W杯アジア最終予選突破で盛り上がる日が来なくなる? 地上波中継なし&4年後のアジア枠拡大問題

今回は日本のW杯出場決定シーンが見られない可能性も photo/Getty Images

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2026年大会からは出場国増加でアジア予選がイージーなものに

これから日本サッカー界はどうなっていくのだろうか。24日に予定されているアジア最終予選・オーストラリア代表戦に勝てばワールドカップ・カタール大会出場が決定するが、ポジティブな話題ばかりではない。

まず1つは、DAZNが参入した今回のアジア最終予選よりアウェイゲームが地上波で放送されなくなった点だ。24日に行われるオーストラリア代表戦はアウェイゲームで、ルール通り地上波での放送はない。DAZNに加入している人でなければ大一番を見ることはできないのだ。

近年の日本はアジア最終予選で何かとオーストラリア代表と縁があり、2014年のブラジル大会も2018年のロシア大会も日本はオーストラリア戦でワールドカップ出場を決めている。2014年は本田圭佑の劇的なPK、2018年のロシア大会は井手口陽介のスーパーミドルもあり、日本のサポーターは大いに沸いた。

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オーストラリア戦後のリアクションはどうなるか

アジア最終予選も重要な一戦だけはテレビでチェックするライトなファンもいただろうが、残念なことに今回は放送のないアウェイゲームだ。わざわざDAZNに加入してまで見ようなんて人はライトなファン層とは言わないだろう。今回はニュースを見るまで日本代表のワールドカップ出場決定を知らなかったという日本人もたくさん出てくるかもしれない。新型コロナウイルスの影響もあって、スポーツバーなどで大騒ぎできない点もあるが、ワールドカップ出場決定の瞬間が盛り上がらないのは何とも寂しい。

また、4年後のワールドカップよりレギュレーションが変更される。4年後は出場国が今の32から48に拡大することになり、それに合わせてアジア枠は現行の4.5枠から8に拡大する。油断は禁物とはいえ、日本の実力から考えれば8枠に入るのはそう難しいことではない。韓国、イラン、オーストラリアなどを含め、アジアの強豪とされる国は楽々予選通過を決めるだろう。

だが、それはアジア予選の価値を落とすことにも繋がる。これまでもアジア最終予選は何かとハラハラドキドキな展開が待っていたが、4年後からはそんなドキドキは消え失せる可能性が高い。ワールドカップ本大会からが本番なんて考える人も増えるはずで、アジアの戦いに関心を示さない人も出てくるだろう。

加えて2018年からは欧州でネーションズリーグもスタートし、日本が欧州の強豪とテストマッチを組むのも難しくなってきた。アジアの予選も盛り上がらず、欧州や南米の強豪国との対戦もないとなれば、本当にワールドカップ本大会の時しか日本代表の試合を見ないなんて人も増えるかもしれない。それはあまり良い流れとは言えない。一時的なブームで終わってしまう可能性があるのだ。

もちろんJリーグ、欧州サッカーは毎年楽しめるが、有料サービスの月額料金を支払わないと視聴できない。しかもDAZNは今年2月より月額料金が3000円にアップしており、サッカーしか見ない人にとっては割高に感じる部分もある。特に子供たちにとってはハードルが高い料金で、サッカーに興味を持つ機会が奪われていく未来も想像しなければならない。それは日本サッカー界にとって大きなマイナスポイントだ。

果たして今後のサッカー人気はどうなっていくのか。24日のオーストラリア戦でワールドカップ出場が決まれば嬉しいが、これまでの興奮がないのは寂しいものがある。大袈裟に言えば、地上波放送のない中でワールドカップ出場が決まる可能性がある今回のオーストラリア戦は今後の日本サッカー界の人気を左右するターニングポイントになるかもしれない。アジア最終予選で大盛り上がりするのは4年前のロシア大会が最後だったなんてこともあり得る。

もちろんDAZNの参入によってJリーグの収益がアップするなど、ポジティブな部分もある。しかし代表戦に限れば、日本サッカー界が大きく変わる可能性も出てきた。好きなものを見るには無料でなくお金を払うのが当たり前という時代に突入したともいえるが、まだその感覚を有している日本人は多くない。お金を払うくらいなら見なくていいと考える人も多いだろう。無料でアジア最終予選からワールドカップまで見られるテレビ中継こそ日本のサッカー人気を支えてきたところがあるのだ。

今回のオーストラリア戦でワールドカップ出場が決まる場合、いったい如何ほど盛り上がるのか。朝のニュースやネットニュースでひっそり知ったなんて展開は寂しいが、出場枠が増える今後もそれがスタンダードになってしまうかもしれない。

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