“75分以降”に強いマジック・ミランの不思議 首位の理由は諦めないメンタリティにあり

終盤のゴールで勝ち点を拾っていくミラン photo/Getty Images

終盤力がスクデットへのカギ

セリエAの優勝争いをリードするミランだが、サポーターは毎試合ヒヤヒヤしているに違いない。2位インテルが追いかけてきているため引き分けすら許されない状況なのだが、今季のミランは同点のまま終盤に突入するケースが少なくない。そのたびサポーターは言いようのない焦りを覚えているはずだ。

ただ、今のミランには追い込まれた状況でもネットを揺らす不思議な力がある。4月30日のフィオレンティーナ戦はその典型例で、82分にFWラファエル・レオンがようやくゴールを決めて1-0の勝利を手にした。その1週間前のラツィオ戦では1-1で迎えた後半アディショナルタイムにMFサンドロ・トナーリがゴールを決めて2-1で勝利。ミランは本当にギリギリの戦いを凌ぎながら首位を守っている。

今のミランには前述したレオンやトナーリのように若い選手も多いが、伊『Gazzetta dello Sport』は指揮官ステファノ・ピオリの指導が大きいと称賛する。単に戦術や技術を教えるだけでなく、最後の笛が鳴るまで諦めないメンタリティをピオリが若手に植え付けていると称賛されているのだ。

試合が始まる前ならまだしも、80分を過ぎたあたりからは戦術以上のものが求められるところもある。選手個々の粘りや、精神力のようなものが必要になってくる時間帯だ。そうしたメンタリティを植え付けるのも指揮官にとっては重要な仕事と言える。

今季のミランはリーグ戦で61ゴールを奪っているが、そのうちの16ゴールは75分以降に生まれたものだ。今季序盤を振り返っても、昨年9月のスペツィア戦は86分にMFブラヒム・ディアスが決勝ゴールを決めて2-1で勝利、10月のヴェローナ戦では1-2とリードされたところから76分にMFフランク・ケシエ、78分には相手のオウンゴールで3-2と逆転勝利。

同じく10月のボローニャ戦では2-2と追いつかれた84分にMFイスマエル・ベナセル、90分にFWズラタン・イブラヒモビッチがゴールを決めて4-2で勝利。そして何と言っても今年2月に行われたインテルとの直接対決では0-1とリードされたところから75分、78分と立て続けにFWオリヴィエ・ジルーがゴールを決めて2-1で勝利。

75分からの勝負強さ、さらには様々な選手が得点を挙げて勝利しているところが特長的で、ミランはまさに全員サッカーで頂点に立とうとしている。2位インテルが74ゴール挙げていることを考えると、ここまで61ゴールのミランは正直物足りない。しかし、ここぞという場面で決め切っていることが首位キープに繋がっている。

このメンタリティでラスト3試合を乗り切れるのか。今のミランにはスマートな戦術だったり、組織の連動といったものを超越した粘り強さがある。それを植え付けたピオリはもっと称賛されるべきだろう。

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