[名良橋晃]五輪開幕迫る 相手をリスペクトし過ぎずテッペンを目指してほしい

名良橋晃のサッカー定点観測 #85

名良橋晃のサッカー定点観測 #85

東京五輪に臨むU-24代表には、テッペンに立ってほしい photo/Getty Images

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強度の高いプレイが良い結果に繋がる

 東京五輪の開幕が迫ってきました。森保一監督が率いるU-24日本代表は、グループステージで南アフリカ、メキシコ、フランスと対戦します。どの大会もそうですが、初戦がとても大切です。2000年シドニー五輪、2012年ロンドン五輪では決勝トーナメント進出を果たしましたが、いずれも初戦に勝利しています。

 過密日程、短期決戦で行われるので、選手全員のコンディションをいかに良い状態に保つかが重要です。うまくローテーションして戦っていくためにも、初戦となる南アフリカ戦(22日)からしっかり勝点を積み重ねたいところですね。そういった意味では、選手登録が22名になったのは日本だけではなく各国にとってプラスです。

 ただ、国外でプレイする選手、Jリーグでプレイする選手ではコンディションが違います。ACLに出場していた選手もいるし、負傷明けの選手もいます。各選手の状態にバラつきがあるなか、初戦をいかにチームとして良い状態で迎えられるかが課題です。
 私は選手たちがストレスを抱えずに戦えることを願っています。コロナ禍でいろいろな意見があり、心の片隅に引っかかる言葉が耳に入っているかもしれません。自国開催で国民の方々の期待も大きいです。他チームがメンバー選考に苦しむなか、日本は所属クラブとの事前協議がうまくいき、ベストメンバーを選出できています。結果として、メディアを含めて国内全体にメダルを獲得できて当たり前という雰囲気があります。これがプレッシャーにならないように、日本サッカー協会には選手たちが力を発揮できる雰囲気を全力で作り上げてほしいです。

 また、過剰に対戦相手をリスペクトする必要はないです。グループステージで対戦する3カ国は選手選考で苦労しました。もちろん簡単に勝てる相手ではないですが、決して勝てない相手でもないです。よく指摘される身体能力の差に関しても、日本には国外でプレイする選手が多いので、もう十分に理解できていると思います。変に相手を意識するのではなく、自分たちの力を出し切ることが大事です。

 森保一監督は90分間に渡って高いプレイ強度を保つことを求めてきました。6月のA代表との対戦でこのあたりの課題が露呈したことで、各選手が共通理解を持ってその後は戦えています。対戦相手のことはそんなに意識せず、自分たちのサッカーをどれだけ貫けるかがポイントで、日本の良いところを発揮できればできるほど、良い結果に繋がると思います。本番まで日数は迫っていますが、22名の力をひとつにして誰がピッチに立っても変わらないぐらいの共通理解で臨んでほしいです。

長男と同級生の三笘には、大きく成長してほしい photo/Getty Images

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悔いを残すことなく思い切ってプレイしてほしい

 吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航。オーバーエイジで選出された3名の豊富な経験は、短期決戦を勝ち上がっていくうえで間違いなくプラスです。とくに、吉田麻也は3度目の五輪で、雰囲気、環境などを誰よりも知っています。考えれば考えるほど、効果的な人選だと感じます。

 メンバー編成をみると、対戦相手によってやりくりできる顔ぶれが揃っています。左サイドバックであれば、状況に応じて中山雄太、旗手怜央を使い分けることができます。その前方、左サイドのワイドなポジションには、三笘薫、相馬勇紀がいます。前線にしても、オールラウンダーである上田綺世に、スペースへの飛び出しに特長がある前田大然。そして、ゴールへの執念がある林大地とさまざまな状況に対応できる面子になっています。

 自国開催の五輪でプレイする。これは、おそらく人生において二度はないことでしょう。だからこそ、全員に悔いを残すことなく思い切ってプレイしてほしい! いろいろ言いたいことはありますが、これが私の一番の気持ちです。

 そして、無事に大会が終わることを願っています。コロナ禍で開催されたEURO(欧州選手権)、コパ・アメリカ(南米選手権)は終了しましたが、大会中にサポーターなどの陽性が確認されました。五輪では多くの会場が無観客となりますが、それでも不安を抱いている国民もいます。そうしたなか、現場の活動をサポートしてくださる方々には感謝しかないです。

 ここからは個人的なことになりますが、私の長男とともにジュニア(FCパーシモン)、ジュニアユース(フロンターレU-15)、ユース(フロンターレU-18)でプレイしたチームメイトのなかから、数名が今回の五輪に出場します。板倉滉、三好康児は一学年上で、長男が大変お世話になりました。三笘薫は同級生、田中碧は一つ下で、当時は「カオル」「アオくん」と呼んでいましたが、もうそんな呼び方はできません。

 もうひとり、なでしこジャパンの三浦成美とはFCパーシモンで一緒でした。女子ひとりという状況でしたが、真面目にプレイを続けて中学入学時に日テレ・メニーナのセレクションに合格し、どんどんステップアップしていきました。三笘薫と三浦成美は親同志仲が良く、幼少期からの友人だそうです。こうした選手たちと長男がプレイしていたので、昔が思い出されます。もう親目線で、どの選手にもとにかく頑張ってほしいです。

 コロナ禍で開催される五輪はどんな展開が待ち受けているかわからず、先を読むのが難しいです。プレッシャーをかけるつもりはないですが、やはりテッペンに立つことを期待しています。それぞれの選手に、大きく成長してほしいです。

構成/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD259号、7月15日配信の記事より転載

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