[MIXゾーン]「気持ちで負けた」など言い訳だ C大阪に明らかに足りないチーム力
湘南に終始圧倒されてしまったC大阪 photo/Getty Images
湘南相手に1-5と惨敗
「攻守において湘南に上回られた。湘南はいいプレイをしたのに対し、我々のパフォーマンスは何もないゼロだった。それが全てだったと思う」
C大阪のクルピ監督は完敗であることを認めた。
湘南の先制点。C大阪のGKキム・ジンヒョンがキャッチの際にバランスを崩して、そのままボールはラインを越えたとしてゴールが認められた。
「今日の1点目はGKがファンブルした中でVARのチェックが入っての得点。なんともいえないゴールだったが、そういう部分を手繰り寄せられるか(どうか)」
湘南の浮嶋監督だけでなく、久しく白星のないチームにとって、このゴールは非常に心強いものになったことは間違いない。C大阪にすればアンラッキーであった。ただ両者の間にメンタル面の大きな優劣がここで生まれたのだろうか?
「(敗因は)戦術というよりは、気持ちの部分。1対1で負けないとか、球際で湘南の方が上回っていた。そこで負けてしまうと、こういう結果になるなと感じている」
FW豊川は気持ちに答えを求めた。確かに湘南の激しいあたりに対して、C大阪は簡単にボールを失う場面が散見された。1対1の局面ではメンタルの差は出やすい。ただ気持ちの問題であるなら、湘南の選手にできることがC大阪の選手にできない理由は何なのだろう? むしろ湘南が得意とするフィジカルをベースにした戦いに対して、C大阪はプレッシャーを受けた選手へのサポートなど、グループとしての戦い方ができていないことの方が問題ではないだろうか。
ただ冷静に振り返られるのは湘南の2点目までの話で、3点目のMF茨田のゴール以降、C大阪はほぼノーガードでいいようにボコボコにされるばかり。これほど気迫も気力も感じられないC大阪の試合を見たのはいつ以来だろう。17試合で僅か2勝というチーム状況を根本的に改善する方法が見い出せない現状だ。
「今日の試合は本当にサポーターに申し訳ないとチーム全体で思っている。試合が終わって挨拶に行った時に、ゴール裏でサポーターが自分たちを鼓舞することをやってくれたのが印象的で、このサポーターのためにも絶対に負けてはいけないと感じた」(豊川)
確かにサポーターの気持ちが選手に伝わることは大切だ。しかし選手が不振の原因を気持ちの部分に求めるようになったら、チームは末期症状でもある。選手がどれだけ気持ちを奮い立たせても、90分で今の倍の距離を走ることはできない。そうしなくても勝てる方法を首脳陣が選手に示すことが先になる。結局それが今のC大阪にはないことが一番の問題なのだ。
「選手たちの良さを引き出すことができなかった。何かがうまくいかなかった試合だった。その点に関しては、明日フロントの人たちと話をして、何かしらの方向性を出さなければいけない」
とクルピ監督は話し、辞任(あるいは解任)の可能性を示した。この記事が配信される頃にはひとつの結論が出ている可能性も高い。
一方湘南はFWウェリントンが不在で、ツートップを選択。
「前回C大阪と戦った時に、内容的にもボールを奪うというところ、カウンターの部分は非常に良い内容だった。C大阪に対してはこちらのシステムで行った方が良いということで、今回はこういう並びでやった」(浮嶋監督)
しっかり対策をした上のこと。
「確かにケチャップの蓋が外れたようなゴールラッシュだったと思う」とはいってもそれは必然だったということだ。
「チーム全体の入りが非常に良かったと思うし、後ろも良い守備の仕方、入り方ができた。そこが一番の要因だったんじゃないかと思う」(茨田)
「戦術的にもパーフェクト。相手はすごくボールポゼッションをしてくるチームで自分たちのプランがすごく当たっていたと思う。今日に関しては素晴らしい試合をできた」(FWタリク)
久々の勝利とゴールラッシュに湘南ベンチは湧きたった。ただ重要なのはこれを次節に継続できるかどうか。
「自分たちの糧に捉えて、次のゲームで同じようにゴールをたくさん奪って良い戦いをしたい」と指揮官は前を見据えた。
明暗という言葉だけでは表現しきれないあまりに対照的な試合だった。
文/吉村 憲文