なぜアダマ・トラオレはバルセロナでの序列が低いのか 縦への突破を極めた男の悩み

古巣であるバルセロナに戻ってきたトラオレ photo/Getty images

状況が一変した

今冬の補強が大きく成功し、好調を維持しているバルセロナ。特に前線のピエール・エメリク・オバメヤンとフェラン・トーレスはすでに欠かせない存在となっており、大成功の補強だった。しかし、同時期に来たアダマ・トラオレはどうか。

バルセロナのカンテラで育ち、その後プレミアリーグのウルブズで自身の地位を確立させたトラオレ。ドリブルでの突破力が彼の強みで、ウルブズでは今季半シーズンしかプレイしなかったが、ドリブル成功数83回はいまだにプレミア2位の数字である。

バルセロナでの再スタートは輝かしいものだった。アトレティコ・マドリード戦に初先発すると突破力を武器に右サイドで躍動。対峙するマリオ・エルモソを圧倒し、いち早くチームからの信頼を勝ち取った。その後も起用されることが多く、オバメヤン、トーレスと共に大成功の補強かと思われたが、試合を戦うにつれてトラオレの選択肢のなさが露呈することになる。確かに突破力は強烈だがそこからクロスしか選択肢がなく、そのクロスも高精度ではない。また、ボールを捌くなどビルドアップの部分ではダニエウ・アウベスのサポートがなければ右サイドの攻撃が停滞してしまう。

ライバルであるウスマン・デンベレの復調はトラオレにとって良くない出来事だった。今でこそ頼れるアタッカーのデンベレだが、少し前までは遅刻の多い問題児であり、序列でいえば最も低かったといっても過言ではない。しかし、怪我で離脱することがなくなったことでコンディションを上げ、ピッチに立てば素晴らしいパフォーマンスでチームを支える。トラオレとの違いはいくつかあるが、手数の多さはリーガ・エスパニョーラでもトップであり、両足を利き足のように使える器用さを武器に、チャンスメイクを行う。各メディアもデンベレへの評価は手のひら返し状態となっており、西『MARCA』では「デンベレのターンがやってきた」とここまでのパフォーマンスを称賛している。

英『Football 365』によるとトラオレには3000万ユーロ(日本円にして約30億円)での買い取りオプションが付いているが、バルセロナに行使する気はないようだ。トラオレ本人はカンプノウでのプレイを望むとコメントしているが、買い取りに必要な移籍金が高額であること、デンベレが計算できる選手になったことが主な理由だろう。また、デンベレを手放すことにしても、3000万ユーロあればトラオレよりも器用な選手を見つけることはできる。

1月の加入当初とは正反対となった、トラオレとデンベレを取り巻く環境。トラオレとしては普段通りの実力を発揮できているが、デンベレの復活が想定外であり、バルセロナでのプレイを望むなら残りの2カ月が重要となる(データは『SofaScore』より)。

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