[粕谷秀樹]ファイナンシャル・パワーでヴィラにも敗れる!! アーセナルの体制は新シーズン開幕までに整うのか

粕谷秀樹のメッタ斬り 062

アーセナルは今夏、ブエンディアの争奪戦に敗れてしまった photo/Getty Images

ブエンディアを獲得できなかった

アーセナルの将来を、筆者はさほど心配していない。

ガブリエウ・マガリャンイス、キーラン・ティアニー、ブカヨ・サカ、カブリエウ・マルティネッリ、エミール・スミス・ロウなど、スター候補性を数多く擁しているからだ。なかでもEURO2020を経験したサカとティアニーは、新シーズンのブレイク候補と期待している。

しかし、補強が進んでいない。ノリッジのエミリアーノ・ブエンディア獲得に動いたものの、ファイナンシャル・パワーでアストン・ヴィラに敗れるとは衝撃的だった。アーセナルの提示額は3000万ポンド(約45億円)。ヴィラはインセンティブを含めて4000万ポンド(約60億円)。数年前までなら考えられなかったエピソードである。

また、移籍市場は憶測が飛び交うとはいえ、毎日のようにファーストターゲットが変わる報道が、サポーターの不安を煽っている。きのうはブライトンのイヴ・ビスマ、きょうはウォルバーハンプトンのルベン・ネべス、一週間後はシェフィールド・ユナイテッドのサンデル・ベルゲ……。どうもハッキリしない。

「マンチェスター・ユナイテッドとジェイドン・サンチョ(ドルトムント)は合意間近」とか、「マンチェスター・シティがトッテナムのハリー・ケインを獲得するために1億ポンド(約150億円)を提示した」とか、戦力増強の噂に頬を緩める他クラブのサポーターがうらやましい。

EURO2020での経験を経て、来季はさらなる飛躍が期待されるティアニー photo/Getty Images

大型投資を図る確率も極めて低い

さて、最も気になるのが守備陣である。

GKベルント・レノが退団をほのめかしたという。控えのマシュー・ライアンはブライトンに一旦ローンバックし、ルーナル・ルナルソンはプレミアリーグのレベルに達していない。現時点で使える選手がおらず、ミケル・アルテタ監督のお気に入りとされるアンドレ・オナナ(アヤックス)は禁止薬物使用に対するペナルティのため、仮に交渉が成立したとしても11月初旬まで起用できない。

DF陣の惨状も目を覆いたくなるほどだ。ダビド・ルイスが退団し、セアド・コラシナツとウィリアム・サリバ、パブロ・マリ、コンスタンティノス・マヴロパノスは構想外。エクトル・ベジェリンはイタリア、もしくはスペインに新天地を求める公算が大きく、来年6月末日に契約満了を迎えるカラム・チェンバーズとは交渉のテーブルにもつけていない。

つまり、現時点でアルテタの基本構想に含まれている守備者は、G・マガリャンイスとティアニー、ロブ・ホールディングの3人だけだ。新シーズンが開幕する8月14日までに陣容が整うとは考えにくい。

さらにグラニト・ジャカがASローマへの移籍を志願したと伝えられ、ウィリアンもインテル・マイアミ(アメリカ)と接触を図ったようだ。コロナ禍の経済的ダメージを踏まえると、オーナーのスタン・クロエンケが大型投資を図る確率も極めて低い。

20-21シーズンの8位を上まわるためには積極的に補強すべきだが、アーセナルからは明確なプランが見えてこない。非常に厳しい状況だ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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