リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・ムバッペなどスター選手が目立ってしまうが、パリ・サンジェルマンは育成機関が非常に機能しているヤングタレントファクトリーの側面も持っている。ミランで活躍するGKマイク・メニャン、ライプツィヒのクリストファー・エンクンクなどもパリの下部組織で育った逸材だ。
問題は、彼ら若手に出番が回ってこないところにある。現在も注目されているヤングタレントは多いのだが、彼らのキャリアがどうなっていくかは分からない。逆に言えば、同じフランスのクラブにとってパリのユースで燻る若手たちは実に魅力的であり、引き抜きを狙うチャンスでもある。
例えば今季フランス・スーパー杯、クープ・ドゥ・フランスで合計3試合出番が与えられた18歳のU-18フランス代表MFイシュマエル・ガルビも注目されているタレントだ。攻撃的MFのガルビも非常に高いテクニックを持っていると評判だが、まだリーグ・アンでは出番がない。メッシやネイマールらがいる限りポジションを奪うのは難しく、ガルビの場合はクラブとの契約も今夏までとなっている。
独『Sport1』はリヴァプールやチェルシーが関心を示していると伝えており、ビッグクラブから注目されるだけのポテンシャルは備えている。パリに残るよりは、他クラブを目指す方が出番確保のチャンスは高まるだろう。
ガルビより若い才能では、16歳のDFエル・シャダイル・ビチャブも見逃せない。4月20日のアンジェ戦では4分間だけ出番が与えられており、ガルビよりも早くリーグ・アンでデビューすることになった。リヴァプールのイブラヒマ・コナテを思わせる強さとサイズがあり、ビチャブは16歳ながら196cmのサイズを誇るU-18フランス代表センターバックだ。次々とビッグサイズDFが出てくるところにフランスサッカー界の恐ろしさがある。
ビチャブはサイズを活かしたダイナミックな空中戦はもちろん、ビルドアップの部分も評価されており、ドイツからはバイエルンも関心を寄せているという。16歳はさすがに若すぎるようにも思えるが、パリの最終ラインはベテランのセルヒオ・ラモスに怪我が続くなど前線ほど層が厚いわけでもない。少し我慢すれば、2、3年後あたりには出番が回ってくる可能性も考えられる。ポテンシャルが本物ならば、パリも簡単に手放すべきではないだろう。
レンタル先で結果を出している者もいる。今季躍動しているのは、パリから同じリーグ・アンのRCランスにレンタル移籍している20歳のFWアルノー・カリムエンドだ。高いポジションセンスが評価されるカリムエンドは今季リーグ戦で11ゴールを奪っており、すでにリーグ・アンで通用することは証明した。独『Sport』もU-21フランス代表世代では最高のストライカーと評しており、今後の行き先が気になるところ。
前述したようにパリの前線は超がつくほど豪華な陣容となっているだけに、そう簡単に出番は得られない。センターフォワードとしてバックアッパーになる道もあるが、今夏どのような判断を下すのか。
さらにボルドーにレンタル移籍している選手では、19歳のU-20フランス代表DFティモシー・ペンベレも印象的だ。今季はセンターバックをこなしたゲームもあるが、基本は右の攻撃型サイドバックを本職とする。バイエルンのアルフォンソ・デイビスと比較されるスピードが持ち味で、ボルドーでは今季リーグ戦3得点をマークしている。パリの右サイドには同じく高速のアクラフ・ハキミが構えているが、バックアッパーとしては十分な存在だろう。
昨夏の東京五輪も経験しており、グループステージ最終戦の日本戦にも出場していた。結果は0-4とフランスにとって残念なものとなったが、ペンベレもA代表入りを狙える可能性はある。年齢的にはもうしばらくレンタル移籍を継続するのが妥当か。
他にも同メディアよりNEXTマルコ・ヴェッラッティ候補と評される19歳のU-19フランス代表MFエドゥアール・ミシュ、ドルトムントが目をつけているとされる18歳のFWジェイディ・ガッサマなどパリには逸材が揃っている。全員がパリのトップチームで出番を得る可能性は限りなく低いため、そう遠くないうちにパリを離れる者も出てくるだろう。エンクンクやメニャンの例を見ていると放出はもったいなく思えるが、パリがスター獲得路線から若手育成路線へ切り替えることはあるのか。彼らの中にはトップチームで試してみるべき才能もいるはずだ。