[MIXゾーン]J2といえどもこれだけできる、を示した試合 持ち味存分に出した京都と新潟

両者譲らぬ好ゲームは見応えたっぷりだった(画像はイメージ) photo/Getty Images

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ともにインテンシティ高い好ゲームに

 五輪中断前の大一番。リーグ2位と3位の戦いは「スペクタクルで中断前の最後にふさわしいクオリティの高いゲームになった」というチョウ監督の言葉に違わぬ、非常に激しい熱戦だった。

「試合の最初からインテンシティが高かったですし、やっていてすごく楽しい試合ができた」(MF松田)

 ともに4枚ずつの警告を受けたが、選手の認識としては激しさの裏返しだったということだろう。
 試合はホームの京都からすれば「前半はパーフェクトで、チーム全体が本当に高いパフォーマンスを見せていたと思う。そこで先制し、良い状態で試合を折り返すことができた」(左SB荻原)。

 逆にアウェイの新潟にとっては厳しいものになった。

「相手もスカウティングして、研究して対策してきたと思う」(GK小島)

 京都が前線からの激しいプレスで新潟のポゼッションを分断。34分の先制点も新潟の最終ラインからのビルドアップに圧力を掛け、苦し紛れの前線へのボールをカット。ここを起点に中央のFWウタカのワンタッチから、左サイドを駆け上がった荻原に。持ち込んで左足を一閃すると、ボールは逆サイドネットを豪快に揺すった。

「京都が前線からのハイプレスをうまくハメてきて、それに苦しんだ。更にピッチコンディションも我々のプレイにポジティブに働かなかった。期待どおりのプレイができない前半だった」(アルベルト監督)

 ただ京都ペースの一方的な展開は後半の飲水タイムあたりから一変する。

「京都の選手のプレッシャー強度が落ちたこともあると思うが、ポジションをもう1度整理して、相手から離れたポジションで受けることで、相手もプレッシャーの距離が伸びたと思う。フリーな選手が多くできたり、相手をはがせたりできていた」(MF高木)

 特に60分にMF本間が投入されるとハッキリとしたアクセントになり、相手ゴール前での突破の回数が増える。

 試合の流れが新潟に傾く中で、京都はしっかりと守備の組織を整えて対抗したが、僅かな綻びを見せる。75分、本間が左サイドをドリブルで突破し、京都守備陣の視線を釘付けにする。そのことで右サイドで高木がフリーの状態でパスを受ける。高木が思い切って右足を振り切ると、シュートはGK若原の手を弾いてゴールに転がり込む。これでゲームは振り出しに戻った。ただシュート自体はさして難しい弾道ではなく、若原の技量なら充分に処理できて当然のものだった。なによりゴールを許した後の若原の悔やんでも悔やみきれないという表情が、それを物語る。

「サッカーの得点は基本的にカウンターかミスかセットプレイから生まれることがほとんど。それ以外からの得点は3割程度。今日はそういうのが3つぐらい重なる形で失点したが、長いシーズンでそういう失点をゼロにするのは不可能。ここから何を学ぶかが選手にとって大事なことだと思う」(チョウ監督)

 ミスのスポーツといわれるサッカー。これを次に活かせるかどうかが、選手として、チームの能力ともいえる。

 90分の戦いの間、両者の高いインテンシティは衰えず、1-1の引き分けという結果に終わった。同時にともに持ち味を存分に出したことで、J2といえどもこれだけの試合ができるのだということを見せてくれた試合だった。

 これで京都は磐田を得失点差で抜いて首位で中断期間に。新潟も勝ち点3差の3位。まだまだ昇格の行方は見えてこない。

文/吉村 憲文

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