好守にスキがない青森山田 松木&宇野の連携もばっちり
2年連続準優勝の青森山田。第100回記念大会で優勝を目指す photo/Getty Images
長い歴史を持つ高校サッカー選手権が、ついに第100回記念大会を迎えました。開幕戦、準決勝、決勝は国立競技場で行われます。いまの高校生たちが国立競技場にどんな意識を持っているかわかりませんが、“帰ってきた国立”でまた新たなドラマが生まれるのは間違いありません。
勝手な予想ですが、いまは全国の高校に「打倒・青森山田」の気持ちがあるのではないでしょうか。さきおととし優勝、一昨年、昨年も決勝に進出(どちらも準優勝)。今年もインターハイを制するなど、高校トップの力を発揮しています。日程をまだ消化していないプレミアリーグでも優勝を狙える状態で、高校3冠を射程圏内にとらえています。
青森山田はチームのベースがしっかりしています。プレイ強度、走力、攻守の切り替え、どれも高水準で、しかも試合開始から終了まで落ちません。セットプレイという武器も持っています。どこからでも得点できるし、我慢強く守ることもできる。観戦するたびに攻守にスキがないチームだなと感じます。
FC東京に加入する松木玖生に関しては、サッカーファンであればどんな選手かすでに理解していると思います。彼以外にも各ポジションに素晴らしい選手が存在するのが青森山田で、中盤で松木玖生の相棒を務める宇野禅斗もボールをさばけるし、前にも運べるよい選手です。サッカーIQが高く、黒子となっていろいろな選手を操ることができます。卒業後は町田への加入が決定しており、ランコ・ポポヴィッチ監督のもとでどのような選手に成長するか見守り続けていきたいです。
さらには、丸山大和、藤森颯太、田澤夢積、名須川真光、渡邊星来、小原由敬など、最終ラインから前線まで充実した戦力が揃っています。彼らの能力をうまく引き出しながら成長につなげているのが名将・黒田剛監督ですが、この指揮官自身が選手権に優勝したい気持ちを誰よりも強く持っていると思います。一昨年が静岡学園に逆転負け、昨年が山梨学院にPK負けで優勝を逃しています。黒田さんはホントに悔しかったと思います。それだけに、雪辱を果たすべく並々ならぬ気持ちで臨んでくるしょう。
ひとつ気がかりなのは、両SBの大戸太陽、多久島良紀がケガで離脱していることです。両名ともに代えがきかない選手で、チーム内でどう対応するか試行錯誤しているのではないかと考えられます。このポジションに誰を起用するのか、興味深いところです。
帝京大可児に一目惚れ ダークホースが優勝するかも
昨年の山梨学院のように、ダークホースが現れるかもしれない photo/Getty Images
この年代をチェックするなか、私は帝京大可児のサッカーに一目惚れしました。今年はインターハイに出場できませんでしたが、選手権の岐阜県予選では圧倒的な力をみせて勝ち上がってきました。昨年、帝京大可児は選手権3回戦で青森山田と対戦し、4-2という見応えのある勝負を演じています。技術力の高い選手が揃っていて、ボールを大切にするスタイルを貫いており、一貫性のある強化を続けています。
鈴木淳之介は2年生のときに湘南入りが決定した選手で、技術力が高くスケールが大きなMFで、自分でボールを前方に運べます。前線にはプリンスリーグ東海で得点王になった松永悠碁などがいます。この帝京大可児、そして青森山田がどちらも勝ち上がると準決勝で対戦しますが、帝京大可児のブロックは強豪が揃っています。3回戦で帝京長岡との対戦が実現したなら、これは見逃せません。
なぜなら、帝京長岡は昨年4強入りするなど選手権で勝ち上がる常連校で、ていねいにパスをつなぐスタイルを追求している好チームです。選手個々の技術力も高く、松村晟怜は2年生のときから主力のCBで、足元のうまさがあり、しっかりとボールコントロールできてビルドアップの起点になれます。彼も湘南入りが決まっている将来性豊かな選手です。
もうひとり湘南への加入が決まっている選手として、阪南大高の鈴木章斗も日本一を目指しています。プリンスリーグ関西の得点王になったストライカーで、左利きで力強さがあります。フィニッシュに迷いがなく、仕留める力を持っています。阪南大高は2つ勝つと青森山田とぶつかる可能性がある組分けになっているので、この対戦も見どころのひとつになります。
磐田に加入する静岡学園の古川陽介はドリブルが大好きなタイプで、魅力溢れるプレイをみせてくれます。彼も含めて4人ぐらいJ内定者がいる静岡学園も力のあるチームで、2回戦で流通経済大柏と対戦する可能性があります。このブロックには岡山入りが決まっている佐野航大を擁し、インターハイ決勝で青森山田を苦しめた米子北、全国の舞台で暴れることが期待されるチェイス・アンリがいる尚志、上位進出の常連校である矢板中央が集まっています。強豪ばかりのこのブロックも、大混戦だといえます。
大津の森田大智、神村学園の大迫塁、福田師王など、他にもたくさん注目選手がいます。チームをみても、奈良育英、徳島商といった古豪が出てきました。東福岡、滝川第二、星稜、秋田商、前橋育英といった優勝経験があるチームも虎視眈々と上位進出を狙っています。山梨学院は連覇を目指し、青森山田は雪辱を果たすことを狙っています。これらのチームを押しのけて、ダークホースが頂点に立つかもしれません。とても見どころを紹介しきれません。選手権大好きおじさんである私は、開幕を心待ちにしています。
構成/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD264号、12月15日配信の記事より転載