J2首位の京都に対して、五輪中断前を5戦負けなしで折り返した7位町田。両者ともに久々の試合となったが、混戦模様のJ2を象徴するような戦いになった。
「勝点3を取れたことは良かったが、内容を振り返るとあまり満足できるような試合ではなかったと思う」
CB麻田が振り返ったように、京都は隙を見せてしまった。立ち上がり早々の13分にCBバイスからのロングフィードを前線のFWウタカが相手のDFと競り合いながら、そのクリアが甘くなったところを見逃さず見事なシュートを突き刺した。
ただ思惑通りの展開に持っていったのにも関わらず「前半の残り5分、10分で選手が試合に勝ったかのようなプレイをしてしまった。これは我々の課題でもあるが、少し安心したのか球際や切り替えに甘さが出て失点してしまったことは反省しなければならない」(チョウ・キジェ監督)
41分に町田の右SB奥山に、CKから甘いマークを外されてゴールを許す。奥山からすれば
「1失点目は自分が関与している形だったので、挽回したい、取り返したいという気持ちはあった」。
ウタカの先制ゴールの際、自身が競り合いながらボールをクリアできずにゴールを許してしまっただけに、名誉挽回のゴールとなった。
ただ「前半の立ち上がりは、相手の背後を突きながらチャンスを作れたと思うし、そこで仕留めきれなかった」(奥山)
チームを率いるポポヴィッチ監督は「我々としては多くのゴールを決められなかったが、決定的なチャンスをいくつか作ったし、決定機を作るまでの流れや連動性は、ここまで積み上げてきたことなので、評価できることだと思う。我々の選手はもっともっとリスペクトされても良いのかなと思う」と振り返ったが、町田が後半に入って決め手を欠き、京都に流れがあったのも事実だ。
当然ハーフタイムにチョウ監督の檄が飛んだことは想像に難くない。
「自分たちがどうなりたいかを問いかけ、自分たちに何が足りないか話をした。自分たちの力で変えられるものは全部変えていかなくてはいけない。我々の目標とすることは、やはり上のリーグに行くことだと思っている。そこに近づくためにはもう一回本気でやってくれと話をした」
京都はハーフタイムにこの夏にJ3福島から移籍加入したFWイスマイラを前線に投入。188cmのターゲットマンが入ったことで、攻め手が大きく変わった。
「相手のCBのターゲットがウタカだけになっていて、もう1枚ターゲットを増やすことで(相手の)ダブルボランチとCBの間で受けることができればもう少し分厚い攻撃ができると思った」
この狙いは的中する。投入から僅か5分、ペナルティアーク付近でウタカらから右SB飯田に。これをダイレクトでクロスを入れると、イスマイラが飛び込む。シュートはDFに当たってコースが変わり、そのままネットを揺らした。
「今日は(京都での)自分のデビュー戦。自分が持てるものをファン・サポーターの皆さんの前でしっかり出したいと思ってこの試合に臨んだ」
その言葉に初々しいを覗かせたイスマイラ。自身のゴールが決勝点になったことで、期待の大きさに対するプレッシャーから解放されただろう。その影には同胞の先輩の存在が大きいようだ。
「 良いコンビネーションでプレイできたと思う。ウタカ選手は経験が豊富で、自分がどうプレイすれば良いのかを色々アドバイスをもらいながらプレイした。 自分にとって大きな存在で、いろんな言葉をかけてもらいながら自信をつけている。 すべてにおいて自分にプラスになるよう働きかけてくれる、すばらしい先輩」と褒め讃えた。言葉が通じず、新しいクラブで孤独を感じる外国籍選手が多い中、イスマイラにとっては最高の環境が用意されている。
試合はイスマイラのゴールが決勝点となり、京都は勝ち点3を積み上げ、この日引き分けた磐田に勝ち点2の差をつけ首位の座をキープ。一方の町田は久々の黒星となったが、それでも京都相手にタフな戦いをできたことは、今後にも繋がるだろう。互いに思い通りにならない展開も多かったが、見る側も含めておもしろい試合だった。
文/吉村 憲文