弊した彼が攻撃面で力を発揮できなくなる可能性も出てくる。ひとたびボールを受ければ、他の選手以上の輝きを放つメッシがいるチームでは、彼抜きの守備を構築するのが得策と言えるだろう。

この試合を見る限り、守備時にメッシを右サイドに置いていた前半よりも、途中出場のアンヘル・ディ・マリアが右サイドハーフに入り、メッシとラウタロ・マルティネスを2トップに置く[4-4-2]の布陣に切り替えた後半22分以降のほうが、チーム全体の守備が安定。メッシ自身の守備面の負担も軽減されていたように見える。アルゼンチン代表のリオネル・スカローニ監督が、今大会を通じてメッシ抜きの守備を構築できるか。これが同代表の浮沈のカギを握りそうだ。

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