水沼貴史です。序盤戦から各国リーグで激しい戦いが繰り広げられていますが、中でも混戦模様となっているのがドイツのブンデスリーガ。現在10連覇中の絶対王者バイエルン・ミュンヘンが第4節から4試合も白星なしと、思わぬ苦戦を強いられています。1つのクラブが独走しないことは、他のクラブのモチベーションにもつながりますし、リーグを盛り上げる上でも、面白くする上でも、とても良いことだと思います。
そんな中で、素晴らしいスタートを切ったのが日本代表MF原口元気も所属するウニオン・ベルリンです。クラブ史上初の1部挑戦となった2019-20シーズン以降、11位、7位と年々順位を上げており、昨季はヨーロッパリーグ出場圏内となる5位でフィニッシュ。着実に力をつけてきています。そして、昇格4年目の今季も開幕戦でヘルタ・ベルリンを相手に3-1の勝利を収めると、7試合を消化して5勝2分となっています。ライプツィヒ(2-1)やバイエルン(1-1)といった強豪からもしっかり勝ち点を奪っており、現在ブンデスリーガの首位を走っているのです。今回はそんな絶好調なウニオン・ベルリンについて少々お話ししたいと思います。
まずウニオンの好調の要因として大きいのが、ここまでリーグ最小失点(4失点)を誇る守備です。前からプレッシャーに行くということがチームとしてできていて、非常に素晴らしいです。その結果、素早いカウンターにもつながっている。失点の少なさとブンデスリーガで下から3番目のパス本数からみても、良い守備から非常に効率的な攻撃が仕掛けられているように思います。バイエルンやライプツィヒを相手にも変に引くことなく、前から積極的な守備が行えていましたからね。『最初からブロックを敷くのではなく、前からプレスに行く。ボールを奪えたならそこから素早い攻撃を仕掛け、奪えなかった際には少しゾーンを下げる』こういったやり方が就任5年目を迎えたウルス・フィッシャー監督のもとでしっかり整理され、洗練されてきているように思います。
また、効率の良さは守備面でも垣間見られています。ウニオンはここまでファウル数がブンデスリーガでダントツのトップなのですが、カードをもらった回数はリーグで最も少ないのです。ハードワークをしながらしっかりデュエルができていて、身体も張れている。少し間違えるとカードに繋がりかねないですからね。ELへの参加とW杯開催による過密日程の中で、カードが少ないことはチームにとって良いことですし、効率の良い守備ができていている証拠でしょう。
そして、新加入選手たちの躍動も大きいでしょう。チームのエースであったナイジェリア代表FWタイウォ・アウォニイが退団して「今後のチームはどうなる?」と思われましたが、ヤングボーイズ(スイス)から加入したアメリカ代表FWジョルダン・シエバチュが開幕戦からゴールを記録し、存在感を発揮しています。得点以外にも、ボールを収めることができ、190センチ超えの高さも武器。素早いカウンターが得意であったウニオンにおいて、速さだけではなく、タメを作れるようになったことで攻撃の幅が広がりました。スピードのあるFWシェラルド・ベッカーとの2トップは相性が良さそうですし、ウニオンの攻撃は速さと強さでバランスがこれまで以上に良くなったように思います。実際、シエバチュはここまで3ゴール、ベッカーは6ゴール、チームの得点もリーグ2位となる15ゴールと、数字も残していますね。さらに活躍してくれるのではないかなという期待感も見せてくれていますし、この2トップは今後もブンデスリーガの中で脅威となるのではないでしょうか。
また、新戦力の中でも個人的に最も注目してるのがMFヤニク・ハベラーです。昨季までフライブルクで6年間にわたってプレイしてきた同選手ですが、運動量が豊富で、相手からボールが奪え、インサイドハーフの位置から前に出ていくこともできる。フライブルクではここ数シーズン怪我に悩まされたり、思うような出場時間を得られなかったりで、苦しい時期を過ごしていたかもしれませんが、非常に素晴らしい選手だなと思いました。ハードワークが求められるウニオンのスタイルにとても合っていますね。こういった新戦力たちがチームにすぐにフィットしたことで、今季のスタートダッシュにつながったのでしょう。