鹿島とヴァイラー監督はお互いに納得できていたか
ヴァイラー招聘から鹿島はなにを学んだか。教訓を次に生かさないといけない photo/Getty Images
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鹿島がレネ・ヴァイラーさんとの契約を解除し、シーズン序盤に代理監督を務めていた岩政大樹コーチを正式に監督としました。このゴタゴタを受けて、鹿島がどうなっていくのか非常に気になります。
夏場を迎えるまで、鹿島はヴァイラーさんのもと強度が高く、縦に早いサッカーで結果を出していました。ところが、上田綺世が海外移籍したことで前線にボールが収まらず、うまく機能しなくなっていきました。加えて、気温が上昇してくると最後の10分、15分で運動量が落ちる試合が続きました。
上位にはいますが、厳しい状況を迎えていたのはたしかです。ブラジル型からヨーロッパ型へと舵を切ったフロントは、難しい判断を迫られていたと思います。そして、今回の決断となりました。私はクラブの内部にいるわけではないので実際の経緯はわかりませんが、クラブとヴァイラーさんがどこまで納得して働いていたかが問題だと思います。クラブにはクラブの要望があり、監督には監督の考えがあります。お互いに納得して仕事しないと、いいものは作れません。そのあたりが、どうもはっきりしていませんでした。
個人的に思うのは、ヨーロッパから監督が来ると言っても、全員が全員、ペップ・グアルディオラさんやユルゲン・クロップさんと同じ能力を持つわけではないということです。いまは多くの情報を得られる時代で、日本人はどうもトップ・オブ・トップのレベルを期待してしまう傾向がありますが、そこを基準にすると本質を見誤る可能性があります。
当然ですが、選んできたクラブにも責任があります。大事なのは、失敗を繰り返さないことです。チャレンジしたことで、今回の結果が得られました。いい教訓にして、前に進んでいくべきです。いまはもう、岩政監督でいくことが決まりました。クラブとして全面的にバックアップする姿勢をみせないと、サポーターが疑心暗鬼になるばかりです。
鹿島の今後を展望すれば、岩政監督はすでに“代理”で経験があるので、ぶっつけ本番という感じではなく、攻守を整理して臨むカタチになるでしょう。前線に加入する新外国籍選手のエレケが、まわりとどうフィットするか? 攻撃陣に限らず、岩政監督がどういう選手を起用するか注目しています。
私自身は土居聖真に期待しています。生っ粋の鹿島っ子で、プレイで違いをみせられる選手です。30歳になりましたが、いろいろな起用が可能で、まだまだ活躍できます。彼の使い方でサッカーも変わってきます。大黒柱であるユーマ(鈴木優磨)とともに、必要不可欠な選手です。
熊本のプレイオフ進出なるか 千葉で親子Jリーガー誕生
熊本の前線を支える髙橋は二桁得点している photo/Getty Images
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J2に目を向ければ、熊本が6位につけています。大木武監督が就任して3年目ですが、初年度の2020年がJ3で8位、21年がJ3優勝ときて、いまはJ1昇格をかけたプレイオフ出場を狙える順位にいます。ボールと人がよく動くアグレッシブなサッカーは魅力的で、結果にもつながっています。
ただ、まだ10試合以上が残っており、最終的にどんな成績で終わるかわかりません。なにせ、J2はここから順位が動くのは当たり前で、最終節が終わるまでなにがあっても不思議はないです。それでも、熊本は若い選手が躍動していて、チーム全体に一体感があるなと感じます。
ストライカーの髙橋利樹はすでに二桁得点しており、どこまでゴール数を伸ばすか楽しみです。右サイドからチャンスメイクする杉山直宏もいいですね。自分でも得点できる選手で、髙橋とともに多くのゴールにからんでいます。アンカーを務める河原創については、以前にこのコラムで紹介しました。もし熊本がJ1昇格を逃したなら、個人昇格するかもしれないチームの中心選手です。
最下位の琉球もここにきて調子を上げてきました。前任者の喜名哲裕監督はしっかりつなぐサッカーを志向していました。チームを受け継いだナチョ・フェルナンデス監督はより激しく戦うことを求めており、強度の高いチームになっています。第25節岩手戦から第29節熊本戦まで5試合負けなしを記録するなど勝点も積み上げています。
残留を勝ち取れるかどうか、鍵を握るのはサダム・スレイになりそうです。夏場に獲得された新外国籍選手で、第28節徳島戦に途中出場してデビューしました。このガーナ人選手はやってくれそうです。身体能力が驚くほど高く、第29節熊本戦、第30節甲府戦で連続ゴールしています。彼の得点数に比例して、琉球は勝点を伸ばすことになるでしょう。
もうひとり、J2から気になる選手を紹介させてください。千葉U-18の新明龍太は第2種登録されていましたが、来シーズンからのトップ昇格も決まりました。出番はなかったですが、第30節群馬戦ではさっそくベンチ入りしています。この新明はかつて東芝→札幌→甲府でプレイした新明正広の息子で、またひとり2世Jリーガーが誕生しました。
新明正広は私の一つ下の世代で、習志野高の出身です。地元が近く、小学生のときから知っています。おそらく、息子がトップ昇格したことでいま舞い上がっているでしょう。2世がこれからどんな活躍をみせてくれるか、逃さずに、厳しくチェックしていこうと思っています。こういう話をすると必ず私の息子(J3藤枝所属)のことも聞かれるのですが、それはまた別の機会に。
構成/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)272号、8月15日配信の記事より転載