アトレティコ驚きの[5-5-0]戦術は正解だった? シティをも混乱させた“ラスト45分でのギアチェンジ”

マンチェスター・シティへの対策は十分だったシメオネ photo/Getty images

一気呵成のハイプレスで相手のビルドアップを混乱させた

初の顔合わせとなったマンチェスター・シティ対アトレティコ・マドリードのCL決勝トーナメント・ラウンド8。結果は2戦合計1-0とシティが勝利しており、2季連続での4強入りを果たした。

イングランドとスペインの強豪がぶつかることになったこの一戦だが、注目が集まったのは1stレグでのアトレティコの配置だ。序盤はジョアン・フェリックスやアントワーヌ・グリーズマンを前線に残す形で5バックを敷いていたが、時間が経つにつれてその2人も下がるようになり、長い時間前線に人を置かない[5-5-0]の守備陣形で守っていた。シティ相手に5バックを敷くチームはこれまで多く見られており、珍しい戦術ではないが、そのチームのほとんどがカウンターに備えて前線に選手を残すことが多い。しかし、ディエゴ・シメオネ率いる守備集団のアトレティコはさらに守備に人数をさき、鉄壁を誇っていた。実際にシティは攻め手がなく、ロドリからのらしくないパスミスも見られており、効果的だった。が、フィル・フォーデンとケビン・デ・ブライネの個人で崩され失点し、1stレグを敗戦で終えている。

2ndレグの前半もそこまで攻撃的ではなく、[5-5-0]とまでは行かないが守備的に自陣に引いている。アトレティコが本性を見せたのは後半からだ。シティのビルドアップにハイプレスを仕掛け、ロングボールを蹴らせてセカンドボールの回収に成功している。シティの前線はラヒーム・スターリングをはじめ小柄な選手が多く、ボールを奪うのは難しいことではなかった。奪ったあとはフェリックスらがシティのセンターバックの前のスペースでボールを受けて攻撃を前進。計14本のシュートを放ってエデルソン・モラレスが守るゴールマウスを脅かしている。

しかし、誤算だったのはここからで、ゴールネットを揺らすことができない。ジョン・ストーンズらに体を張られる場面もあったが、そもそもシュートが枠に飛ばず、枠内シュートは3本と少ない。この日のエデルソンがより集中していたこともあったが、ゴール前での強さに欠けてしまった。マテウス・クーニャやルイス・スアレスと選手は揃っていただけに残念だ。

ラウンド8の2試合を90分の2ゲームではなく180分の1ゲームと考え、135分を守備、最後の45分を攻撃と明確に分けたシメオネだったが、少し守備的に行きすぎてしまったか。確かに終盤の攻撃は迫力がありペップ率いるシティを圧倒したが、それ以外の135分は守備しかできていなかった。前線でフェリックスが起点を作ることがあっても、サポートがおらず、いくらフェリックスが上手かろうが得点の匂いはしなかった。残りの45分でゴールを決めていればシメオネの考えた対シティの作戦は大成功だったが、デ・ブライネにゴールを奪われた時点でかなり苦しい状況に持ち込まれてしまった感は否めない。終盤あれだけ攻め込んでもシティ守備陣の主軸とされるルベン・ディアス、怪我で途中交代となったカイル・ウォーカーらが不在でゴールを奪えないとなれば、ビッグイヤー獲得は難しい挑戦だったのかも知れない。

[5-5-0]というなかなかお目にかかれない戦術を披露し、シティを驚かせたシメオネ。しかし、1stレグでの失点が重くのしかかり、欧州の頂点への夢は来季に持ち越しとなった。

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