スペインはなぜモラタを下げたのか “森保采配”は名将フリック、エンリケをも呑み込んだ

ドイツ、スペイン相手にジャイアントキリング起こした森保監督 photo/Getty Images

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フリック、エンリケの交代策には疑問も

日本代表がFIFAワールドカップ・カタール大会グループEを首位通過すると誰が予想しただろうか。それもグループ最大の強敵だったドイツ、スペインを撃破しての首位通過だ。

この2試合で勝負を分けたのは指揮官の交代策だ。日本代表の森保一監督は後半に入ってから積極的にカードを切っており、それがドイツ戦とスペイン戦での逆転に繋がった。

その一方で日本に追いかけられてバタバタしたのがドイツとスペインだ。
まず初戦のドイツ戦。前半は完全なるドイツペースだった。PKによる1失点に抑えたものの、日本にとっては最悪に近い前半だったと言っていい。

その流れを変えるべく、森保監督は後半開始からMF久保建英に代えてDF冨安健洋を投入してシステムを変更。その後もDF長友佑都→FW三笘薫、FW前田大然→浅野拓磨と交代カードを切ったわけだが、その中で注目したいのはドイツ代表監督ハンジ・フリックの動きだ。

フリックは67分にMFイルカイ・ギュンドアン→MFレオン・ゴレツカ、FWトーマス・ミュラー→MFヨナス・ホフマンと2枚替えしており、結果的にこの交代策は間違った判断だったのではないかと指摘されている。

ギュンドアンはPKで得点を奪った後も惜しいミドルシュートを放つなど攻撃の中心で、ミュラーもボールに関与する機会はそこまで多くなかったが、ベテランらしく嫌なポジションに顔を出してビルドアップを助けていた。

ドイツは75分、83分と立て続けに失点して逆転を許したが、ギュンドアンとミュラーが抜けてからは思うようにボールが繋がらなくなっていたところがある。終盤も攻撃の形が見えず、フリックは慌てたようにMFマリオ・ゲッツェ、FW二クラス・フュルクルク、ユウスファ・ムココを投入するパワープレイに出ているが、日本の守備を崩せなかった。

そしてグループ突破を懸けた運命の最終節・スペイン戦。このゲームも日本は先制される嫌なスタートとなったが、スペイン代表監督ルイス・エンリケは1-2と逆転された57分に先制点を奪ったFWアルバロ・モラタを下げてマルコ・アセンシオを投入している。アセンシオも良い選手で、終盤にはGK権田修一を襲うミドルシュートを放っている。しかし、守備を固める日本に対してクロスボールに反応できる純粋なセンターフォワードのモラタを早々にベンチへ下げた判断には疑問も残る。守る日本としては、モラタがゴール前に構えていた方が怖かったはずだ。

またスペインは得点を奪うべく68分にMFガビを下げてFWアンス・ファティが登場。ファティはこれが今大会初出場だったが、森保監督はそれに合わせるように69分にMF鎌田大地を下げてDF冨安健洋を投入。冨安は右サイドに入り、ファティとマッチアップ。この1対1は冨安の完全勝利で、ファティは何もさせてもらえなかった。このスペインの左サイド対策も森保采配の大ヒットだ。

フリックはバイエルン、エンリケはバルセロナで3冠を達成した指揮官で、大会前より2人の豪華な経歴は話題だった。各国代表監督と比較しても、知名度はかなり高い方だったと言える。いわゆる名将と評価される2人だったわけだが、交代策を当てたのは森保監督の方だ。

もちろん日本も第2戦のコスタリカ戦はまずい流れで0-1と落としており、ここは反省材料だろう。結局グループステージの3試合はすべて相手に先制を許しており、やはり逆転を狙う戦い方はエネルギーがいる。決勝トーナメントは一発勝負であり、より1点の重みが増す。交代カードで局面を打開するだけでなく、前半からきっちりとゲームをまとめて先取点を奪いに行く姿勢がベスト16のクロアチア戦では求められるだろう。

とはいえグループステージでの森保采配は見事であり、森保監督の交代策がなければ勝ち点6を稼げなかったのは事実。選手だけでなく監督にも世界から注目が集まっているが、クロアチア戦ではどのようなスタメンと戦術プランを立ててくるのか。クロアチア陣営も静かなる闘将・森保監督のことを不気味に感じていることだろう。

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