[MIXゾーン]「強い京都が帰ってきた」 首位堅持に見えたチームの次なるフェーズ
勢いのある岡山に対しても、京都は自分たちの狙いを遂行できた(写真はイメージ) photo/Getty Images
岡山に2発快勝
キックオフ30分前、電車から一気にサポーターがホームに降り立った。少しだけ不安を感じながら改札を出ると、『京都府大規模接種会場』の案内が目に入る。そうかサンガスタジアムはワクチン接種の会場にもなっているのだ。既にこの日の接種は終了していたが、医療従事者の皆さんの努力に改めて感謝するばかりだ。同時に一日も早く、普通に皆がスタジアムに集える日がくることを願わずにはいられない。
さて試合だが、ここまで14戦負けなしの首位京都は勿論、2連勝中の岡山も立ち上がりから非常に高いインテンシティを見せた。
「選手たちは臆することなく向かってくれたし、最後の最後までゴールをこじ開けるトライをしてくれた」(有馬監督)
特に前半の岡山は京都を相手に一歩も引かないプレイを見せた。球際で体をはっての守備も機能していた。ただその戦いぶりを冷静に相手ベンチから見ていたのが京都のチョウ監督だ。
「岡山がいつもよりハイペースでチェイシングをしてきたことは分かっていたので、『いつもと違う流れの中で後半はこっちに有利に働く展開になるかな』と前半を見ていて思っていた」
岡山がややオーバーペースで試合に入ってきたと分析していたのだろう。逆に前半は膠着状態で折り返しても仕方がないという割り切りもあっただろう。ところが38分に思わぬ形で試合は動く。
岡山のCB濱田は「首位のチーム相手に比較的良い入りができたと思ったが、先制点が試合を難しくしてしまった」と振り返ったが、京都ゴール前のクリアボールを、岡山が一旦自陣に返そうとしたが、これをCB安部とGK梅田がどちらが処理するでも、譲り合うでもないような中途半端な対応。プレッシャーを掛けていたFWウタカが奪い、ほぼ無人のゴールにロングシュートを蹴り込んだ。
「小さなミスが勝敗を分けていくのがこの世界」(有馬監督)
まさに勝負の鉄則。拮抗した戦いであればあるほど、細かいミスが明暗を分ける。
後半に入ると岡山の足が落ち始め、京都の選手はギャップに入ってはショートパスを繋ぐようになる。それがゴールに結実したのが55分のボランチ川崎のゴールだった。センターサークル付近で相手のボールをカットした川崎が一気に前線へと駆け上がる。ウタカに預け、エリア内でウタカからのヒールによるリターンを貰って右足のシュート。見事に決まった。
「監督からハーフタイムに『ボールを持ったらパスだけでなく、ドリブルでもどんどん仕掛けていくように』といわれた。 実際にゴールシーンでは相手を一枚はがしてからのワンツー。パス&ゴーも前節の金沢戦からチームで意識してやっていたことなので、得点に結びついて良かった。 ペナルティエリアに侵入した時、他の選手も走ってくれたおかげで自分がフリーになれたし、普段の練習ではトモヤくん(GK若原)がシュート練習に付き合ってくれたことが今日のゴールに結びついたと思うので、皆に感謝したい」(川崎)
来月20歳になる若手だが、今季は全試合出場を続けている。171cmと決して大ききはないが、京都の2枚のCBの間に落ちてビルドアップの起点となったり、実際にゴールを決めたりと、ボックス・トゥ・ボックスのプレイができるようになっている。若い選手は試合に出ることで爆発的に伸びるというが、今の川崎はまさにその状態だろう。
試合は残り15分で岡山がやや盛り返した時間帯もあったが、このまま2‐0でホーム京都が押し切り、連続無敗記録を15にまで伸ばし、同時に首位の座もキープした。
「前半の立ち上がりは少し押されたが、それ以降はボールを出し入れしながら相手のイヤなところを突いていくという攻撃がジャブのように効いた。後半は相手の足が少し止まったような状態に持っていけたのは、彼ら(チーム)がセカンドフェーズ、次の段階に入ってきたなということを実感した」
チョウ監督のコメントに今の京都の充実ぶりが窺える。
取材からの帰り際、サポーターの話し声が聞こえてきた。
「強い京都が帰ってきた」
まさにチームもサポーターも、その想いを強くした一戦だった。
文/吉村 憲文