ヴェントゥーラ前監督が犯した過ち EURO2020で躍進するイタリア代表の“復活のキーマン”
イタリア代表を牽引するジョルジーニョ photo/Getty Images
ブラジル代表を選択する可能性もあったが
白熱した試合が続いたEURO2020も、ついにクライマックスを迎える。決勝へコマを進めたのは、イングランド代表とイタリア代表だ。決勝戦がウェンブリースタジアムで行われることに加えて、近年の成績や代表メンバーたちの所属クラブでの活躍から見ても、イングランドは開幕以前から優勝候補のひとつであり、決勝の舞台に立ったことは何ら不思議なことではない。ただ、ロベルト・マンチーニ監督が就任して以降、好調が続いていたとはいえ、3年半前に屈辱を味わったばかりのイタリアが、この舞台に立つことを予想した人はもしかしたら少ないのではないか。
では、なぜロシアW杯の予選敗退を味わったジャンピエロ・ヴェントゥーラ体制からわずか3年半で、イタリアはここまでの復活を遂げることができたのか。屈辱を味わった当時の若手や中堅がその苦い経験をもとにしっかり成長したこと、才能のある若手たちが頭角を現してきたこと、他国よりもはるかに多い30名以上もの選手を常時招集することによってマンチーニ監督がチームの底上げを図ってきたことなど、さまざまな要因があるだろう。ただ、最も大きな要因となっているのは、現チームの心臓として活躍しているMFジョルジーニョ(チェルシー)の存在かもしれない。
マウリツィオ・サッリ監督のもとで着実に力をつけ、2014年から2018年まで過ごしたナポリでセリエAを代表するMFへと成長したジョルジーニョ。2016年3月にアントニオ・コンテ監督のもとで代表デビューを飾ったが、まだまだ代表経験が浅いこともあってか、直後のEURO2016ではメンバー入りを果たすことはできなかった。ただ、クラブでの圧倒的な活躍に加えて、当時のイタリア代表が高齢化していたこともあり、同大会が終わって以降の代表での活躍に期待していたファンも少なくないだろう。
しかし、EURO2016終了後からチームを率いることとなったヴェントゥーラ監督のもとでは、なかなかお呼びがかからず。ようやく招集されたのは、窮地に追い込まれたスウェーデン代表とのW杯予選・プレイオフだった。その間にチッチ監督が熱望していたこともあり、ジョルジーニョはイタリア代表ではなく、もう一つの国籍を持つブラジル代表を選択するのではないかとの噂まで浮上したほどだ(イタリア代表での出場が親善試合のみだったため)。
イタリア・ファンからすれば、当時のジョルジーニョが最終的にイタリア代表を選択してくれて「助かった」というのが本音かもしれない。W杯予選敗退が決まり、ヴェントゥーラ監督が解任されると、後を引き継ぐこととなったマンチーニ監督のもとでは、ジョルジーニョは必要不可欠な存在に。ポゼッションを重視する攻撃的なスタイルを目指すチームを、中盤の底から支えている。そして、EURO2020予選では全10試合のうち9試合に出場(3ゴール1アシスト)。本大会でもここまで全試合に出場しており、チームを決勝の舞台へ導いてみせた。マンチーニ体制において、チームにリズムをもたらす同選手の存在がいかに重要であるかが見て取れる。もしジョルジーニョがあのときブラジル代表を選択していたら、イタリアのEURO2020での躍進、ここまで早い復権はなかったかもしれない。
『Italian Football TV』はかつて「私のチームのプレイスタイルに、ジョルジーニョが入る余地はない」と述べていたヴェントゥーラ前監督のコメントを引用して同指揮官を皮肉りつつ、「あなたへの疑いが間違っていたことを証明する方法。ジョルジーニョは今、チャンピオンズリーグのタイトルを獲得し、PKを決めてイタリアをEURO2020の決勝へ導いた」とジョルジーニョへ賛辞を贈っている。イングランドとの決勝戦でもジョルジーニョの活躍に目が離せそうにない。