まるでトッティのようなパスレシーブ ナポリの34歳FW、“稀代の偽9番メイカー”のもとで躍動

ラツィオ戦で2ゴールを挙げたメルテンス photo/Getty Images

神出鬼没なポジショニングが光る

2021-22シーズンのセリエA第14節が28日に行われ、ナポリがラツィオに4-0で勝利した。

ナポリの攻撃を牽引したのは、基本布陣[4-1-2-3]のセンターFWとして起用されたドリース・メルテンス(34歳)。

キックオフ直後から相手最終ラインと中盤の間に立ち、ルイス・フェリペとフランチェスコ・アチェルビによるラツィオの2センターバック、及びダニーロ・カタルディ、セルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチ、ルイス・アルベルトの3セントラルMFを引き付ける役割を全う。

このメルテンスの巧みなポジショニングによってサイドのレーンが空き、マリオ・ルイとジョバンニ・ディ・ロレンツォの両サイドバック、ロレンツォ・インシーニェとイルビング・ロサーノによるナポリの両ウイングFWが、フリーでボールを受けやすい状況となっていた。

ナポリの先制ゴールが生まれた7分には、メルテンスがセンターサークル付近まで降り、右サイドにいたロサーノへロングパスを供給。ロサーノからのリターンパスを受けたメルテンスが敵陣ペナルティエリアでドリブルを仕掛けたことでチャンスが生まれ、こぼれ球に反応したピオトル・ジエリンスキがシュートを突き刺している。相手DFにとって捕まえにくいポジショニングと、密集地帯を厭わずにパスを受けることができるメルテンスの持ち味が、存分に発揮された場面だった。

勢いに乗ったメルテンスは、10分に敵陣ペナルティエリア手前でインシーニェからのパスを受けると、軽快なステップで相手DFパトリックのスライディングをいなし、ゴールゲット。29分にもペナルティエリアの外から鮮やかなミドルシュートを突き刺し、ナポリの勝利を決定づけた。

メルテンスの持ち味を見抜き、ナポリに新たな攻撃パターンを浸透させたスパレッティ監督 photo/Getty Images

智将スパレッティが見せた、巧みな用兵

ジエリンスキ、アンドレ・フランク・ザンボ・アンギサ、ファビアン・ルイスの3セントラルMFによる流動的なポジショニングを活かしたパスワークと、長身FWヴィクター・オシムヘンへのロングパスが今季のナポリの攻撃パターンとなっていたが、オシムヘンが前節のインテル戦で負傷。

第9節のローマ戦と12節のエラス・ヴェローナ戦では、3セントラルMFが相手のマンツーマンディフェンスに晒されたことでパスワークが停滞しており、新たな攻撃パターンの確立が急務となっていた。

この問題を解決したのが、今季よりナポリを率いているルチアーノ・スパレッティ監督。

ローマを率いた2005-06シーズンに、それまでトップ下が主戦場だったフランチェスコ・トッティをセンターFWの位置で起用することで“0トップ”システムを確立した同監督は、先述のラツィオ戦でメルテンスに“偽9番”の役割を与え、自軍の攻撃を立て直し。

球離れが良く、ミドルシュートも正確なメルテンスにはうってつけの起用法で、同選手は指揮官の期待に応え、トッティさながらのパスレシーブやフィニッシュワークを披露した。

本来ゴール前に張り付いているはずのセンターFWが、偽のストライカー(9番)として相手最終ラインと中盤の間へ降り、相手の守備隊形を乱すのが“0トップ”システムの要諦。ラツィオ戦の勝因は、スパレッティ監督がメルテンスの持ち味を踏まえたうえで、ナポリにこのシステムを浸透させたことに尽きるだろう。

稀代の偽9番メイカーのもとでメルテンスが躍動し、新たな攻撃パターンを手にした現在セリエA首位のナポリが、今季の優勝争いの主役となりそうだ。

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