[水沼貴史]三笘なら世界最高峰プレミアでも戦える! ベルギーで得た自信と力を発揮しやすいブライトンの環境

水沼貴史の欧蹴爛漫068

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海外挑戦1年目ながら7ゴール4アシストを記録 photo/Getty Images

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ベルギーでしっかりインパクトを残した

水沼貴史です。欧州サッカーがオフシーズンに入ったこともあり、前回の遠藤航(シュツットガルト)に引き続き、私が注目している欧州サムライについて少々お話ししたいと思います。今回ピックアップさせていただくのは、海外挑戦1年目から存在感を発揮した三笘薫です。

現在25歳の三笘は、昨夏に川崎フロンターレからプレミアリーグのブライトンへ移籍。ただ、イギリスでの労働許可証の関係もあって、海外挑戦1年目の今季はロイヤル・ユニオン・サン・ジロワーズへレンタル移籍し、ベルギーで武者修行を行いました。リーグ戦では、プレイオフも合わせて27試合に出場し、そのうち16試合に先発出場。そのような中で7ゴール4アシストと、結果的にはシーズンを通して「頑張れたシーズン」になったかなと思います。慣れないウイングバックでの出場で、本人からしたら多少戸惑いもあったかもしれませんが、しっかり適応してインパクトを残せた海外1年目になったのではないでしょうか。

ウイングバックには守備のタスクも求められます。もちろん、三笘はゾーンを埋めたり、しっかり後ろに戻ったり、守備面でも成長はしていますが、まだまだ得意ではありません。ただ、それを補うだけの圧倒的な攻撃力を持っています。それをしっかり欧州でも発揮でき、高く評価されたシーズンだったでしょう。そもそもチームは、守備面を評価して三笘を獲得したわけではないでしょうからね。守備面の負担はある程度こなしつつ、前に出たときに何をやれるのか。慣れない環境ながら、求められたことに対して期待に応えていたと思います。
そして、特に圧巻だったのが第11節セラン・ユナイテッド戦でしょう。それまでは10分前後のプレイ時間でしたが、この一戦では後半の頭からピッチに立つと、ハットトリックを達成。前半を2点ビハインドで折り返していたチームを、見事逆転勝利へと導きました。得点を取れたことで、大きく自信がついた試合になったのではないでしょうか。また、それまでのわずかな出場時間だった数試合でインパクトを残し、長い出場時間を得たらこれだけの結果を残せるんだぞと証明してみせた、その過程も素晴らしいです。

チームとしても1部昇格1年目のクラブながら、レギュラーシーズンはなんと1位でフィニッシュ(24勝5分5敗)。優勝決定プレイオフでは2位と、少々残念な結果となってしまいましたが、素晴らしい結果を残せていますからね。とても良い経験になったと思います.

世界最高峰のプレミアリーグでも得意のドリブルは通用するか photo/Getty Images

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ブライトンのスタイルは三笘にあっている

そんな三笘は来季、ブライトンへの復帰が濃厚とされています。みなさんもプレミアリーグでプレイする彼の姿、彼が世界最高峰の舞台でどれだけやれるのか、楽しみにしているのではないでしょうか。ブライトンの指揮官を務めるグレアム・ポッター監督はかなりの戦略家で、チームも非常に面白く、魅力のあるサッカーを行います。三笘がそんなチームでどういったプレイを見せるか、非常に気になります。

ブライトンのシステムは可変的で、昨季は[3-4-2-1]や[3-5-2]、[4-2-3-1]、[4-3-2-1]など、さまざまな形を採用しています。もし三笘がこれまで通り左MFや左WBなどに入った場合、後ろにスペインの期待の若手であるDFマルク・ククレジャがいるのが大きい。さらに、周りにはFWレアンドロ・トロサールのような自在に動ける選手もいて、三笘にとってブライトンは非常にプレイしやすいチームなのではないでしょうか。

WBとしてプレイしたベルギーでの経験も生きるでしょうし、WBを採用する3バックだからといって、ブライトンは簡単に後ろが重くなるチームではないです。そのため、三笘の持ち味である前への推進力がしっかり発揮できるのではないでしょうか。順位だけ見れば今季も9位とプレミアの中堅クラブかもしれませんが、ポゼッション率もマンチェスター・シティ、チェルシー、リヴァプールに次ぐ4位。ボールを大事にするチームで、三笘が力を存分に発揮するだけの環境は整っていると思います。

そんなブライトンの長年の課題となっているのが「決定力」です。ゴールに直結するプレイが得意で、自らも高い決定力を誇る三笘の加入ということで、現地ファンも大きな期待を寄せているでしょう。すでに来季へ向けての期待の声もチラホラ目にしています。対峙してくる相手のレベルがぐーんと上がり、どうなるかという部分もありますが、1度ダメでも次にはしっかり結果を残す、壁にぶち当たってもそれを跳ね返すだけの力がある三笘。ベルギーとプレミアでは強度が違うため、ある程度覚悟は必要かもしれませんが、リバウンドメンタリティをしっかり持つ彼ならやってくれるでしょう。三笘のプレミアリーグでのプレイが楽しみで仕方ありません。

戦術的な面でもブライトンはかなり頭を使うチームだと思うので、色々な引き出しを覚えられるかもしれません。川崎時代から頭を使うサッカーには慣れているでしょうし、三笘にとって来季はより一層成長するシーズンになるかもしれませんね。今年の年末にはW杯もあります。ブライトンでこれまで以上に腕に磨きをかけ、日本代表もぜひ飛躍させてほしいです。地道にアピールしていき、ベルギーの地でしっかり結果を残した海外1年目。チームにもたらした結果は大きな自信になっているでしょうし、それを来季はプレミアリーグで、日本代表でも発揮してほしいですね。

それでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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