[西岡明彦]ついに巨大資本が 古豪ニューカッスル大変革のとき

プレミア最強ガイド #083

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ロシアW杯にも姿を見せていたムハンマド・ビン・サルマン皇太子 photo/Getty Images

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 ニューカッスルが3億ポンドで買収され、サウジアラビア資本による改革が始まりました。14年間に渡るマイク・アシュリーによるクラブ経営は満足な成果を残せず、近年はファンからもオーナー交代を渇望する声が高まっていたのも事実。スポーツ製品販売「スポーツ・ダイレクト」を一大ブランドに成長させた旧オーナーにとって、ようやく適正価格で買収を打診してきたホワイトナイトの登場はウェルカム。イングランド北東部の古豪クラブは新時代を迎えることになりました。

 今回の買収劇、サウジアラビア資本の「パブリック・インベストメント・ファンド」が80%の株を保有しました。同社のオーナーはサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、まさに国家資金によるフットボールクラブ買収が実現したのです。さらに驚きはその個人資産額です。ビン・サルマンは推定3,200億ポンドの資産を保有していると言われ、シェイク・マンスール(マンチェスター・シティ)の230億ポンド、ロマン・アブラモビッチ(チェルシー)の100億ポンド、スタン・クロエンケ(アーセナル)の60億ポンドを遥かに上回る超大富豪。ニューカッスル以外のプレミアリーグ19クラブのオーナー合計の個人資産額でも500億ポンドですから、ビン・サルマン1人でその6倍以上の資産を保有していることになります。

 すでにライバルクラブからは、クラブの譲渡手続きやオーナーの人物調査など適正な審査を通過したかどうか確認の場を持ちたいとプレミアリーグ側に要望書が提出されたとのことです。法外なマネー戦争に発展するのを危惧するのは当然かも知れませんね。
 今回のニューカッスルと比較されるのが、近年オーナーチェンジで著しい成長を遂げたチェルシーとマンチェスター・シティです。前者はアブラモビッチ体制となった2003年7月、夏の移籍市場でジョー・コール、デイミアン・ダフ、セバスティアン・ベロン、グレン・ジョンソン、ジェレミらを補強。プレミアリーグ2位、チャンピオンズリーグ準決勝進出と成果を残しました。それでもシーズン終了後にクラウディオ・ラニエリ監督を解任しジョゼ・モウリーニョを招聘、翌年にプレミア制覇を成し遂げました。

 一方で後者は、2008年9月にUAE資本で改革を開始。すぐにレアル・マドリードからロビーニョを獲得するなど積極的な選手補強を敢行します。そして12月、マーク・ヒューズ監督を解任し、ロベルト・マンチーニが就任することになりました。

 10月15日時点でリーグ19位に低迷しているニューカッスル。スティーブ・ブルース監督の解任は時間の問題と言われていますが、気になるのは後任の指揮官です。パウロ・フォンセカ、アントニオ・コンテ、ブレンダン・ロジャーズ、フランク・ランパード、ロベルト・マルティネス、エディー・ハウなどの名前が報じられています。候補者には魅力的なオファーが届くのは間違いありませんが、1月まで選手補強は出来ませんし、シーズン途中でチームを建て直すのは簡単ではありません。迅速な成果を求められるオーナーの下、かなりのリスクを覚悟して着任することになりそうです。

 役員として今後もクラブの経営を担うことになるアマンダ・ステイブリーは、「トロフィーを獲得することに関しては、マン・シティやパリ・サンジェルマンと同じような野心を持っている。ただ時間は必要である」と語りました。最後にリーグ制覇したのが1926-27シーズン、タイトルも68-69のインターシティ・フェアーズ杯まで遡ります。

 古豪クラブが莫大な資金力というバックアップを受けてどう変貌を遂げるのか。ニューカッスルの今後が楽しみです。

文/西岡 明彦

※電子マガジンtheWORLD262号、10月15日配信の記事より転載

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