前半戦プレミア2位ペップ・シティの改善点 “14試合14失点”昨季よりも守備が脆くなったのはなぜ?
マンチェスター・シティを指揮するジョゼップ・グアルディオラ photo/Getty images
昨季ほどの安定感はないかもしれない
22-23シーズンのマンチェスター・シティは例年通り好調を維持している。ここまでのプレミアリーグでは14試合で勝ち点32を稼ぎ、アーセナルに次ぐ2位で前半戦を終えている。
前半戦最大の収穫はアーリング・ハーランドの適応だろう。ボルシア・ドルトムントからやってきたストライカーはプレミア初年度から大暴れしており、ここまで13試合で18ゴールを挙げている。得点ランキングではもちろんトップであり、このままトップを独走するはずだ。
懸念されていた前線の人員不足は感じられない。ラヒーム・スターリング、ガブリエウ・ジェズスと経験があり計算できる2人のアタッカーを放出したが、ハーランドとフリアン・アルバレスの新加入FWがその穴を埋めている。
ワールドカップ・カタール大会が終わればすぐにプレミアリーグは再開する。第17節はW杯決勝の約1週間後に行われる。
W杯後の日程も厳しく、12月23日にリヴァプールとのカラバオカップを戦い、2月からはCL決勝トーナメントがスタートする。FAカップも始まることになり、主力選手は休んでいる暇がない。
悪くなかった前半戦にケチをつけるとすれば、気になったのはハーランドへの依存と失点の多さだ。
昨季までのシティは得点面で誰かに依存することがないため得点パターンが豊富だった。しかし今季は一人で18ゴールを決めるストライカーがおり、どうしてもハーランドへのパスが多くなる。それでゴールを奪えれば問題ないが、直近のブレントフォード戦や0-1とギリギリで勝利したレスター戦など、ハーランドが複数人にマークされ封じられた試合、ハーランド不在時に思うようにチャンスを作れていないように思える。
失点の多さはハーランドの加入が大きく影響している。昨季は前線に本職の9番を置かない偽9番を採用しており、フィル・フォーデンをセンターフォワードに置いていた。そのため今季多用されているクロスの数は少なく、より相手を押し込んだ状態でゴールを目指している。そうなるとボールロストする機会は昨季と比べ今季のほうが圧倒的に多くなり、さらにカイル・ウォーカーのようなアスリート能力の高さを武器に守備で輝く選手が現在は怪我で離脱しており、カウンターへの耐性が弱くなってしまっている。
今季はここまで14試合で14失点しているが、昨季は14試合時点でわずか8失点と堅守を披露していた。しかも昨季は序盤で対BIG6と対戦する機会が多く、14試合消化時点ですでに全5試合を終えている。今季はまだリーグ戦でマンチェスター・ユナイテッド、リヴァプールとしか対戦しておらず、今後より失点が増えることが予想される。
失点数を減らすためにできることは2つあって、ジャック・グリーリッシュの起用数増加とウォーカーのようにアスリート能力の高さを武器に守備で貢献できるDFの獲得だろう。
グリーリッシュは敵陣深い位置でのボールキープが上手く、試合をコントロールすることができる。今季グリーリッシュが先発したリーグ戦は未だ負けていない不敗神話もあり、グリーリッシュの重要性はひそかに上がり続けている。
次に補強だ。ハーランドがいる以上はシンプルなクロスでも効果的な攻撃となるため、ロスト数を減らすことは難しい。そうなれば守備陣で相手の攻撃を受け止める必要があり、そこで必要となるのは高い対人性能を持つDFだ。シティの守備者は優秀な選手ばかりだが、どちらかといえばウォーカーのように“強い”というイメージよりも賢く“上手い”選手が多い印象だ。ビルドアップでの貢献を考えればそういった選手が集まるのは必然だが、スピードを生かしたカウンター攻撃を昨季以上に防がなければならないと考えると、物足りない。しかもウォーカーは30代に突入しており、昨季の終盤から怪我での離脱が増えている。その点でマヌエル・アカンジの獲得は大きく、戦える守備者として活躍の場を増やしている。
偽9番からの移行期となっている今季のシティ。ここまでは前評判通りかもしれないが、よりビッグクラブとの対戦が増える後半戦は攻守両面でボロが出ることになるかもしれない。