現在3連勝と調子を上げ、降格圏を抜けだしたG大阪。それを凌駕する6連勝でアウェイに乗り込んだ横浜FM。ただともに不安要素もある。G大阪は文字通り地獄の連戦の真っ只中。横浜FMは試合間隔が1ヶ月空いており、実戦感覚がどこまで戻っているか。加えて横浜FMはマスカット新監督が前日チーム合流、即陣頭指揮という状態だ。
しかし試合はその不安をよそにいい意味で予想外の激しい展開が繰り広げられた。
「攻撃力のある横浜FMに対して、どう守備で圧力を掛けるかというところで、引かずに前に前にというところは、非常に前半の入りは良かったのではないか」(松波監督)
G大阪は試合間隔が極端に詰まっている状況だが、この試合ではほぼぶっつけ本番で4-3-1-2の布陣を引いた。ツートップが予想された宇佐美だったが、実際は「ダイヤモンドのトップ下で普段よりは自由に動いて、その場に留まるというよりは右左、背後に動いてボールを引き出す中でチャンスをどんどん作っていく仕事だった」。
対するマスカット監督は「我々は4週間、試合から遠ざかっていた。G大阪は連戦が続いていて、3連勝という良い結果を残していた。その中で相手がどう戦ってくるのかを見ながら試合に入ったが、(G大阪は)自分たちが思っていたのとは違うシステムを採用してきた。相手のMF中央の変更に対し、慌てずに修正できたのはよくできた部分だと感じている」。
システム変更はG大阪からすれば相手にプレッシャーを掛けることに繋がり、その状況に横浜FMが冷静に対処したという構図になる。それが両者の良さを引き出したともいえる。
横浜FMはG大阪の予想外のシステムに主導権を与えてしまう時間帯もあったものの、これまで多くの試合で3バックを採用してきたG大阪が、4バックでより攻撃的な姿勢を見せたことで、逆にラインの裏のスペースを突けると考えていただろう。実際にそれは得点として結実する。
32分、横浜FMは中央から右サイドに展開し、G大阪の左SB黒川が対応にいくが、これをワンタッチで剥がして、リターンを受けた右SB小池が中央のクサビ役のFWレオ・セアラに。しっかりキープし、2列目から走り込んだFWエウベルに。右足を一閃するとファーポストに当たってゴールとなる。絵に描いたようなゴールシーンだった。ここまでチャンスを多く作り出していたG大阪からすれば、決めるところを決めておかないと、こういうことになるということでもある。その後もG大阪はチャンスメイクまではできるが、決め手に欠ける。
横浜FMは後半立ち上がりの48分に、小池が前線でグラウンダーのクロスを入れ、これを一旦CB昌子がクリアするが、MFマルコス・ジュニオールがCB菅沼の死角を突くような立ち位置からボールを奪い、そのままシュート。ゴールネットを揺すった。決めるところをしっかり決め切る力の違いが顕著に出たシーンだった。
その後、G大阪もPKで1点を返すが、横浜は74分にCKからの流れで途中出場のMF水沼がゴールを決める。結果的にはこれが決勝点に繋がった。
「(直前の)CKはFW(杉本)健勇が入ってきてポストに当たり、こぼれを狙っていたが、ボールがサイドに流れてしまった。『どうしようか』と思ったが、あそこにいれば、MF(天野)純からボールがきそうな感じがしていた。純が蹴ってくれたので、あとは当てるだけだった」(水沼)
G大阪はアディショナルタイムにFWパトリックのゴールで追いすがったが、決定力の差は勝敗に直結。連勝は3でストップ。それでも「2トップにすることで攻撃のバリエーションが増えるし、今まで1トップ2シャドーでやってきた中で、後ろを4枚にしてというのは考えてはいた。相手によってとか自分たちのコンディションだったり選手選考のところで、そういうのも含めていろんな形のシステムを試せればなと思う」と松波監督は手応えを感じていたようだ。
横浜FMは連勝を7に伸ばし、五輪中断明けを順調に滑り出すことになった。
「簡単な試合ではなかった。時間帯では自分たちがコントロールできたところもあった。ただ修正しないといけない部分も見えた。自分たちも連戦が始まる。ひとりひとりがいつ出てもいい状態をキープすることだ。ピッチに立った11人だけでなく、他の選手もいい準備をしたことが結果に繋がった」(マスカット監督)
酷暑の中、今月9日からはJ1はリーグ戦を再開する。日本の夏を制するのはどのクラブだろうか?
文/吉村 憲文